天下統一を成し遂げた兄と弟
日本の長い歴史のなかで、お互いを支え合い、最も成功した兄と弟の組み合わせが戦国時代にありました。それが、豊臣秀吉と秀長のきょうだいです。
農民から戦国の頂点に上り詰めた兄・秀吉のとほうもない夢を、弟・秀長は冷静な判断力と献身的なフォローで支え続けました。
発想力豊かで夢に向かって突っ走る兄・秀吉と、それを実直に支え、ときには「それ、ちょっと危ないよ」と間違いを正せる弟・秀長。
まさに、この二人の関係は「理想的なきょうだいのあり方」を教えてくれます。
「目立つ才能」と「裏方で頑張る才能」
天才軍師の竹中半兵衛は、この兄弟の性格をよく知ったうえで、秀長に「根になりなされ」と提言しました。
・「秀吉さまはどこまでも、どこまでも伸びていく大木です」
・「秀長さまは、その大木を支える根になりなされ」
上へ上へと高みをめざす兄を、地中深く、しっかりと見えないところで支える根に象徴される秀長。
天下一の夢を抱いて疾走するエネルギーの塊のような兄がしくじらないよう、弟が冷静に見守り、支え続けたのです。
【子育てへのヒント①】
きょうだいは、性格や能力が違って当然です。親としてはつい、目立つ才能(大木)ばかりに目を向けがちですが、裏方で頑張る才能(根)も同じくらい大切。
秀吉・秀長のふたりとは逆で、下の子が大木タイプ・上の子が根のタイプ、という場合でも、それは同様。親がきょうだいの個性を比べず、それぞれの「役割」を認め、褒めてあげることが重要なのです。
兄を献身的にフォローした弟の「賢さ」
秀吉が織田信長に気に入られ、家臣として働き始めたころ、秀長は母の反対を押し切り、「よし、兄を助けよう」と決意します。
壮大な夢を抱く兄を献身的に支えた秀長ですが、彼は単なるお人好しではありませんでした。
着想は優れているものの大雑把な兄を支えるため、習字や算術、帳簿の付け方など、実務能力を独学で身につけたのです。
・兄の戦に必要な金銭管理
・家臣の不満を聞き、争いをなだめる
・大名たちとのコミュニケーションを円滑にする
フットワークの軽い情熱家の兄に対し、倹約、まじめ、用意周到で温厚な弟。
まさに互いの長所と短所を巧みに補い合う関係性であり、秀長の緻密なサポートがあったからこそ、秀吉は天下人となれたと言っても過言ではありません。
【子育てへのヒント②】
きょうだいの喧嘩や衝突は、社会性を学ぶ大切な機会です。「兄のわがままを、弟がどう受け止めるか」「弟の失敗を、兄がどうカバーするか」。親はすぐに仲裁するのではなく、お互いの「落としどころ」を見つけさせることで、秀長のような調整力を育むことができます。




































