世界的な絵本の登竜門・アストラ国際絵本原作コンテスト「講談社賞」受賞者インタビュー

受賞者・フランス人作家兼図書館司書のジェニー・ギヨームさんの制作秘話

第2回アストラ国際絵本原作コンテスト「講談社賞」受賞者 ジェニー・ギヨームさん(写真はすべてジェニー・ギヨームさん提供)

アストラ国際絵本原作コンテスト「講談社賞」受賞

アストラ国際絵本原作コンテスト(readinglife.com)は、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの出版社が主催者となり、優れた絵本の原作者を発掘し、絵本として世界中に発信する取り組みです。違う言語、違う文化を持ったクリエイターと編集者が出会う場を作り、多様性に富んだ、質の高い絵本を刊行して、世界中の子どもたちに届けることを目的として開設されました。応募作品の言語は、英語・スペイン語・ドイツ語・フランス語・日本語・中国語のいずれかで、どの言語でも応募できます。

第2回にあたる今回は、2022年11月にスタート、83ヵ国から2248作品の応募がありました。6言語の審査員たちによる審査の結果、8ヵ国11名の受賞者が選ばれ、2023年11月15日入賞者が発表されました。その栄えある「講談社賞」を受賞したのが、フランス人作家・図書館司書のジェニー・ギヨームさんです。

受賞作は、日本語で絵本化され、講談社より刊行される予定です。
【ジェニー・ギヨームさんプロフィール】
フランスの作家兼大学図書館司書。現実と空想の世界がミックスされた物語が好きで、絵本やグラフィックノベルの制作を手がける。2022年、自ら絵をつけた初めての絵本『シマウマと囚人』を刊行。現在も新しい作品を制作中。

アストラ国際絵本原作コンテストへの応募のきっかけ

──ジェニーさん、ご受賞おめでとうございます。ジェニーさんは、すでにフランスで作家として活躍されていますが、なぜアストラ国際絵本原作コンテストに応募しようと思ったのですか?

ジェニー・ギヨームさん(以下ジェニーさん):世界中の子どもたちに向けて作品を発表できることに魅力を感じたからです。海外に行くと、いつもその国の絵本をチェックします。絵本は人間の最も根本的な気持ちを描いているので、世界中の人の気持ちを結びつけることができると思うんです。
ジェニーさんが勤める大学図書館 ©SCD uFC
──ジェニーさんは大学図書館司書としても働いていると聞きました。制作とお仕事、毎日どのように過ごしているのですか?

ジェニーさん:私は21歳で図書館司書になりました。文学や歴史だけでなく、生物学やITなど、あらゆる知識分野に興味があったので、ずっと大学で仕事をしてきたんですよ! 今は例えば、電子図書館のプロジェクトに携わり、10館のITシステムを管理しています。

大好きな仕事と並行して、私はいつも文章を書いたり絵を描いたりしてきました。子どものころから、文章や絵を描くことが大好きで、自分にとって必要なことだったんです。今は自由な時間のすべてを物語を創作することに費やしています。
ジェニーさんの制作現場

受賞作はこうして生まれた

【受賞作:頭にのったタコ(仮タイトル・原題Un poulpe sur la tête)】
ひとりの男の子が海水浴へ行って海にもぐったら、出てきたときには頭にタコがのっていた! タコは頭の上でどんどん大きくなり、男の子はタコを頭にのせて学校へ。先生に怒られたり、友だちに避けられたり、困ったことばかり……。でも、授業中タコのおかげで正解を答えられたり、いやなことをする友だちにスミをはいてくれたりして、男の子はだんだんタコに気持ちを寄せるようになっていく。タコはお風呂と本の読み聞かせが好きなんだ。そして、次の夏、主人公は海で……。
──受賞作「頭にのったタコ」(仮タイトル・原題Un poulpe sur la tête)は、とてもユーモアに富んでいて、かついろいろなことを考えさせてくれるお話でした。自分と違うものへの理解、言葉のいらない友情など……。このお話はどうやって考えついたのですか?

ジェニーさん:このお話のアイデアは、13歳の息子と一緒に『My Octopus Teacher』(邦題:『『オクトパスの神秘:海の賢者は語る』)(ピッパ・エルリッヒ、ジェームズ・リード/監督 クレイグ・フォスター/出演、2020年)というドキュメンタリーを見ていて思いついたんです。ダイバーとタコの友情の物語で、私はタコの知性と表現力に感銘を受けました。最後に、タコは卵が孵化すると死んでしまうんですが、私は息子と一緒に泣いてしまいました。そのあと、私はこのタコの赤ちゃんが子どもの頭の上にのる物語を考えついたんです。
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