木村昴を支える他者への「リスペクト」仲間に認められたい一心でアニメ「ドラえもん」のジャイアン役に。『ドラえもん』新作映画の見どころとは?
声優・木村昴さん特別インタビューvol.1
2024.03.13
ライター:小川 聖子
「親子できむすばが大好き!」「優しくポジティブな木村さんのお話をもっと聞きたい!」というたくさんのリクエストに応え、木村さんが『Ane♡ひめ』に遊びに来てくれました。
vol.1では木村さんの子ども時代のことからコミュニケーション術、アニメ『ドラえもん』の最新作『映画ドラえもん のび太の地球交響楽(ちきゅうシンフォニー)』についてまでお伺いしました。
子ども時代言葉が通じなくとも「表現力」で楽しく暮らせた小学生時代
木村さん 小学生のころは、とにかく目立ちたがりや、ひょうきんなお調子者という感じだったと思います。
僕は小学校1年生になるときにドイツから日本に移住したのですが、低学年のころは日本語もわからないし、見た目もみんなと少し違うこともあって、今でいう「いじめ」みたいなこともあったみたいです。
「みたい」というのは、当時は僕、日本語もよくわからなくてなかなか気が付かなかったんですよ。
「みんなオレのことめっちゃかまってくれるじゃん!」くらいに思っていて(笑)。「あれっていじられてたんだ」「いじめじゃん」と気がつくのに2年くらいかかりました。
──ポジティブな性格もあったのでしょうか。
木村さん そうですね。そのころはとにかく身振り手振りを交えながら一生懸命コミュニケーションをとっていました。
自分で言うのもなんですが、当時から多少「表現力」はあったんじゃないかな(笑)。言葉は通じなくても、友だちとはコミュニケーションが取れていた気がします。
楽しいことは全力でやって、細かいことは気にしない性格もあって、割と楽しく過ごせていた気がします。
表現を学べば学ぶほど目立ちたがりやになっていった
木村さん 当時は母が「日本語の勉強にもなるんじゃないか」と、近所にあった児童劇団に僕を入れてくれていて、そのレッスンに情熱を注いでいました。
土日にレッスンがあったのですが、お芝居をしながら日本語も勉強して、さらに歌のレッスン、ダンスのレッスンもあって、毎週末休まず行っていました。
結局それが今にもつながっているので、母には本当にいいきっかけを与えてもらったと思っています。
──どんなところが面白かったのでしょう?
木村さん 児童劇団では表現すること、人に見せるための技術を学んでいました。そこで、「へぇー、こうするとこんなふうに見えるんだ」ということを教えてもらったら、「じゃあ、ちょっと友だちに披露してみようかな」って。
それでみんなのリアクションを見て「なるほどな」と。そんなことが面白かったんだと思います。それを繰り返すうち、学べば学ぶほど目立ちたがり屋になっていった気がします(笑)。
──友だちのリアクションを楽しんでいたんですね。
木村さん そうです。そのうち子役としてドラマに出たり、バラエティ番組に出たりするようになると、みんなが「見たよ、すげぇな!」って言ってくれて。それがもう、ものすごく嬉しくて。
「オレはこのために生きてるんだ!」くらいに思っていましたね。その中には、昔僕のことをいじってきた子たちもいたんですけど、そんな子たちにも「すげぇ!」って言われるのが快感でしたね。
ほめられることが原動力 友だちに「刺さるには」を考えていた
木村さん はい。これはもう、今も変わっていない自分の性格ですね。「すごいね」とか「よくやったね」とか、「そんなことまでやるの?」って言われるのが本当に嬉しくて。とにかくどうしたらほめられるかを考えていました。
そうそう、それで言ったら子どもって「芸能人」が大好きじゃないですか。「昨日、芸能人の○○さんに会ったぜ!」みたいなことを言うとみんなが盛り上がるから、小学生のころは僕もよくそれを言っていました。
ただそれが、小学校高学年から中学生になったころかな? 収録のスタジオで盛り上がったレジェンドみたいな芸能人のことを話しても、みんなのリアクションがイマイチになっていって。それで、「あれ、この話題刺さってないぞ」って。
それでちょっと考えて、「これならみんなブチ上がるだろう」と思って受けたのが、アニメ『ドラえもん』のジャイアン役のオーディション。
「オーディション受けたぜ!」だけで盛り上がるから、そこまででも良かったのですが、結果、長きにわたって務めさせていただくことになりました。
──有名なエピソードですよね。木村さんは良い意味でまわりのリアクションを気にしていたというか、「友だち」の存在がとても大きかったのだと感じました。
木村さん そうですね。同級生は今に至るまで仲が良いですし、友だちのことが好きですね。
だから、「これはみんなが面白がってくれることかな?」とか、「すごいって言ってもらえることなのかな」ということは、ずっと自分が何かを決める尺度のひとつになっています。
