かわいいだけじゃない。20年売れている「ムーミンおはなし絵本」がすごい

小さい子どもに伝えたい!ムーミン絵本にこめられた哲学とは?

長く愛されている「ムーミンおはなし絵本」シリーズ。原作小説は2025年に80周年を迎えましたが、こちらの絵本は20周年。テキストは、原作小説9巻を3回読み込んだ、という、作家で編集者の松田素子さんが手がけています。
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1964年にはじめて日本に紹介されてから、長年読み継がれてきたムーミン小説。時を経た訳文を、今読むのにふさわしい形に改訂した読みやすい新版が2019年に発売になりました。

ムーミンの著者トーベ・ヤンソンは、フィンランド人ですが、スウェーデン語で執筆をしていました。翻訳文改訂に携わってくださった畑中麻紀さんは、スウェーデン語訳者であり、ムーミンをこよなく愛する一人でもあります。

ムーミンに詳しい畑中さんに、20年売れ続けているムーミンおはなし絵本の魅力について教えていただきました。
ムーミン世界の原点であるムーミン小説(全9巻)。新版は、フィンランド最終版と同じカバーデザインです。児童向けソフトカバー版、講談社文庫版、青い鳥文庫版の3種類でそろえることができます。
© Moomin CharactersTM

\たのしいムーミンの本がいっぱい/

「ほしいと おもったら、ぼくなら まず、それを とにかく じっと みるね。

そして、それを たいせつに あたまの なかへ しまうんだ。

そうすれば、 そいつは なくなったり しないし、 こわれたりも しない」

(『ムーミンのふしぎ』より)
ムーミン原作小説『ムーミン谷の彗星』を読んだ方ならきっとピンとくる、スナフキンの言葉です。

この絵本シリーズは原作小説を短くしたり、一部を取り出して絵をつけたりしたものではないのですが、ムーミン小説9巻のエッセンスがあちこちにちりばめられていて、ムーミンが好きな人にはたまらなく魅力的ですね。「宝探し」のような楽しさがあります。

スニフの洞窟や、冬のムーミン谷の風景の端にさりげなく描きこまれているりすや、ミイの辛辣なせりふや独特のしぐさなど、原作小説をご存じの方ならすぐに、あの巻のあのシーンだ! とピンとくるはずです。

──テキストを手がけた、作家で編集者の松田素子さんは、まず原作小説9巻すべて3回読み込んだとおっしゃってました。その成果があらわれているのですね。

キャラクターたちもそれぞれに生き生きしていますよね。この絵本を読んでもらった子が将来、原作小説を読んだら、なつかしい気持ちになるんじゃないかなと思います。そんな絵本は、ムーミン好きとしてはうれしいですね。

トーベの哲学がやさしく伝わる言葉とイラスト

ムーミンの著者トーベ・ヤンソンは、自分自身の心を大切にすることや、相手を思いやる気持ちなどを大事にしていました。これは、小さい子どもにも伝えたい価値観ですよね。でも、実際に大人がそれを伝えようとすると、なんだかつまらない説明になってしまう。

この絵本では、やわらかな言葉と心地よい色彩の絵で、読んであげるだけで、大切なことが小さい子どもにもやさしく伝わってきますね。

目には見えないけれど大切なものがあること。

だれかと一緒にいることは楽しいけれど、ひとりでいる時間も必要であるということ。

トーベ・ヤンソンがムーミン原作小説にこめた色あせることのない哲学が、絵本を読んであげるだけで、イメージとして無理なく伝わると思います。

絵本『ムーミンのふしぎ』でムーミントロールの心の中に並べられた色とりどりの瓶のように、心にひびく絵本を読んでもらった経験は、幼い心の中にそっと、しまわれるのかもしれませんね。

読み聞かせの記憶は「たからもの」

──畑中さんご自身にもお子さんがいらっしゃいます。絵本の思い出はありますか。

だれかに読み聞かせしてもらうワクワクする時間は、読み聞かせる側のだれかの忘れがたい時間でもありますね。

今日もこれ読んで! もう1回読んで! と繰り返しリクエストされ、読み手も聞き手も覚えてしまったフレーズや、オリジナルのメロディーをつけて読んでいた、絵本の中の歌たち。保育園や幼稚園やご家庭で、そういった人気者の絵本がきっとあると思います。

