寒い季節の地震対策「家族の命を守る家の選び方」と「最優先の備え」を防災アドバイザーが徹底解説

「寒い季節」の地震対策

備え・防災アドバイザー:高荷 智也

大地震の備え、今すぐはじめるには?(写真:アフロ)

台風、地震などの災害が絶えない国・日本。

2022年だけでも震度5以上の地震は13回を記録(10月7日現在(※))。家族と自分の命を守るためにも、大規模な地震への備えをしておくことが重要です。

そこでこの記事では、テレビやラジオでも活躍する、備え・防災アドバイザーの高荷智也さんが、今すぐできる防災活動についてアドバイス。第1回の「台風・大雨の備え」に続き、第2回では、これからの時期、特に気になる「寒い季節の地震対策」を解説します。

(※参考:日本気象協会Webサイト

高荷智也(たかに・ともや)備え・防災アドバイザー。「自分と家族が死なないための防災」と「企業の実践的BCP策定」をテーマに活動。大地震や感染症パンデミックなどの自然災害から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝える活動に従事。著書に『今日から始める本気の食料備蓄』(徳間書店)、監修に『ゾンビから身を守る方法』(花小金井 正幸 ・著/ポプラ社)『緊急事態宣言対応 最善最強の防災ガイドブック』(コスミック出版)など。】

「やるかやらないか」ではなく「いつどのようにするか」

北海道から沖縄まで、いつでもどこにでも最大規模の大地震が生じる日本において、地震対策は「やるかやらないか」ではなく「いつどのようにするか」の対象です。特に冬場の大地震は「寒さ対策」が命にかかわる場合もあるため、事前対策が必須となります。

1.地震対策は「死なない環境作り」が最優先

地震対策で最も重要なことは、水や食料の備蓄でも、防災リュックの準備でもなく、大地震の揺れで「即死しない・させない」ための「死なない環境」を作ることです。備蓄品があっても津波や火災から逃げ遅れてしまえば意味がなく、防災リュックを用意しても倒壊した建物や転倒した家具に潰されてしまえば役立てることはできないためです。

大地震は予知ができず、必ず不意打ちで発生します。事前対策の有無がそのまま生死に直結してしまうのです。「ダンゴムシのポーズ」は生き残る確率を上げるためには重要ですが、ダンゴムシごと建物倒壊や家具転倒に巻きこまれてしまえば意味がありません。子どもの命を守るのは、事前に行う建物と室内の安全対策なのです。

大地震対策の基本をひと言でまとめると、「津波や土砂災害が生じない場所に建っている、地震の揺れで倒壊しない建物で、室内の安全対策を講じる」ということになります。防災リュックの準備や、水・食料の備蓄は、この基本ができてから行うべき対策です。

2.ハザードマップで「津波・土砂災害」を避ける

地震対策においても建物の立地が重要です。前回の記事「台風・大雨の備え」では台風・大雨対策の基本として「ハザードマップ」のご紹介をいたしましたが、これは地震対策でも重要なツールとなります。大地震で生じる可能性のある「津波」「土砂災害」「地震火災」は、地形や周辺の環境により生じる場所がほぼ決まっているため、避けることができるのです。

「台風・大雨の備え」でご紹介した国土交通省の「重ねるハザードマップ」では、津波と土砂災害のリスクを確認することができますので、この2点が生じない場所に自宅を構えれば、大地震直後に毎回避難する必要が薄れますし、自宅を守ることにもつながります。津波の恐ろしさは多くの方がご存じと思いますが、これは、立地に留意すれば「避けることができる災害」です。

また、古い木造住宅が密集する路地の入り組んだエリア、いわゆる「木密地域」では、大規模な延焼火災が発生する可能性があります。これは地震火災と呼ばれる恐ろしい災害ですが、東京都など一部の自治体はハザードマップを作成しています。手を伸ばせば隣の家の壁に触れられるような地域は、可能であれば避けたほうがよい立地なのです。

子どもがいる家庭は、は引っ越しや住宅購入などのライフイベントが多い世代です。

新たに住宅を選ぶ機会は「安全度」を高めるチャンス。その際は必ずハザードマップを確認し、「避難しなくて良い場所」を選んでください。地震の揺れを避けることはできませんが、その他の災害の多くは避けることができます。そして、避難が不要であれば、「冬の寒さ対策」の大部分も解消するのです。

3.地震で潰れない家と室内の安全対策

「大地震」は恐ろしい災害ですが、自然現象として考えると「ただ揺れるだけ」であり、そこに何もなければ被害が生じることはありません。大地震の被害は、建物や家具などによりもたらされるのです。地震の揺れでつぶれない家に住み、家具や家電を固定すれば、家庭における地震対策の半分はもう終わりなのです。

