第42回(2021年)講談社絵本新人賞受賞作家・伊佐久美さんと、第43回(2022年)講談社絵本新人賞受賞作家・玉田美知子さんへのインタビュー、後編のスタートです。
受賞者ふたりのルーツに迫る!
伊佐久美さん(以下、伊佐さん):クレヨンとオイルパステル(違いがよくわかりません)、ダーマトグラフ、アクリル絵の具。ラフスケッチを描くのには色鉛筆を使っています。
玉田美知子さん(以下、玉田さん):アクリルガッシュです。コラージュも好きなので、包装紙や面白い素材なども集めています。
──子どものころに好きだった絵本はありますか?
伊佐さん:『かわ』『だるまちゃんとてんぐちゃん』(ともに福音館書店)です。最近気がついたのですが、両方ともかこさとしさんの絵本だったのですね。絵のなかに入ったつもりになって遊ぶのが好きでした。
玉田さん:保育園のときに絵本の定期購読をしていて、毎月絵本が届くのを楽しみにしていました。特に印象に残っている一冊が、矢崎節夫さん(著)と福原ゆきおさん(絵)の『さくらのさくひ』(フレーベル館)という絵本です。
ハッピーエンドのなかに悲しみもあり、今思い返すと、絵本を通して初めて知った感情だった気がします。幼いながらに強く心に刻まれ、このときの絵本との出会いが今につながっているのかなと思います。
──好きな絵本作家や画家はいますか?
伊佐さん:たむらしげるさん、佐野洋子さん、野又 穣さん、クリムトさん、ロスコさん、エドワード・ホッパーさん。
玉田さん:ブルーノ・ムナーリさん、クヴィエタ・パツォウスカーさん、ヤン・シュヴァンクマイエルさん、堀内誠一さん、大竹伸朗さん、茂田井 武さん。
伊佐さん:学生時代の友達。ダンス仲間や先生。仕事の仲間や上司。今働いている和菓子屋のお客さんたち。家族。そのほかにもたくさんの人の影響を受けています。みんな優しくて、面白いのです。世の中につまらない人なんていないな~と実感する毎日です。
劇的なできごとは思いつきません。地味に生きてきました。
玉田さん:大学1年生のときに、大学の図書館で、ブルーノ・ムナーリさんの『THE CIRCUS IN THE MIST(霧の中のサーカス)』という絵本に出会いました。霧の中を進んでいくようすをトレーシングペーパーを使って表現していて、「こんな表現のしかたがあるんだ!」と、本当に雷に打たれたような衝撃を受けました。
それからすぐに洋書屋さんに行って、当時の自分にとって高額ではありましたが、思い切って手に入れました。いつも目の届くところに飾って、今も大切にしている一冊です。
──好きな言葉、座右の銘があれば教えてください。
伊佐さん:たくさんあります。手帳にギッシリ書き込んであるのを眺めるのが好きなのです。最近よく呟いているのは「泣こかい、飛ぼかい、泣こよかひっ飛べ」です。私は鹿児島出身ではありませんが、いいなあ、と思う言葉です。
あと、『タコとだいこん』『おおきくなったリス』を描きながらブツブツ呟いていたのは、「表現されるべき内容の寸法に合わせて表現を裁断することがあってはならないし、いったん表現されたものが、固定された枠線となって思考を窒息させることがあってはならない」でした。
玉田さん:心に留めている言葉はたくさんあるのですが、自分のなかから出た言葉でひとつ。
「ドジは人生を豊かにする」
最近も新幹線に携帯を忘れてしまったり、子どものころから財布をよく落としたりと、自分の失敗談にはキリがありません。だけど、失敗したからこそ広がる物語があり、失敗したときにどのように行動するのかが一番大事なのかな、と思います! ただの負け惜しみではありますが……(汗)
お互いのキャラクターを描いてもらいました!
