「絵本作りの魅力」を解剖! 100%ORANGE・及川賢治&ベテラン編集者土井章史【特別対談】

『さがるまーた』別冊付録「おはよう」の作者・及川賢治さんと絵本編集者のトムズボックス・土井章史さんが絵本の作り方を伝授!

げんき編集部

2023年11月30日に発売となった、オムニバス絵本雑誌「さがるまーた」。第一線の活躍を続ける作家やアーティストによる描きおろし絵本や記事、とじこみ付録などがつまった一冊となっています。

2023年12月3日には、別冊付録「おはよう」の作者・及川賢治さん(100%ORANGEとして活動)と絵本編集者のトムズボックス・土井章史さんがオンラインイベントを開催。絵本製作で大事にしていることや絵本作家の日常など、及川さん流「絵本の作り方」を具体的に教えてくれました。

特別に、濃密なトークの内容や、絵本づくりの秘密を公開します。

絵本を作るって面白い!

及川:僕はもともとイラストをかいていたんですが、イラストを見てくれていた人が絵本の仕事を頼んでくれたっていうのが、絵本づくりの始まり。「この人絵本かけるかな」って思ってもらえたのはうれしかった。

土井:最初に頼んだのは私じゃないんですけど、共感できる。及川さんの絵には、ずかわいいっていうのがある。そして、そこからなんとなく染み出るユーモアがあって、「あら、絵本いけるかな」って

及川:それまでもマンガをちょっとかいたりとか、少しストーリー性のあるイラストをかくことはありました。何かお話を感じるようなものが好きだったので、絵本づくりも、実際自分でやってみたらすごく面白くて。
及川賢治さんのかいた絵本『おはよう』のラフ。

絵本作りにもつながる「朝のルーティン」

及川:仕事のほかに、続けていることといえば、毎朝散歩をしています。ラジオ体操している人がいる時間だから、割と早い時間帯かも。

──今回の「おはよう」も最初のアイディアはお散歩から帰ってこられて思いつかれた?

及川:ついさっきまで寝てたから、寝ている物語になったのかな(笑)。散歩してたらスルスルと浮かんできたので、帰ってすぐ、パチパチとパソコンでテキストを打って送ったんです。

土井:ほうー、すごいね! 絵本って頭のものじゃなくて、体のもんのような気がするから、やっぱり体を動かしているっていう状態のほうがいいのかもしれないね。

及川:いいですね。景色が動いてたりとか、鳥がいたりとか。そういうのが刺激になります。

意識していること、ポリシーはある?

及川:「こういうのはいやだ」って決めてはいないけど、たとえばラフかいているときに、何度かいても「違う違う」って思うものって、それはたぶんやりたくないことなんだと思うんですよね。気難しい映画監督になったみたいな感じ? 何か演技が違う、光が違う、構図が違う……とか。自分の中で自分がめちゃくちゃいやな奴に感じられるときがあります(笑)。

──今土井さんは新人の方ともお仕事されてますが、絵本作りのときに、意識してほしいなと思うことはありますか?

土井:子どもっていうのはどっちかっていうと全方向に向いていて、なんでも受け入れる。だからなんでもやっていいんだけど、その絵本の雰囲気によっては、やらないほうがいいようなことがある。それは編集者の中で勘としてあります。ただ、商業出版の場合、編集者がかえっていらないことを言う可能性もあるよね。
「編集者としての勘で、『おはよう』はすごい絵本になる予感があった」と土井さん。

大人むけ、子どもむけの線引きはある?

土井:それは編集者が考えなくちゃいけないところ。子どもにしても年中年少、赤ちゃんって全然違うから、考えちゃいますね。

及川:僕もマンガをかくときはちょっと大人向けにしたいから、考えるときもあります。ただね、ちょっとだけやり方を変えて大人っぽく見せてるだけかもしれない。やっていることは全部同じで、見せ方が違うだけ。漢字を使わないとか(笑)。

土井:大人ってある程度経験値がある。例えば僕らがテレビで見るお笑いって、大人は共通の経験値があるからわっと喜ぶんだけど、子どもはほとんど経験値がないというか、4〜5歳だと3歳ぐらいからの記憶しかなくて、経験値1〜2年で生きている。

及川:お笑いっぽい面白さを絵本に入れると、ちょっと居心地が悪くなるときがありますね。それは大人のルールでできた面白さだから。子どもには確定してない面白さを見せたい

土井:及川さんの場合は、それを「ギャグ」と「ユーモア」という言葉でわけてるのかな?