結局ほめられるにはほめること! いじって下げる、は好きじゃない
木村さん これを言っちゃうと当たり前すぎるかもしれませんが、結局「ほめられるにはほめること」だと思います。「自分がやられて嫌なことはしない」の逆。
振り返ると、自分がほめられることが好きだから、同級生のこともほめていたところもあるな、なんて思います。
僕はスポーツがあまりできなかったんですけど、幼馴染みにはサッカー部で、体育の授業でもめちゃくちゃ活躍している運動神経抜群の子がいて。その子のことは「足1本交換しようぜ」なんて言って、いつもほめていたんですよね。
──同級生へのリスペクトがあったんですね。
木村さん そう思います。当時から友だち同士の関係の中で、「誰かをいじって下げる、貶める」みたいなことはなかったですし、大人になってもそういうのは好きじゃないので、「(誰かの)悪口で飲む」みたいなこともないんです。
今も地元の友達と食事に行くことがあって、「友達の友達」みたいな人たちと一緒になることがあるんですけど、そこでお互いを紹介し合うときも、「こういうところがカッコよくてさ」って話をしている気がします。
自分で言うのもなんですが、良い関係ですよね。お互いに認め合って「ほめ上手」になると、自分もほめてもらえるのかなって思います。
──人のいいところを見つけるのはいいことですが、なかなか人と打ち解けられないという人も多いです。
木村さん 打ち解けたり信頼関係を築いたりするには、「本音で向き合う」ことも大事かなと思います。僕、キレイごとばっかりで悪いことを全然言わない人もまた信用できないんですよ。
ちょっとさっき話したこととは矛盾するところもあるのですが、やっぱりその人自身が見えないとモヤモヤするところはあって。場合によっては自分をさらけ出して、見せてみるっていうのも必要かなと思います。
僕は「ぶっちゃけさ、……」って友達に本音を話してもらえる瞬間、めちゃくちゃテンションが上がるんですよ(笑)。「僕だけに言ってくれるのかな?」って嬉しくなっちゃう。
ただ、その上で違うなと思ったら、お互いにダメ出しというか、「お前、さっきの言い方はない、あれはないわ」ということも言い合います。それでお互い「ごめんごめんごめん!」みたいなこともありますし。
「どんなふうにあるべきか」は、自分がパフォーマンスを学んでいく中で感じてきたことかもしれません。態度が悪いやつって結局、応援したくならないじゃないですか。
本音が見えて、信頼できる人をみんな応援したいと思うので、自分もなるべくそうありたいと思っています。
木村さんがジャイアン役を務める『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』が公開!
木村さん ありがとうございます! 3月1日より公開の『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』は「音楽」をテーマにした作品です。
もしこの世から音楽がなくなってしまったら、世界はとてもつまらないものになってしまう、そのことにみんなで気づいていこうよ……というストーリーです。
今作は音楽がテーマになっているからか、いつも以上にシーンで使われる音楽の表現が素晴らしいと思いました。
僕、アフレコの現場では滅多に感情的にならないのですが……もちろん役として感情的になることはありますが、自分の席に戻ったら平常心、ということが多いんです。それが今回初めて、アフレコを見ながら泣いてしまって。クライマックスにかけて、ウワーッて感動しちゃったんですね。
その段階では音楽も完成形というわけではなかったのですが、それでもグッときたので……。ぜひ注目してほしいです。ジャイアンは大活躍とはいかないですが、しっかり活躍しています(笑)。
※インタビューは後編に続きます。
撮影/日下部真紀(講談社写真映像部)
スタイリング/高山良昭
ヘアメイク/原田琴実
PROFILE
木村昴(きむらすばる)
6月29日生まれ。ドイツ出身。声優としてアニメ『ドラえもん』のジャイアン(剛田武)役をはじめ、『呪術廻戦』の東堂葵役などで人気作に出演。タレント、俳優としても活躍中!声優として活動しながら、俳優、ナレーター、ラッパーとしても活躍。みずから旗揚げした劇団の座長も務める。
声優を務める『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』が公開中!
「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」
2024年3月1日(金)全国東宝系にて公開中
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2024