【科学的理由があった!】人間が人間を食べてはいけないのはなぜ? 「倫理的・社会的な問題」以外の説明とは 

科学系YouTubeチャンネル「サイエンスドリーム」が解説

食糧(しょくりょう)不足で仕方なく人を食べたことも

イラスト:德永明子
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17世紀初頭のアメリカでも、食人行為が起きたという証拠が発見されました。

イギリス人がアメリカに渡って初めて住んだジェームズタウンという植民地の遺跡では、14歳の少女の頭蓋骨の化石に、人々が肉をえぐって食べ、骨に穴を開けて脳を取り出して食べた証拠が残っているというのです。

実際に文献には、村の食糧が完全に底をついて、移住民たちは犬やネコ、ネズミやヘビ、さらに靴の革まで食べ、それでも空腹を我慢できなかった人々は墓から掘り出した死体を食べたという記録も残っています。

人食い人種はいたのか?

イラスト:德永明子
これらの食人の例は、何らかの宗教儀式を行う場合や極限までに食べ物に困っている場合でした。そして、栄養摂取のために人間が人間を食べる「人食い人種」の集団はこれまで存在しないと考えられています。なぜなら、食人行為は合理的ではないからです。

というのも、自分と肉体の大きさや知的能力が近い同族を狩ることはとても難しいからです。ウサギやシカなどの人間ではない動物を狩るほうが、はるかに楽なのです。実際に人間以外の動物たちの世界でも、共食いはほとんどありません。

狩る手間のわりには栄養がない人間の体

イラスト:德永明子
そして、栄養学の面から見ても人肉を食べるのはあまり効果がありません。2017年に、人肉を栄養学的な観点から分析するというユニークな研究が行われました。

その結果、1人あたりの人肉はせいぜい25人の男性が半日だけ持ちこたえられる程度のカロリーであるのに対して、マンモスを1匹だけ倒せば同じ数の集団が2ヵ月は持ちこたえられることがわかりました。

つまり、あえて栄養を補充するために毎日苦労して人間を狩っても、たいしてお腹はふくれないということです。
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