「マクロス」シリーズはなぜ40年も支持され続けているのか?

三角関係、可変戦闘機、そして歌…時代に合わせて可変し続ける「マクロス」

テレビマガジン編集部

1982年に放送がスタートした『超時空要塞マクロス』は、今年2022年で40周年を迎えた。

1982年以降もさまざまなシリーズ作品が誕生し、2021年には最新作である『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』が公開されるなど、「マクロス」は40年間に渡って人気を保持し続けている伝説的シリーズとなった。

日本では毎年、多くのアニメーション作品が誕生しているが、40年に渡って人気を維持しているシリーズはほんのひと握りしかない。はたして「マクロス」は、なぜ支持され続けているのだろうか?
『超時空要塞マクロス』のVF-1J バルキリー。ロボットアニメの歴史を変えた3形態への変形は、ファンに衝撃を与えた。

はじまりから衝撃だった「マクロス」

伝説の幕開けとなった『超時空要塞マクロス』は、最初の作品にして、以降のシリーズの構成要素を決定的なものとした。まずは『超時空要塞マクロス』が、どんな作品だったか振り返ってみよう。

西暦1999年、突如として地球に落下してきた巨大な宇宙戦艦から、人類は巨人異星人の存在を知る。異星人のテクノロジーを研究し続けた人類は、それから10年後、宇宙戦艦をSDF-1 マクロスとして改修。迎えた進宙式の日、マクロスは勝手に主砲を発射してしまう。

それはマクロスの持ち主だった異星人と対立する勢力、ゼントラーディに向けて放たれたもの。マクロスに仕掛けられた、巧みなブービートラップが発動したのだった。それによってマクロスは意図せずにゼントラーディの攻撃を受け、いきなり実戦を経験することに。

進宙式を見にきていた民間人パイロットの一条輝、軍の管制オペレーター・早瀬未沙、中華料理店の娘、リン・ミンメイは、この襲撃によって偶然出会うことになる。

マクロスはゼントラーディの攻撃から逃げるため、月の裏側へとフォールド(ワープ)を敢行。だが、マクロスの機能は不完全で、予測とは異なる宇宙へと放り出され、フォールドの失敗とともに機能をも消失してしまう。さらにフォールドに巻き込んだ5万6000人の一般市民を抱え込んだまま、マクロスは宇宙をさまようことになる。

可変戦闘機バルキリーのパイロットとなった輝、軍人としてゼントラーディとの対応に苦慮する未沙、そしてアイドルとして人々を魅了するミンメイと、3人はゼントラーディとの戦闘によって運命の歯車が大きく変わってしまう。人々の思惑を胸に、マクロスは地球を目指すのだった……。
圧倒的なメカニック描写と魅力的なキャラクター、そして歌のインパクトはファンの心をわしづかみにした。

ロボットアニメなのにラブストーリー!?

「マクロス」シリーズの魅力として挙げられるのが、三角関係のラブストーリーだ。

「マクロス」は、カテゴリー的には玩具の販促を兼ねたロボットアニメに属している。「マクロス」以前の70年代までの多くのロボットアニメでは、最大の見どころとなるのはロボットのアクションで、キャラクタードラマやラブストーリーにスポットが当てられることはまれだった。

「ロボットアニメは子ども向け」という概念が一般的だった時代では、それが当たり前だったのだ。

ところが『超時空要塞マクロス』では、ロボットアクションを充実させつつ、輝、ミンメイ、未沙という異なる立場の3人のラブストーリーがエピソードの主軸に置かれ、ファンを魅了した。

とくに普通の少女だったミンメイがトップアイドルとしての階段を駆け上がり、輝との距離が生まれる一方、うるさい上司的なポジションにいた未沙が、じつは一番わかり合える女性だった……という展開にファンは釘付けに。はたして輝の選択は正しかったのか? ミンメイ派、未沙派に分かれて、ファンは論争を繰り広げて大いに盛り上がった。

このように非日常の宇宙戦争と、日常のラブストーリーを等価に描くことが「マクロス」の起こした革命であり、他のロボットアニメとは一線を画すコンセプトとなった。

三角関係という構造は、キャラクターや立場によって、ガラリとストーリーや印象が変わることが最大の魅力。

「マクロス」各シリーズのドラマが、まったく異なる印象を受けるのは、おもに三角関係の違いがもたらしたものだといえる。
マクロス艦内でトップアイドルになるミンメイ(左)。だが、輝(右)との心の距離は広がっていった。
出会いは最悪だったが、もっとも身近にいた未沙(左)と輝(右)は惹かれ合っていく。
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