及川:面白すぎるとそれに食い尽くされちゃって、お話とかもスッキリしちゃって、「ああ面白かった」ってなっちゃう。僕はその感じがちょっと居心地悪いんです。究極の面白さだから、ギャグって。もう終点じゃんって。好きなんだけど、絵本に入れると居心地が悪いと感じます。

土井:昔、及川さんは「ユーモアは品がある」って言ってたよね。

及川:僕の作品に品があるかはわからないですけど、品があるのはいいなって思いますね。
及川さんのラフからも、にじみあふれるユーモアが。

表現方法や画材が違っても、一貫した軸を。

「中学生のときから及川さんのファンです。及川さんの絵は、表現方法や画材が違っても、一貫した軸のようなものを感じます。作者名を見なくてもわかります。制作の際に意識していることはありますか?」
及川:ありがとうございます。軸は本当に大事だなと思っていて。僕、あれやこれややりたいんですよ。絵はいろんなのがかきたくて、カラフルなものも、モノクロもかきたいし、デザインっぽいものもやりたいし、濃密なものもかいてみたい。

でもいろいろやるとめちゃくちゃになっちゃうかっていうと、軸さえブレなければ、めちゃくちゃにはならない。「この人何やりたいの?」って思われるのはいやなんだけど、軸というか、テーマは同じ。

土井:軸ってなんなんでしょう?

及川:人を見るとわかるじゃないですか。この映画監督、いつも同じような映画撮ってるなって。それってブレてないんだなって。マンネリって言ったら悪いけども、逆に言うと「一貫してるんだな、この人」って思うじゃないですか。

土井:絵本作家を目指す人のなかには「私はこういう絵なんです」って枠を固めすぎてしまっている人もいるような気がするんだよね。でもそれだと、その枠から外れられない。どんどん外れていい。絵本だったら、お話に合わせて絵をかいてくれっていう言い方をするときあるけど、それでもその人の絵になる。それが軸かなと思う。

及川:別の作家さんからテキストをいただいて絵をつける仕事もしているんですが、もらった瞬間に、すでに「こういう絵をかきたいな」っていうのがあったりします。

土井どの絵を見ても、及川賢治の絵だよね。

及川:楽しくやってますよ(笑)。

及川賢治さんの絵本「おはよう」が付録についている雑誌「さがるまーた」

「絵本を“体感”する雑誌さがるまーた 2023 VOL.1 とにかく絵本が好きなんだ!」 (げんきMOOK)定価:3300円(税込み) 
おいかわ けんじ

及川 賢治

Kenji Oikawa
作家

1996年ころから100%ORANGEとして活動を開始。イラスト、絵本、漫画など幅広く活躍中。『よしおくんがぎゅうにゅうをこぼしてしまったおはなし』(岩崎書店)で第13回日本絵本賞大賞受賞。絵本の作品に『スプーンさん』『コップちゃん』(文・中川ひろたか、ブロンズ新社)、『ぶぅさんのブー』(福音館書店)、『グリンピースのいえ』(教育画劇)、『ねこのセーター』、『まる さんかく ぞう』(文溪堂)などがある。

1996年ころから100%ORANGEとして活動を開始。イラスト、絵本、漫画など幅広く活躍中。『よしおくんがぎゅうにゅうをこぼしてしまったおはなし』(岩崎書店)で第13回日本絵本賞大賞受賞。絵本の作品に『スプーンさん』『コップちゃん』(文・中川ひろたか、ブロンズ新社)、『ぶぅさんのブー』(福音館書店)、『グリンピースのいえ』(教育画劇)、『ねこのセーター』、『まる さんかく ぞう』(文溪堂)などがある。

どい あきふみ

土井 章史

Akifumi Doi
フリー絵本編集者

1957年広島県生まれ。トムズボックスを経営。絵本や絵本関連書籍をあつかう。 担当した絵本に「イメージの森」シリーズ(ほるぷ出版)、『ねこのセーター』(及川賢治、竹内繭子)など、現在までに300冊を超える絵本の企画編集に携わってきた。また、絵本作家の育成を目的としたワークショップ「あとさき塾」を小野明さんとともに主宰。

1957年広島県生まれ。トムズボックスを経営。絵本や絵本関連書籍をあつかう。 担当した絵本に「イメージの森」シリーズ(ほるぷ出版)、『ねこのセーター』(及川賢治、竹内繭子)など、現在までに300冊を超える絵本の企画編集に携わってきた。また、絵本作家の育成を目的としたワークショップ「あとさき塾」を小野明さんとともに主宰。