とっても小さなカブトムシ、そのサイズの驚くべき理由とは?

【ちょっとマニアな季節の生きもの】サイエンスライター・柴田佳秀先生が見つけた生きもののふしぎ

サイエンスライター:柴田 佳秀

小さなカブトムシ、そのサイズは遺伝ではない!

夏は、鳥が好きな私にとってちょっと嫌なシーズンです。一年でもっとも動きがなくひっそりとしているので観察が難しいからです。でも、私は昆虫も大好きなので鳥がいなくても大丈夫。夏は昆虫観察を楽しんでいます。
私が昆虫観察に行くのは夜です。昼間は暑すぎて熱中症になりそうなので、机に向かってお仕事をがんばります。そして、夜になると近所の小さな雑木林に出かけ、樹液に集まる虫たちを観察するのです。

「昆虫酒場」とも呼ばれる木の幹からしみ出した樹液は、夜になるとカブトムシやクワガタはもちろん、ガやゴキブリなど、いろんな虫が集まってきてにぎわいます。反対にこわいスズメバチは、夜の樹液にはあまり来ないので安心です。昼間だとスズメバチがいるので近くで観察できないですからね。
小さいカブトムシもかわいい
少し前の話になりますが、2020年お盆のころ。カブトムシがよく見られるのは例年7月下旬なのですが、珍しく8月10日頃ににぎわいのピークをむかえ、1本の木に50匹以上のカブトムシがいました。虫好きの人ならば大興奮の光景です。ただ、数は多かったのですが、体が小さなカブトムシが目立ちました。角までの大きさがわずか36mmしかなく、カナブンサイズなんです。

普通のカブトムシは50mmくらいはありますから本当に小さい。いったいどうしてこんなに小さくなってしまったのでしょうか?
大きなカブトムシに負けずにがんばれ!
小さなカブトムシは、じつは幼虫時代に十分な栄養が取れなかったため、大きくなれなかったのです。カブトムシの大きさは、幼虫のときにどれだけ栄養豊富なエサを食べたかによって決まります。

小さなカブトムシ君は昆虫酒場ではちょっと弱い存在です。エサを巡る戦いでも大きなカブトムシに負けてしまいますし、メスの奪い合いでも劣勢です。でも、観察を続けてみると、大きなカブトムシの隙を突いて、すばやく動きメスを獲得して交尾をしていました。フットワークを活かして懸命に生きているんですね。

「がんばれ!」とつい応援してしまいます。カブトムシがいたら、すぐに捕って虫かごに入れたくなりますが、ちょっとがまんして、虫たちのドラマを観察して見てはいかがでしょうか。とっても面白いのでおすすめです。
写真提供/柴田佳秀
しばた よしひで

柴田 佳秀

Shibata Yoshihide
サイエンスライター

元ディレクターでNHK生きもの地球紀行などを制作。科学体験教室を幼稚園で実施中。著作にカラスの常識、講談社の図鑑MOVEシリーズの執筆など。BIRDER編集委員。都市鳥研究会幹事。科学技術ジャーナリスト会議会員。暦生活で連載中。MOVE「鳥」「危険生物 新訂版」「生きもののふしぎ 新訂版」等の執筆者。

元ディレクターでNHK生きもの地球紀行などを制作。科学体験教室を幼稚園で実施中。著作にカラスの常識、講談社の図鑑MOVEシリーズの執筆など。BIRDER編集委員。都市鳥研究会幹事。科学技術ジャーナリスト会議会員。暦生活で連載中。MOVE「鳥」「危険生物 新訂版」「生きもののふしぎ 新訂版」等の執筆者。