建物の地震対策で最重要な確認は「日付」です。1981年6月1日以降に「建築確認申請」を受けて建てられた建物は「新耐震基準」、これ以前の認可で建てられた建物は「旧耐震基準」と呼ばれ、耐震性に雲泥の差があります。自宅が新耐震であれば室内対策を、旧耐震の場合は引っ越しまたは耐震リフォームの検討が必要です。

[室内対策はまず家具・家電の固定が基本]冷蔵庫の固定:壁にネジ止めしたプレートと冷蔵庫をベルトで固定した状態、直撃すると命にかかわるもの・避難経路をふさぐものはできるだけ固定を

室内対策はまず家具・家電の固定が基本です。可能であれば「金具とネジ」を使った固定が最も安価で頑丈ですが、難しい場合は「粘着マット」「突っ張り棒」などを併用した固定を行います。

また開き扉にストッパーをつけたり、ラックにベルトを通すなどして「中身」の落下防止をしたりすることも重要です。住宅用消火器も1本は置いておきましょう。

4.避難グッズへ防寒対策用品を追加する

避難場所・避難所などへの「立ち退き避難」が必要になる場合は、素早く安全に移動するための防災リュックが必要です。具体的な中身・作成のポイントについては、前回「台風・大雨の備え」をご覧頂きたいのですが、冬の寒さ対策を考える場合はいくつかのグッズを追加する必要があります。

寒さ対策の方向性は「防寒」または「発熱」する道具の準備です。防寒グッズとしては、「追加の上着」「防寒具」「寝袋・エアマット」「アルミブランケット」などを追加し、外部の風を遮断しつつ、体温を逃がさないようにするための道具を用意します。何もなければビニール袋をかぶり中に新聞を詰めるなどの方法もありますが、あくまでも裏技です。

食品温めグッズ各種:火も電気も使わず食品を加熱可能、アウトドアでも活躍します

防災リュックに入れられる発熱グッズとしては、各種のカイロを活用するのが便利です。使い捨てカイロ、充電式カイロ、ハクキンカイロ(※)などが該当します。また、電気や火を使わずに食品などを加熱するグッズもありますが、避難所で「わが家だけ」「熱々ご飯」を食べるのは気が引けるもの、在宅用のグッズにしたほうがよいでしょう。

(※編集部注:ハクキンカイロとは、ベンジン(液体燃料)で発熱するオイル式カイロ。使い捨てとの違い、繰り返し使える。とても温かい)

■大地震直後は火気厳禁
アウトドア用品に、リュックサックに入るサイズの小さなコンロ(シングルバーナー)がありますが、大地震直後は火災対策としてできるだけ「裸火」を使わないことが重要になります。特に避難所などは火気厳禁ですので、火気を使いたい場合は車中泊時の屋外や自宅など、燃えるものがない場所で消火器を備えてから利用しましょう。

5.在宅避難用品に暖房器具を追加する

大地震から自宅の建物を守ることができ、室内が安全な状態であり、津波や土砂災害などからの避難も不要であれば、避難場所・避難所への移動は不要です。乳幼児や子ども、妊娠している方がいる場合、避難所生活は大変な困難を伴います。できるだけ「在宅避難」できるような環境を整えましょう。

在宅避難用品も「前回のコラム」でご紹介をしましたが、冬の寒さ対策を考える場合はこれに道具を追加します。自宅が無事であれば建物そのものが「防寒」グッズになりますし、また自宅にある衣類や布団などは全てそのまま使うことができます。電気やガスが停止している場合に対する、予備の暖房器具を用意するのがよいでしょう。

冬場に日中の気温が氷点下になるような地域の場合は、命を守るための暖房器具が必要です。

各種カセットガスストーブ・冬場の暖房対策に大変便利です

電気を使わない石油ストーブが火力の面で優れますが、日頃灯油を使わない場合は燃料備蓄が難しいため、カセットガスストーブなどが便利です。この際に用意する予備のガスボンベは、ハイパワータイプなどの寒冷地ガスを選択してください。

■カセットガスを活用する
自宅でインフラ回復を待つ在宅避難時には、カセットガス器具が大活躍します。特に寒さ対策としては優秀ですので、カセットガスコンロやカセットガスストーブなどをぜひ準備してください。カセットガスの消費期限は7年、各種の器具は10年で交換が目安です、定期的に消費して入れ替えられるようにしましょう。

(記事中の写真・図版/著者提供)

たかに ともや

高荷 智也

Tomoya Takani
備え・防災アドバイザー

備え・防災アドバイザー。「自分と家族が死なないための防災」と「企業の実践的BCP策定」をテーマに活動。大地震や感染症パンデミックなどの...