ではまず、伊佐さん作の「ぎょうざ」から発表します! 伊佐さんは玉田さんの「制作日記」をお読みになっていて、「ぎょうざ」のキャラクターそのものはご存知のようですが……。
──もの悲しさが、なんとも愛しい! 玉田さん、いかがでしょうか。
玉田さん:夕暮れ時に哀愁漂うぎょうざさん! 一粒の涙が切ないです。
私でよければ悩みを聞いてあげたい! 冷えた体をフライパンで温め直してあげたい! そしてそっとお皿に戻してあげたい! と思わせるかわいさがたまりません。
──さて、つづいて、玉田さん作の「リス」をお見せいただきましょう。
──ま、まさかの宇宙規模!
伊佐さん:すごいスケールの大きさ! 地球にしがみついているのですね!
光り輝くドングリ島がある! リスうれしそう! これからドングリ島をかじるのでしょうか? 巨大リスの襲来、ワクワクします!
──なんとも贅沢な企画でした。伊佐さん、玉田さん、ありがとうございました!
これからのこと、伝えたいこと
伊佐さん:読んだら思わずニッコリしてしまうようなお話を描けたらな~と夢見ています。
玉田さん:読む前とあとで世界の見え方が少しだけ変わるような、さまざまな感覚を刺激するような絵本を、ずっと作りたいと思っています。そして願わくば誰かのお気に入りの一冊になれれば、とても嬉しいです。
──最後に、絵本新人賞受賞をめざす方へ、アドバイスやメッセージをお願いします!
伊佐さん:「描いたものはどんどん出したほうがいいよ」。
私が応募するきっかけとなった、漫画家さんの言葉です。私みたいに思いつきで応募しても受賞することがあるのです。ビックリですよね?
玉田さん:私はネガティブな性格なので、つい自分のマイナスの部分に目が行きがちですが、自分の持っているものを見つめて、そこを引き出せるように心がけています。良い悪いはともかく、まずは手を動かして形にしてみることが何より大事で、そこから次のステップが見えてくると考えています。
煮詰まったときの個人的な解決方法ですが、歌を作ってみたり、工作やお料理をしたりと、絵本の作業から離れて、手を動かす方向性を変えるようにしています。どんなことでも行動することが、自分の可能性を広げ、必ず次につながっていくように思います!
──たくさんの質問へのご回答、ありがとうございました。これからのさらなるご活躍を、楽しみにしております!
伊佐さんと玉田さんの絵本を読んでみよう!
シュールで味わいぶかいデビュー作、『タコとだいこん』の伊佐久美さんによる、注目の第2作。
第15回MOE絵本屋さん大賞新人賞2位に入賞した、第42回(2021年)講談社絵本新人賞受賞作。
選考会でも絶賛された、第43回(2022年)講談社絵本新人賞受賞作。
伊佐 久美
玉田 美知子
玉田 美知子
1977年生まれ、神奈川県在住。多摩美術大学立体デザイン専攻卒業。 第21回ピンポイント絵本コンペ入選、第42回講談社絵本新人賞佳作受賞。 2022年、第43回講談社絵本新人賞を受賞。 2024年、第15回ようちえん絵本大賞受賞、第8回未来屋えほん大賞受賞、第15回リブロ絵本大賞入賞。コーヒー豆のサブスクリプションサービスを運営。
1977年生まれ、神奈川県在住。多摩美術大学立体デザイン専攻卒業。 第21回ピンポイント絵本コンペ入選、第42回講談社絵本新人賞佳作受賞。 2022年、第43回講談社絵本新人賞を受賞。 2024年、第15回ようちえん絵本大賞受賞、第8回未来屋えほん大賞受賞、第15回リブロ絵本大賞入賞。コーヒー豆のサブスクリプションサービスを運営。
伊佐 久美
1970年生まれ、東京都在住。東京造形大学デザイン学科卒業。製版会社、デザイン事務所勤務を経て、2002年よりぬいぐるみ、雑貨等の制作・販売をするネットショップの運営をしている。2021年、第42回講談社絵本新人賞受賞。
1970年生まれ、東京都在住。東京造形大学デザイン学科卒業。製版会社、デザイン事務所勤務を経て、2002年よりぬいぐるみ、雑貨等の制作・販売をするネットショップの運営をしている。2021年、第42回講談社絵本新人賞受賞。