読む人から「書く人」へ。「扉」の向こう側にある風を感じて
あさの:『人間の絆』に登場する娼婦・ミルドレッドは、主人公フィリップからお金を騙し取ったりするひどい悪女なのですが、15歳の私は、男に頼らない彼女の生き様に魅了されました。
ひどいことをする女性がかっこいいなんて、親や先生からは絶対に教わらないことじゃないですか。世の中のことが少しわかったような気持ちになれた、貴重な読書体験でした。
そうやって面白い物語に触れているうちに、物語を読む人ではなく、書く人になりたいと考えるようになりました。
いま振り返ると、子どものころに感じていた「ずっとこのまま」だという閉塞感を打破してくれたのが物語だったのでしょう。私を囲っているのは壁ではなく、他の世界とを繫ぐ「扉」だと教えてくれたんです。
その扉が開いたとき、19世紀のロンドンや20世紀のニューヨーク、見たこともないファンタジーの世界が私を迎えてくれました。扉の向こうから入ってくる風を感じると、閉塞感から解放されて、息ができるようになったんです。
いつのころからか、その世界を自分も書いてみたいと考えるようになりました。
──いまのお話を聞いて『NO.6[ナンバーシックス]#1』の冒頭で紫苑が衝動的に窓を開け放ち、叫ぶシーンを思い出しました。
現在は、最終刊から14年を経た2025年にスタートした「NO.6再会」シリーズが、再び大きな注目を集めている。
〔左から『NO.6再会#1』『NO.6再会#2』『NO.6再会#3』(#3は2026年5月28日発売予定)〕
![NO.6[ナンバーシックス]#1](https://d34gglw95p9zsk.cloudfront.net/item_books/images/000/434/636/medium/7b7398d4-6a3d-4953-aafe-56c698794252.jpg?1775805746)
あさの:意識をして書いたわけではありませんが、改めて「NO.6[ナンバーシックス]再会」シリーズを書いていると、最初に紫苑が叫んでいた気持ちはよくわかるなと思います。
すべて管理下にある都市「NO.6」では、嵐の夜に外に出て叫ぶなんて禁止されていることです。でも窓を開け、嵐のなか叫んだ紫苑は直後にネズミと出会い、いままで全然違う世界へと足を踏み入れていきます。
もし若い人のなかで、昔の私と同じように閉塞感を感じている人がいるならば、開けるべき窓は絶対そばにあると伝えたい。その先にあなたを待ち受ける物語が必ずあるはずです。
「生きる価値がある」と教えてくれる2冊
──今の時代に生きる読者へ贈る、あさのさんとっておきの作品を教えてください!
あさの:先ほどあげた海外の物語は、私の新しい扉を開いてくれた作品です。いまの若い人たちが読んだら、新しい扉を開くきっかけになるのではないかと思うお話を選びました。
世界の良識に沿って生きることだけが、生きる価値ではありません。枠にはまらない生き方でも「この世はあなたの生きる価値がある」と示してくれるのが物語の力。そう感じられる2冊を選びました。



































