SFではなく現実! JR西日本が本気で挑む鉄道ロボ開発計画!

遠隔操作の多機能鉄道重機で、人と鉄道を守れ!

テレビマガジン編集部

現在、試作機による検証が行われている多機能鉄道重機。移動の際にはクレーンを収納してコンパクトになっている  写真提供/JR西日本
JR西日本が、人型重機ロボットと鉄道工事用車両を融合させた、高所作業用の多機能鉄道重機を開発するプロジェクトを進行中であることをご存知だろうか。

毎日なにげなく利用している鉄道だが、その鉄道を安心して利用できるのは、運営する鉄道会社の日々の点検や安全管理があるからこそ。

しかし、その現場は危険がいっぱいだ!

そこでJR西日本は、これまでの「人の手で行っていた作業」を機械化することで、「生産性と安全性の向上」をめざし、多機能鉄道重機の開発をしているというのだ。

はたして、その多機能鉄道重機の能力とは!?

危険な現場に立ち向かえ!

電車に電気を送るために線路上に張りめぐらされた架線の高さは、約4~5メートル。

そこに流れている電気は、大きな電車を動かすほどだからとてつもないパワーだ。

架線の電圧は路線によって異なるが、関東より西では直流1500ボルト。新幹線等は交流2万5000ボルトと言われているが、家庭のコンセントの電圧が100ボルトということを考えると、これがどれだけ高い電圧かわかるだろう。

そんな架線を、不安定な足場で人の手でチェックし、修復する作業は、危険をともなわないはずがない。
クレーンを伸ばし、実際に作業を行う多機能鉄道重機  写真提供/JR西日本
そこで開発が進められているのが、多機能鉄道重機だ。

移動用車両にある「人機操作機」から、クレーンの先に設置された人型ロボット「零式人機Ver.2.0」を操るのだが、操縦者が危険な高所ではなく地上から遠隔操作を行うことで、操縦者の安全を確保している。

遠隔で動かすロボットの操作性は?

操作方法は、「人機操作機」内の操縦者が下の画像のようにVRゴーグルを装着して、遠隔操作で「零式人機Ver.2.0」を操縦する。

操縦者は地上にいるため、危険な環境で作業を行うことはない。

操縦者の感想によると、「足場が不安定な高所での作業を、安定した地上から行うことができるので安心感がある」とのことだ。
「人機操作機」で操作する様子。操縦に使う機械は、とてもシンプルで扱いやすい  写真提供/JR西日本
「零式人機Ver.2.0」は、片手で20キログラム、両手では40キログラムの物を持ち上げることが可能だ。

人間が行う作業では、もちろんこんな重さの物を持ちながらの高所での作業など危険極まりないが、それが出来てしまうのが「零式人機Ver.2.0」のスゴイところである。

では、デモンストレーションとして、鉄の枠を「零式人機Ver.2.0」に持ってもらおう。

すると、VRゴーグルに映るのは……。
肩から腕にかけての可動域は広く、様々な作業に対応可能だ  写真提供/JR西日本
まるで自分の手で鉄の枠を持ったかのような映像が。

これなら地上にいながら、あたかも高所で作業しているような感覚で作業が可能だ。

操縦者も、「ゴーグルをつけることで目の前のことのように操作できる」と語っている。
人間の頭部にあたる部分にカメラがあるので、本当に自分が作業しているような映像を見ることができる  写真提供/JR西日本
「零式人機Ver.2.0」が人型ロボットであることが、この「直感的に操作ができる」ことに繋がっているようだ。

さらに人のような腕を持っているので、「道具を操る」ことも可能だ。

鋼鉄製のワイヤーなどの固い素材を切断するためには、強力なカッターが必要だが、その取扱いも生身の人間では危険極まりない。

しかし、ロボットを介しての作業であれば、危険なく行うことができるのだ。
作業をする様子は、まるで人間が行っているかのようにスムーズだ 写真提供/JR西日本

開発担当者に聞く、開発の意義と未来とは!?

このプロジェクトは、JR西日本が、株式会社人機一体と、ホームドアなどを手掛ける日本信号株式会社との3社共同で行っているのだが、どのようにしてこのメンバーが集結したのか。JR西日本の開発担当者に聞いた。

編集部
まず、開発に至った経緯を教えてください。

担当者
鉄道の電気関係の設備は、その多くが高所に設置されており、これらの設備のメンテナンス作業の多くが人力作業となっています。

安全性の向上と省力化を目的とした機械化を模索している中で、ロボットの制御に関する独自技術を保有し、人の重作業をロボットに担わせることに挑戦している人機一体社さんを知り、共同研究開発を行うこととしました。

その後、製品化を担当する企業として日本信号さんが参画し、現在の開発体制となっています。

編集部
開発にあたって難しかった点は?

担当者
鉄道の電気設備作業は、多くの架線が周囲にある中での作業であり、周りに支障物があっても作業ができるように、機体のサイズを工夫することです。

場所によって周辺環境が変わる鉄道の現場でも安定して作業ができるように、現地での検証を重ね、構造の修正等を行いました。

編集部
この重機の利点はどのような所でしょうか?

担当者
直観的な操作が可能なので、「操作技術を容易に習得可能​」である点、「人型であり、汎用性のある機械なので多様な状況の作業で使用可能​」である点、「高所作業を地上から行うことができるので、作業の安全性が向上」する点です。

編集部
完成後は、どのような運用を予定していますか?

担当者
2024年春から実用化し、営業線での使用をめざしています。どの線区で使用するかは決まっていませんが、まずは在来線での使用を考えています。台数も決まっていませんが、少数導入し、効果を見極めながら増備を考えていきます。
実用に向けて試験を繰り返す多機能鉄道重機は、2024年にはどのような姿になっているのだろうか  写真提供/JR西日本
2年後の実用化を目指すという多機能鉄道重機。

人と鉄道の安全を守るその雄姿を実際に見ることができるのは、ほんのちょっと先の未来だ。

人型ロボットが活躍するのはテレビやゲームの中ばかりだったが、実際の生活の現場で活躍する世界は、すぐそこまで来ているぞ!
てれびまがじんへんしゅうぶ

テレビマガジン編集部

日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『テレビマガジン 公式動画チャンネル』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。 【SNS】 X(旧Twitter):@tele_maga  Instagram:@tele_maga

日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『テレビマガジン 公式動画チャンネル』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。 【SNS】 X(旧Twitter):@tele_maga  Instagram:@tele_maga