【出版までのイバラ道】「100本ノック!の巻」タイトルは『あおくんふくちゃん』に決まりました!

第44回講談社絵本新人賞受賞作家 みやもとかずあきの制作日記③(4コマ漫画つき)

作家:みやもと かずあき

制作日記 第3回

↑ふくのかみ劇場、おつぎはももたろうのおばあちゃんの登場です。
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今回は作品タイトルが決まるまでのお話をしたいと思います。

応募作品のタイトルは『福の神』です。

このタイトルにした由来は第2回でこってりと語らせていただきましたとおりです。

『福の神』は思い入れのあるタイトルだったのですが、担当編集者から、
「タイトルを変えませんか」
とあっさり言われて口から飴が転げ落ちました。

それくらい衝撃的なひと言でありました。さあ、どうなるのでしょうか……。

人の目にとまるタイトルって!?


「『福の神』ではタイトルとしては普通な感じで印象が弱いです。節分が題材の絵本がいろいろとある中で、たとえばネットで検索したときに、素通りされてしまいそうです。もっと目にとまるようなタイトルに変えましょう」
とのこと。

前回の第43回に新人賞を受賞された玉田美知子さんも、「まよいぎょうざ」から「ぎょうざがいなくなりさがしています」に変更してヒットを飛ばしていると説明され、それならばこちらもあやかってタイトルを変えることにしよう、と腹をくくったのでした。

それでも福の神のワードは絶対いれたかったので、「○○福の神」や「福の神は○○」という感じでいっぱい考えました。

担当編集者福の神に見せなかったのも入れると、軽く100は超えていると思います。

しかしなかなかしっくりくるタイトルが思いつかず担当編集者福の神も首を縦にふってくれません。

そうこうしているうちに、春がきて夏が来てお盆が近づいたころ、担当編集者福の神から「せつぶんぶん」ってどうですかと連絡があり、その響きにピンときました。

本文に出てくるオノマトペ「ぽんぽん がば」をつけて「せつぶんぶんぽんぽんがば」をタイトルにすることに決めました。

「せつぶんぶんぽんぽんがば」は何回口ずさんでもリズムがよく、楽しい気持ちになってきます。とてもよいタイトルができたと満足していました。

ところが。

タイトル命名の旅、まさかの結末

本絵もほぼ出来上がり表紙もできて「せつぶんぶんぽんぽんがば」を入れるだけの段になり、何気なく「せつぶんぶん」で検索すると「せつぶんぶん」と歌いながらかわいい女の子たちがダンスをしているお豆さんのコマーシャルを発見しました。

早速、担当編集者福の神に連絡をすると、調べてくれて、せつぶんぶんのコマーシャルは2年間流れているようですが、そこまで子どもたちに話題になっていないようです。

「『せつぶんぶん』はタイトルとしては今ひとつかもしれません」
となり、『せつぶんぶんぽんぽんがば』はボツになってしまいました。出版の段取りも押し迫ってきているにもかかわらず、タイトル命名はふりだしに戻ったのでした。

「泣けるぜ」(映画「ダーティーハリー」の捨てゼリフ)

新しいタイトルを考えますがなかなかピンとくるタイトルは浮かんできません。

「うぅーーー。うぅーーー」
とチューバッカのようにうなっているばかりでした。

しょうじき飽きてきました。

「はじめの『福の神』のタイトルでええのとちがうの!」とブツブツひとりごとを言いつつも、
「いやいやはじめて出す絵本だからおろそかにはできないな」

そんなときです。

今回絵本の装丁を担当いただいたデザイナーさんが、
「タイトルはおにちゃんふくちゃんとか、あおくんふくちゃんみたいな感じが呼びやすくていいんじゃない」
と言っていたと担当編集者福の神から聞き。

『あおくんふくちゃん』か。

ええやん!

お笑いコンビみたいで楽しい。

担当編集者の福の神も
「よし、これでいきましょう」
ということになり、デザイナーさんのおかげで『あおくんふくちゃん』のタイトルに決定したのでした!

けっきょく、長ーい命名作業の末、自分ではタイトルが生み出せずじまいで……。

まあいいか!

『あおくんふくちゃん』頼んでおきます!と手を合わせて、長ーい長ーい命名作業にやっと終止符を打つことができたのでした。

この続きは次回。
↑春がすぎ夏がすぎ、すったもんだの末にようやく決まった『あおくんふくちゃん』。表紙はこちらです! 12月17日くらいから並び始める予定です。
↑ももたろうのおばあちゃんの次は一寸法師! 鬼の青くんも大忙しです。

講談社絵本新人賞 受賞作既刊

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みやもと かずあき

Kazuaki Miyamoto
絵本作家

和歌山県生まれ。第44回講談社絵本新人賞受賞。絵本作家を目指して30年、60歳にして、ついに本作で念願のデビューを果たす。 男の子と女の子の双子育児の傍ら、「講談社フェーマススクールズ」「神戸ギャラリーヴィー絵話塾」で絵本制作を学んだ。受賞歴として第38回日産童話と絵本のグランプリ絵本の部優秀賞、第3回安城市新美南吉絵本大賞入賞など。 現在は、地元でベビー子ども服店を営みながら、みかんや野菜を少々作っている。

和歌山県生まれ。第44回講談社絵本新人賞受賞。絵本作家を目指して30年、60歳にして、ついに本作で念願のデビューを果たす。 男の子と女の子の双子育児の傍ら、「講談社フェーマススクールズ」「神戸ギャラリーヴィー絵話塾」で絵本制作を学んだ。受賞歴として第38回日産童話と絵本のグランプリ絵本の部優秀賞、第3回安城市新美南吉絵本大賞入賞など。 現在は、地元でベビー子ども服店を営みながら、みかんや野菜を少々作っている。