2月の頭から始めた本描きも終わり、3月上旬に無事提出しました。
原寸ラフ制作の時点で、かなり作品の世界に入り込んでいたので、本描きの最初の方は、ひたすら無の状態で作業といった感じで、ほぼ絵描きマシンと化していました。
普段、私は新しく作品を作る時に、過去の作品をあまり見ないようにしているのですが、今回も始めは応募時の作品を見ずに描いていました(そもそも預けたままだったのですが……)。
途中でやっぱり確認のために見ておこうと思い、原画を送って頂きました。久しぶりに見てみると、思っていた以上に雑でびっくりしましたが、それでも伸び伸びと描いているのが分かります。
色鉛筆と鉛筆だけを使った初めての作品ということもあって、表現方法が手探り状態なうえにまだまだ未熟で、筆圧も強く力まかせにグイグイと描いている感じです。
新しく描き直した原画では、そこのところをもっと意識して、より世界観に合うように、全体的に荒かった描き方を、もう少し柔らかくて細やかな描き方にしました。
かといって慎重になりすぎると動きが無くなってしまうので、そこは気を付けながら、更に今作の一番大事な要素である浮遊感を出すことに力を注ぎました。
本描きをしていて強く思ったのは、時間をかけてラフを練ることがいかに大切か、ということです。
独りで描いていた頃は、ラフの詰めが甘くて本描きの途中で行き詰まり、考えなくてはいけないことが山積みになって、余計な心配事に時間を費やすはめになるという状態になりがちでした。それに比べてしっかり作り込まれたラフがあると、やるべきことに集中出来て、作品をもっと良くしようという気持ちが隅々まで行き渡り、それに向かって十分に時間を使うことが出来ます。
その中で、かなり長い期間作品と向き合っているので、「このままで大丈夫だろうか、応募時の方がいいと言われたりしないだろうか」と考えてしまうことも少しはありました。それでも気持ちがそちらに引っ張られずに落ち着いて描き続けられたのは、自分にとって本当に大きな前進です。
一作一作、作っていくごとに気持ちの変化があり、良い時も苦しい時もそれぞれ沢山の発見があって、その瞬間の色々な思いが目まぐるしく駆け抜けていきますが、それでもいつも変わらないのは「絵本を作りたい」という切実な思い。新しく加わった経験と共に、いつまでも持っていたい大切な思いです。(……となんだか全て終わったみたいな書き方ですが、まだまだ制作は続きます。)
次回にその様子をお伝え出来ればと思います。それではまた。
近藤 未奈
多摩美術大学美術学部絵画学科版画専攻卒業後、おもに個展での作品発表を中心に活動。 2018年、第40回講談社絵本新人賞を受賞し、はじめての絵本となる『まよなかのせおよぎ』を刊行。東京都在住。
多摩美術大学美術学部絵画学科版画専攻卒業後、おもに個展での作品発表を中心に活動。 2018年、第40回講談社絵本新人賞を受賞し、はじめての絵本となる『まよなかのせおよぎ』を刊行。東京都在住。