
「一生、ここから出られない」と思った少女が変わった理由 あさのあつこが教える希望の秘密
君に贈る「物語の処方箋」
2026.04.30
「自分はここから一生出られない、という閉塞感のなかにいました」
そう語るのは『バッテリー』や『NO.6』など、世代を超えて読み継がれる名作を世に送り出してきた作家、あさのあつこさん。
アニメ化もされた近未来SFの金字塔『NO.6』シリーズや、児童文学の枠を超えて愛される『THE MANZAI』シリーズなど、数々のヒット作で読者の心に強烈な光を灯してきました。
かつて自分に自信が持てず、壁に囲まれているような息苦しさを感じていたあさのさんが、物語という「扉」を見つけたきっかけとは?
作家の軌跡を紐解き、今を生きるヒントを探る連載企画「君へ贈る物語の処方箋」。今回は、作家のあさのあつこさんにお話を伺います。
\シリーズ最新刊/
NO.6[ナンバーシックス]再会#3
目次
幼少期に感じていた閉塞感「何者にもなれない気がしていた」
──子ども時代や、作家になったきっかけを教えてください。
あさのあつこさん(以下、あさの):じつは小学生のころは、本をほとんど読んでいなかったんです。私が夢中になったのは漫画でした。
私が10代になったころは手塚治虫さんを筆頭に、石ノ森章太郎さんや赤塚不二夫さんが活躍して、日本の漫画文化が凄まじい勢いで成長した時期です。漫画雑誌の「りぼん」や「なかよし」を友達とまわし読みして感想を言い合ったり、友達と画用紙に漫画を描いたりしていました。
どんな子だったかというと、自分に自信がなくて、人と比較してダメなところばかりに目がいくようなタイプでした。特に大きな理由があった訳でもありません。私自身の特性だったのでしょう。
ずっと同じ場所に閉じ込められていて、このまま一生何も変わらないんじゃないかという閉塞感が常にあって。正直、自分が何者かになれる明るい未来なんて、さっぱり想像できませんでした。
でも周囲の友達にそういう話をすると「全然そんなことなかったやん」と言われるんです。自分の内にあるものと外に表しているものが、当時はかけ離れていたんだろうなと思います。
転機が訪れたのは中学1年生。コナン・ドイルが書いた『バスカビル家の犬』を読んで、衝撃が走りました。

本を読んでいるあいだ、霧の街や馬車の音、広陵たる原野など、行ったこともないイギリスの世界が目の前に現れるんです。
そして人並外れて怜悧ではあるけれど一風変わった長身痩軀のシャーロック・ホームズ。彼が存在しないと頭ではわかっているのに、ものすごくリアルに立ち上がってきて……。
物語は、こんな強烈な人間を生み出せるんだ、と驚かされました。
読む人から「書く人」を志すようになったきっかけ
あさの:それから海外ミステリーにハマって、アガサ・クリスティやエラリー・クイーン、ジョン・ディクスン・カーを読み漁りました。なかでもエラリー・クイーンの作品はいまだに読み返すくらい好き。有名な作品ではないけれど『九尾の猫』や『真鍮の家』は心に残っていますね。
海外ミステリーではないですが、忘れられないのはサマセット・モームの『人間の絆』。この作品に出てくる、ミルドレッドという娼婦が衝撃的だったんです。


