途中できょうだいゲンカが始まってしまったり、寝かしつけのための絵本タイムのはずが、大人のほうが先に眠くなって、子どもに読み聞かせられたり。

子どもたちが大人になってしまった私にとっては、読み聞かせの日々はもう、はるか遠い昔のことですが、かつての人気者たち──ページが折れたり、破れてテープで補修したりでボロボロになった絵本たちを本棚から取り出して開くと、あのころの日々があざやかに、なつかしくよみがえってきます。

ムーミントロールの心の中の色とりどりの瓶は、読み手の心の中にも並べられているのですね。
畑中 麻紀
(はたなか・まき)

トーベ・ヤンソンと同じ8月9日生まれ。小学生のときにムーミン原作小説に出会い、原書で読みたいという思いからスウェーデン語を学ぶ。民間企業に勤務後、フリーの翻訳者に。トーベ・ヤンソンの評伝『トーベ・ヤンソン 人生、芸術、言葉』(フィルムアート社)を森下圭子氏と共訳。1988年にトーベにスウェーデン語でお手紙を出したら便箋2枚にびっしりのお返事が届いたことがあったそう!

ムーミンおはなし絵本3部作

ムーミンのたからもの

ムーミンのたからもの

トーベ・ヤンソン(原作)  松田 素子(文) スタジオ・メルファン(絵)

発売日:2005/08/11

価格:定価:本体1400円(税別)

© Moomin Characters™​
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ムーミンのふしぎ

ムーミンのふしぎ

トーベ・ヤンソン(原作)  松田 素子(文) スタジオ・メルファン(絵)

発売日:2009/12/11

価格:定価:本体1400円(税別)

© Moomin Characters™​
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ムーミンのともだち

ムーミンのともだち

トーベ・ヤンソン(原作)  松田 素子(文) スタジオ・メルファン(絵)

発売日:2008/08/12

価格:定価:本体1400円(税別)

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トーベ・ヤンソン

Jansson Tove
画家・作家

(1914年8月9日‐2001年6月27日) フィンランドの首都ヘルシンキに彫刻家の父、挿絵画家の母のもとに生まれ、幼いころから画家を目指す。ヘルシンキ、ストックホルム、パリで絵を学び、政治風刺雑誌『ガルム』をはじめ、児童書や新聞の挿絵などの仕事を精力的にこなした。 ムーミン小説の9作品は、戦争中、自分自身の安らぎのために執筆した『小さなトロールと大きな洪水』を1945年に出版したところから始まり、最愛の母シグネが亡くなった1970年に出版した『ムーミン谷の十一月』が最後となった。 1954年ロンドンの「イヴニング・ニューズ」掲載のムーミン・コミックスの連載が人気を博すなど多才ぶりを発揮。 1966年国際アンデルセン賞受賞、1976年フィンランドの芸術家に贈られる最高位の勲章、プロ・フィンランディア勲章受章。

(1914年8月9日‐2001年6月27日) フィンランドの首都ヘルシンキに彫刻家の父、挿絵画家の母のもとに生まれ、幼いころから画家を目指す。ヘルシンキ、ストックホルム、パリで絵を学び、政治風刺雑誌『ガルム』をはじめ、児童書や新聞の挿絵などの仕事を精力的にこなした。 ムーミン小説の9作品は、戦争中、自分自身の安らぎのために執筆した『小さなトロールと大きな洪水』を1945年に出版したところから始まり、最愛の母シグネが亡くなった1970年に出版した『ムーミン谷の十一月』が最後となった。 1954年ロンドンの「イヴニング・ニューズ」掲載のムーミン・コミックスの連載が人気を博すなど多才ぶりを発揮。 1966年国際アンデルセン賞受賞、1976年フィンランドの芸術家に贈られる最高位の勲章、プロ・フィンランディア勲章受章。