夜叉神川
著:安東 みきえ 装画:田中 千智
野間児童文芸賞受賞後初作品。人心に棲む夜叉と神の二面性を描く短編集。夜叉神川の上流から下流へ、そして海へと続く全五話を収録。
発売日 | 2024/11/28 |
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価格 | 定価:1,650円(本体1,500円) |
ISBN-13 | 9784065360200 |
判型 | 四六 |
ページ数 | 192ページ |
あの転校生のアキトだ。
ジャンパーにジーンズの津田さんは電柱のうしろにかくれるようにして、お寺をじっと見つめていた。
道をへだてたところにいるあたしには気づいていないようすだ。
しんせきの集まりできたのだろうか。いや、それならば同じように黒い服を着るだろうし、かくれてながめる必要はない。
めずらしいのか。
おそうしきや法事といった風習が、前に住んでいた町とはちがっていいて、何かよほどきょうみをひかれるところがあるのだろうか。
まったく周囲に注意をはらっていないほどの真剣さが不思議だった。(本文より)
あらすじーー「うっかり自分の考えを言わないのがせいかいなのだ」と思いつつ、そんな自分を少しみみっちい性格だと思っている美海は、正直になんでも言いすぎて「性格が悪い」とクラスメートから言われている隣のクラスに転校してきたアキトと仲良くなる。
アキトは別に悪い子ではなく、少し変わっているだけだと思っていた美海だが、
やがてアキトがお寺だのおそうしきだの、不吉な場所にばかり興味を持ったりお年寄りに厳しい様子を何度か見てしまい胸がざわざわしてくる。