──NHK 自然番組「ダーウィンが来た!」の劇場版ではナレーションをご担当されていますが、アニメのアフレコと違うところはどんなところですか?
アニメにアフレコするのは、演じるキャラクターのなかに、どれだけ入りこめるかが大切。一方で、今回やらせていただいたナレーションは、映像をみて私が感じたことを大切にしました。
映画で観られるのは、生きもののリアルな生態です。私の声は、その映像をパワーアップさせるのが目標。映画を観た方の理解を深めたり、より楽しくなってもらうために、感情を込めてナレーションするシーンも多かったです。
──なるほど! ナレーションはあまり感情を込めずに読むものと勘違いをしていました。
たしかに、そういう面もあります! ナレーターだけが盛り上がっちゃうと、観ている人がついていけなくなってしまうので。あくまでも映像になじむトーンを保ちつつ、感情を込めるようにしました。
たとえば、舞台が南の地域にかわったときは、声色を陽気に。逆に場面が冬にかわると、静かな声にしてみました。キャラクターの表情ではなく、実写の映像に合わせて声をかえるのは難しかったですが、そのぶんやりがいも感じました。
──劇中では日本のさまざまな場所を舞台に、愉快な生きものがたくさん紹介されていましたね。映画のなかで、印象に残った生きものはいましたか。
ある母親グマと、子グマ2頭の映像が衝撃的でした。3頭で暮らす親子グマの映像なのですが、ある日を境に、母親グマが子グマを威嚇するようになります。もちろんそれは、子グマが自立するための試練。子グマはその状況をぐっと受け入れて、母親から離れていきます。
もし、アニメで親子グマの別れを描こうとしたら、母親グマが泣いたり、子グマが甘えたりする様子が描かれるはず。言葉が交わせないぶん、子グマたちは本能でわかっているように見えました。そのリアルさに、本物の生きものでしか表現できない、力強い「ドラマ」を感じましたね。