第41回講談社絵本新人賞受賞  渡辺陽子の制作日記 第2回「ラフの練り直し その1」

渡辺 陽子

※この記事は、講談社絵本通信(2020年5月)掲載の記事を再構成したものです。
こんにちは、渡辺陽子です。

まずは、新型コロナウイルスの影響により、今年の絵本新人賞募集が中止になってしまい、私も大変ショックを受けております。応募予定の方は、どんなに一生懸命に取り組まれていたことでしょう。本当に残念です。この非常事態を乗り越えて、来年は無事、執り行われる事を心から願っております。

今回の制作日記は、ラフの練り直しについて書かせていただきます。こちらが、「にんじゃいぬタロー」の主人公、「けんた」と「タロー」です。どうぞ宜しくお願いいたします。
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9月12日の授賞式前に、1時間ほど初打合せがありました。編集担当Kさんから沢山のご意見を聞く中で、私にとって、衝撃の一言がありました。

「これ、忍者っぽくないですよね。。。」

「え~~~~~~~~~~!?」もう頭の中は「え~~!?」でいっぱいでした。だって、絵本のタイトルは「にんじゃいぬタロー」です。それが忍者っぽくないって、、、!?

「どうしましょう!?」


翌日から、忍者の勉強をし直すべく、「忍者」、「にん者」、「にんじゃ」、「ニンジャ」 と付く本をかたっぱしから読み漁り、テレビや動画など見まくる日々が始まりました。

が、しかし、9月末になっても、ラフが描けないでいました。担当Kさんと、選考委員の先生方からのアドバイスを踏まえて、全体的にストーリーを練り直そうと思っていたのですが、、、まとまらないのです。

すると、頻繁にメールをくださっていた担当Kさんが「迷ったら受賞作品に戻ってくださいね」と、助言をくださり、原点「この絵本で描きたかった事」に戻り、中盤で忍者っぽさを追加する方向でやっとラフを描き始めることができました。

10月末 講談社にて2回目の打合せ。私から前日に、修正したラフをメールしており、それに担当Kさんがアドバイスなどを書き込んでくださっていました。
付箋のコメントが赤ペン先生みたいで、分かり安くて助かりました。
ほとんどのページに付箋があり、さらなる練り直しが必要です。担当Kさんのご意見は、どれも面白くて、シーンとしたフロワーに私の笑い声が響いてしまうほど、楽しい気分で打合せを終え家に帰り、さあ、ラフを描こう! と思うと、、、描けない。ここを直すと、あっちがおかしくなる。そこを直すと、こっちがまとまらない、という具合です。11月中旬に、私から担当Kさんに宛てたメールには、「難航しております。」と書かれていました。

こうなったら、とことんラフを描くぞ!と、思いつくままに手を動かしていると、ラフのタローがしゃべったような気がして、その上、その言葉に感動して目頭が熱くなったり、まるで絵本の中に入ったような不思議な感覚になりながら、だんだんと、ラフが固まってきました。
12月初旬 講談社で3回目の打合せ。修正したラフを見終えたKさんから「これで、編集長に見せてみましょうか?」との言葉をいただきました! 喜ぶ私に、「最終チェックは厳しいですよ。」とKさん。さて、無事OKが出ますでしょうか!? それは、また、次回書かせていただきますね。

ところで、「にんじゃいぬタロー」の刊行が今年の9月頃と聞いたのは、去年の9月下旬でした。私が「1年後か~長いな~」と思っていたら、Kさんは天を仰いで「待ち遠しいですね~。」とつぶやいたのです。私は、ハッとしました。私もそんな気持ちで待ちたいな~と、しみじみ思い。それからは真似をしています。「待ちどおしい~。」と、つぶやくと、なんだかワクワクと楽しい気持ちになるのでした。

さて、5月末の現在はというと、本文の彩色を終え、校閲へと進んでいます。
この大変な状況の中、絵本づくりを進めてくださっている、担当Kさんをはじめ、関わるみなさまには、本当に感謝しております。ありがとうございます。

では、次回は、「ラフの練り直し。その2」を、書かせていただきたいと思っています。その頃には、事態が今より良い方向に向かっている事を願いつつ、、、みなさまも、くれぐれもおご自愛ください。

こちらができあがった絵本です。まだまだ先は長そう!?

ある日、ケンタのうちに、ふろしきをせおったあやしい犬がやってきた。その犬は、一生おつかえする、とのさまをさがしているというが……。第41回講談社絵本新人賞受賞作!
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わたなべ ようこ

渡辺 陽子

絵本作家

第41回講談社絵本新人賞を受賞。はじめての作品となる『にんじゃいぬタロー』を刊行。神奈川県在住。

第41回講談社絵本新人賞を受賞。はじめての作品となる『にんじゃいぬタロー』を刊行。神奈川県在住。