
中学受験で後悔しない親の関わり方 親子関係を壊さない伴走術
書籍『中学受験伴走力』から学ぶ 挫折を成長に変える接し方 (3/3) 1ページ目に戻る
2026.08.24
出版ジャーナリスト:飯田 一史
第一志望に合格する割合が30%の世界で親が知っておくべきこと
教育ジャーナリストで、自身も中学受験経験者で、親としても息子の中受に2度寄り添ってきた佐野倫子氏の『中学受験伴走力 親がすべきこと、知るべきこと』(講談社刊)は、自分の体験も踏まえ、多数の親の取材も。
この本にはリアリティが詰まっている。

本書にもあるように、首都圏では約6人に1人の小学生が中学受験をするが、第一志望校に合格できるのは受験生全体の3割程度。厳しい世界だ。
令和の受験は情報戦で、ただ「勉強ができる」だけでは受からない。専門の塾に行き、勉強のためのみならず、中学受験のプロから受験に対する適格な情報を得る必要があります。
けれども、親が不安に駆られて塾の言うこと以外にもあれこれ調べまくった結果、情報過多で判断がつかなくなり、右往左往している場合もよくあるといいます。
しかし『中学受験伴走力』では、科目別や塾ごとに中受のプロである塾や家庭教師に取材し、情報の交通整理をしてくれているので、何に取りかかればいいのか大変わかりやすくなっています。
また、この本には具体的な勉強への取り組みや、塾との付き合い方も書かれているが、それ以上に複数のプロの口から、「切羽詰まりすぎている親が多い」ことが何度も言及され、親は「信じて待つ」「口を出しすぎない」こと、「焦らずに落ち着く」ことと説かれている。
さらに中学受験にかかる総額も。中受を決意して塾に通わせると、小学校4~6年の3年間、毎年100万円単位でお金が飛んでいくというが、それでも子どものやる気や成績に火が付くとは限りません。
親としては、月数千円の習いごとや通信教育でもちゃんとやらないと「こっちはお金を払っているのに」と思うが、金額が上がるほどその気持ちも強くなるというもの。
やきもきする親は、つい余計なひとことを子どもに言ってしまったり、焦りが子どもに伝わって余計なプレッシャーをかけたりしてしまう。
しかし、子どもに強く当たったところで勉強したり、成績が上がったりするものでもない。たいていは逆効果になり、干渉しすぎると親子関係がギクシャクしていくものだ。
この本は、受験のプロがそういうことにクギを刺してくれているのです。
また著者は、親に対して受験ではとにかく早め早めの段取り、備えが大切だと伝えると同時に、いざというときにパニックにならないこともいかに必要なのかを、慌てがちな親に、改めて気づかせてくれます。
とにかく受験期には親も視野が狭くなり、ピリピリしがちだが、そうやって子どもと摩擦や衝突をしても、振り回されても、遠回りに。
だから、いったん距離を取ってはどうかと、俯瞰させてくれる一冊なのである。
受験のあとも人生はつづく
さらに読者に「読んでよかった」と思わせてくれるのは、例えば「受験当日にうっかり上履きを忘れて子どもからひんしゅくを買った」「受験当日に雨や雪に濡れて着替えが必要だった」「面接用に買った服が受験太りで当日着せたらパッツンパッツンになっていた」などの、「そんなところにも落とし穴があるのか!」という保護者からのエピソードだろう。
また、「全落ちした家庭の親の率直な気持ち」や、「夫婦間の考えの違いから受験日程の組み方を妥協したが第一志望が最初の受験校になって失敗した」といった、「うまくいかなかった」家庭の話も胸に刺さります。
受験生の7割が第一志望に受からない中受の世界では、親子ともどもに覚悟しておくべきことばかり。
親も子も、必死にならないと見えない世界、手に入らない成果は確実にある。受験は真剣に取り組めば、成長の機会になる。それは間違いない。
と同時に
「ダメならダメで、違う道がある」。
がんばってみても「合わない」こともある。
これは本に書いてあることではなく私の意見ですが、中受のような勉強の進め方、週に何日も塾に通う生活、ペーパーテストでの競争を3年もやりきれたら、たとえどこにも受からなかったとしても、ある種の才能、適性があるといえます。
また逆に、「そのような勉強の仕方は、自分の子には到底無理だ」とわかったなら、それに気づいたことがその後の人生の選択につながっていく。
大人がする仕事と同じで、子どもの勉強だってすぐに成果は出ません。本気で一定期間取り組んでみないと、適性があるのかないのかも見えてこないものです。
親も真剣に伴走することで、子どもは受験までの長い道のりを走り切れる。加えて、もし中受で結果が出なくても、親子でやったことはムダにはならない。
ただ、そうはいっても、闇雲に走るのは、親にとっても子にとっても怖すぎるもの。「中受を考えている」、あるいは「すでにその渦中にいる」親子が、受験のあとの関係も見すえた「備え」として、手元に置いておきたいのがこの一冊なのです。
文/飯田一史
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『中学受験伴走力 親がすべきこと、知るべきこと』(講談社+α新書) 刊行
中学受験の「基本のキ」から、科目・学年別の学習方法、直前期の乗り越え方や持ち物、タイムスケジュールまで、この1冊で中学受験の「親の伴走の仕方」がわかります。

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『文章からAIくささを消す方法』著:飯田一史(星海社新書)
※2026年9月16日刊行
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飯田 一史
青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。 出版社にてカルチャー誌や小説の編集に携わったのち、独立。国内外の出版産業、読書、子どもの本、マンガ、ウェブカルチャー等について取材、調査、執筆している。 JPIC読書アドバイザー養成講座講師。 電子出版制作・流通協議会 「電流協アワード」選考委員。インプレス総研『電子書籍ビジネス調査報告書』共著者。 主な著書に 『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』 『「若者の読書離れ」というウソ』 (平凡社)『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社)『ウェブ小説30年史』(講談社)ほか。 ichiiida.theletter.jp
青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。 出版社にてカルチャー誌や小説の編集に携わったのち、独立。国内外の出版産業、読書、子どもの本、マンガ、ウェブカルチャー等について取材、調査、執筆している。 JPIC読書アドバイザー養成講座講師。 電子出版制作・流通協議会 「電流協アワード」選考委員。インプレス総研『電子書籍ビジネス調査報告書』共著者。 主な著書に 『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』 『「若者の読書離れ」というウソ』 (平凡社)『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社)『ウェブ小説30年史』(講談社)ほか。 ichiiida.theletter.jp