
6年生でも「絵本しか読めない」…いま小学生に起きている「異常事態」とSAPIXが見つけた「それでも偏差値を上げるための答え」
Yondemy代表取締役の笹沼颯太氏インタビュー (3/3) 1ページ目に戻る
2026.07.17
読書しないと超えられない
語彙には日常で使う「生活語彙」と教科書や授業で必要になる「学習語彙」の2つがある。この「学習語彙」は読書からしか得られない。
「この問題が表面化しやすいのが、小学校3~4年生ごろに訪れる、いわゆる『9歳の壁』です。低学年のうちは、教科書に出てくる内容も身近で、言葉も比較的わかりやすい。ところが3年生、4年生になると、抽象的な言葉、説明のための言葉、考えを整理するための言葉が増えていきます」
日常会話ではあまり使わない「比較」「原因」「変化」「性質」「関係」といった学習語彙が、一気に増えるのが3~4年生だ。そして笹沼氏は「9歳の壁は、読書しないと越えられない壁でもある」と語る。
「学習語彙は、単語帳で覚えるものではありません。たとえば『割る』という言葉ひとつでも、算数では割り算、理科では水溶液を割る、家庭科では卵を割る、国語では気持ちを割り切る、というように使われ方が違う。多義語なんです。これを辞書だけで覚えるのは難しい。文脈の中で何度も出会わないと、意味がつながっていきません」
たとえ知らない言葉でも、文脈の中で何度も出会うことで、子どもは少しずつ意味を推測し、自分の中に取り込んでいくことができる。
「知らない言葉に10回ぐらい出会うと、だいたいこういう意味だろうなとつながってくる。けれど、そのためには、適切なレベルの本をたくさん読む必要があります。難しすぎる本では前後の文脈もわからない。簡単すぎる本ばかりでは新しい語彙に出会えない。だから、その子に合った少しだけ背伸びの本が大事なんです」
そうしたときにヨンデミーは、その子のレベルにあった適切な本をレコメンドしてくれる。難しすぎず、かといって簡単すぎない。自分にとってちょうどいいレベルの本を読むことで、読む力と語彙力がぐんぐん伸びていく。
「本を読みなさい」は禁句中の禁句
そうは言っても、YouTubeばかり見ている子どもに本を読ませるのは難しい。笹沼氏は、まず「本を読みなさい」と言わないことだと語る。
「本を読みなさいと言うと、子どもは読まなくなります。大事なのは、本の話を会話の中に登場させることです。たとえば夕食のときに、自分が昔読んでおもしろかった本の話をする。読み聞かせで楽しかった絵本の話をする。まだ読んでいないけれど気になっている本の話をする。1日1回、雑談の中に本の話題を入れるだけでも、子どもが生活の中で本を思い出す回数は増えていきます。それを1週間ぐらい続けるだけでも、子どもの中で『ちょっと読んでみようかな』という気持ちが湧いてくるのです」
もう一つ重要なのが、新しい本が家にあり続けることだ。
「YouTubeが強いのは、新しいものが次々と用意されているからです。だったら本も、子どもにとって新鮮で、読みたいと思えるものが家にあり続ける状態をつくる必要があります」
とはいえ、子どもが読む本を毎週何冊も買い続けるのは現実的ではない。そこで笹沼氏が勧めるのが、図書館の活用だ。ヨンデミーでは、自治体の図書館で借りられる本からおすすめし、保護者がオンライン予約して取りに行けるようにする仕組みもあるという。
「毎週10冊ずつ新しい本が家にある。これが大きいんです。子どもが少し暇になったとき、手の届くところに新しい本がある。すると、動画ではなく本に手が伸びる可能性が出てきます」
ヨンデミーが目指しているのは、単に国語の点数を上げることではない。笹沼氏が繰り返すのは、「読書にハマることで、学びにハマる」という考えだ。
本を読むことで、知らない言葉に出会う。知らない世界を知る。そして、もっと知りたくなる。笹沼氏は「子どもたちにとって、本は勉強の道具である前に、楽しい世界です。でも、その楽しい世界にハマることで、結果的に読む力が育つ。読む力が育つと、授業やテストで受け取れる情報量が変わる。つまり、学び全体の効率が変わるんです」と語る。
ショート動画の刺激に慣れた子どもたちに、「本を読みなさい」と言うだけでは届かない。必要なのは、読書を根性論にしないことだろう。子どもが夢中になれる本に出会い、少しだけ背伸びをしながら読み続ける環境をつくること。そうした環境づくりで学校の成績が上昇していくはずだ。


































児童図書編集チーム
講談社 児童図書編集チームです。 子ども向けの絵本、童話から書籍まで、幅広い年齢層、多岐にわたる内容で、「おもしろくてタメになる」書籍を刊行中! Twitter :@Kodansha_jidou YA! EntertainmentのTwitter :@KODANSHA_YA_PR
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