3年連続佳作の講談社絵本新人賞 シゲタサヤカさん異例デビューの裏側

「白目」がこだわり! シゲタサヤカさんロングインタビュー・前編

講談社絵本新人賞をきっかけにデビューしてから、今年で15年となるシゲタサヤカさん。新刊絵本『いえいえ、そんなことは ありませんよ』の発売を記念して、ロングインタビューをおこないました。

3年連続佳作受賞からの異例のデビュー。裏ではどんなことが起きていたのでしょう。

当時を振り返っていただきつつ、コックさん愛やお料理愛を、たくさん語っていただきました。

コンペに出しては落ちる日々

──まず、講談社絵本新人賞(以下、絵本新人賞とも表記)に応募したきっかけを教えてください。

シゲタサヤカさん(以下、シゲタさん):私はとにかく絵本作家になりたくて、絵本のスクールに通っていて、卒業後も絶対絵本作家になるんだという思いで、いろいろなコンペに応募していたんです。スクールの卒業からデビューまで5年くらい、コンペに出しては落ちという日々が続いていました。

──絵本作家には、いつからなりたいと思っていたのでしょうか。

シゲタさん:短大の家政科を出たのですが、卒業後はなんのあてもなく、印刷会社に就職したんです。そこではDTPオペレーター(印刷物をパソコン上で加工・修正などする仕事)をやっていて、そのかたわらで、印刷物にイラストカットを入れる仕事もやっていました。

元々絵を描くのが好きだったので、そのイラストカットを自分で描いていたら楽しくなって……。それで仕事としてもっと絵を描けたらいいなと思ったのが最初です。絵のスクールに通うために会社員を辞め、学び直した感じでした。

──絵のスクールに入ったのはいつごろですか?

シゲタさん:21歳ぐらいで会社を辞め、そこから1年間だけ入りました。22歳か23歳で学校を終えて、そのあとはずっとアルバイトをしながら、とにかくコンペに応募していました。

講談社絵本新人賞では異例の、佳作・佳作・佳作からデビュー!?

シゲタさんの絵本新人賞への応募作。左から『みせでいちばんおいしくりょうりをにこむことのできるなべ』『まないたに りょうりを あげないこと』『コックになりたいのです』。すべて佳作を受賞!
写真提供/シゲタサヤカ
──シゲタさんは絵本新人賞で3年連続で佳作を受賞し、3回目の佳作作品『まないたに りょうりを あげないこと』でデビューに至りました。1回目、2回目の佳作作品はどんなお話だったのでしょうか。

シゲタさん:はじめての佳作をいただいたのが、『コックになりたいのです』という、やっぱりコックさんのお話でした。これが絵本新人賞への初めての応募作だったのですが、「コックさんシリーズ」に出てくる料理長がいて、舞台が厨房(ちゅうぼう)で、もうずっとこの「コックさんシリーズ」を描いているんです。

2回目に佳作をいただいたのが、2回目に応募した『みせでいちばんおいしくりょうりをにこむことのできるなべ』で、同じくコックさんのお話です。そして3回目の応募で3回目の佳作が『まないたに りょうりを あげないこと』です。

コックさんが好きという気持ちを、絵本新人賞の応募作にぶつけた感じです。
──佳作・佳作・佳作からのデビューというのは、講談社絵本新人賞の中ではかなり異例というか、ちょっとめずらしいことだと思います。どんな流れがあったのでしょうか。

シゲタさん:そうなんです。新人賞は大賞である「新人賞」受賞者のみがデビューできて、佳作ではデビューできないと応募要項にもありました。私は1度目に佳作で、次は新人賞をめざしたのですが2度目も佳作で、次こそは絶対っていう思いで応募した3度目も佳作。

偉大なる先輩作家さんのかがくいひろしさんは、講談社絵本新人賞で2度佳作をとったあとに3度目で新人賞を受賞し、華々しくデビューしたと聞いて、自分もそこをめざしたかったのですが……。うまくいかずすごく落ちこみ、また来年も応募しなきゃと思っていたときに、当時の担当編集者さんから「佳作も3度目ですし、デビューをめざしませんか」と声をかけていただいたんです。

自分の中ではあの、チョコボールの金のエンゼルと銀のエンゼルってあるじゃないですか。金のエンゼルは1枚でおもちゃがもらえるけど、銀は5枚ためるともらえるっていう感覚で、佳作も3つ集まったらデビューできるんだ!ってうれしい気持ちになったのを思い出しました。

──えーっと、今横で聞いていた編集部の者が、「そんなルールはありません」と(笑)。

シゲタさん:(笑)。すみません、噓です(笑)。とにかく担当編集者さんに拾ってもらえたんだって、すごくうれしかったです。

──でも実際、佳作を3回もとられる方って、なかなか聞かない気がします。シゲタさんにはやっぱり、安定した実力があって、それを編集部からも認められていたんですね。

シゲタさん:すごくありがたいです。ちょうど年齢的にも30歳という節目の年にデビューすることができて、それもうれしかったです。

どうしても料理を描きたくて…!?

──3度目の佳作『まないたに りょうりを あげないこと』を絵本として出版するまで、きっといろいろな苦労があったと思います。特に大変だったことはなんでしょうか。

シゲタさん:佳作からのデビューということもあり、そもそもがまだ作品が出版に至るレベルではないということを、初めに担当編集者の方からお話しいただき、そこから半年以上、出版できるレベルまで持ち上げていくのが大変でした。

脇役のキャラクター性を決めたり、文章も大幅に直して削って、絵も構図も変えたりっていうのが大変で……。私はお料理を描くのがとにかく好きで、受賞作の時点でお料理をいっぱい、それこそページの大半をお料理で占めているシーンなんていうのをつくっていたんですが、担当編集者さんに「いや、お料理は添え物だからおかしいですよ。お料理じゃなくて、まないたをメインにしましょう」とアドバイスをいただいたんです。
講談社絵本新人賞へ応募したときの『まないたに りょうりを あげないこと』の原画。お料理がメインをはっています。
写真提供/シゲタサヤカ
シゲタさん:でも私はどうしてもお料理が描きたかったので、なかなかお料理をはずすのができなかったんです。結局最終的にはそのアドバイスどおり「お料理を食べるまないた」をドンと描き、それでも「お料理もっと描きたかったな」っていうのが私からにじんでいたんでしょうね。担当編集者さんが、見返し(表紙や裏表紙の裏側にあたる部分)にお料理いっぱい描いていいからっていうふうに言ってくださったんです! それでもう思う存分見返しにお料理を描いたのが、なつかしいです。

それでいうと今回出させていただいた『いえいえ、そんなことは ありませんよ』はお料理がセンターをはっているので、念願がかなった気持ちです。

──そのときの無念が、新刊で晴らされているのですね! そしてそんなデビュー作が、15年経った今もシリーズとして続いています。当時、こんなに続くと想像できましたか?

シゲタさん:全然思ってもいなかったですし、講談社さんから、「2冊目もまたコックさんで出しましょう」って言っていただいたのが、「まだこのシリーズで出していいんだ」ってうれしかったです。最初の応募からあのレストランが私の中にずっとあったので、これからシリーズで出してもらえるならバンバン出したいと、2冊目が決まったときはすごく思いました。

──「コックさん」のシリーズ化の提案は、講談社側からだったんですね。

シゲタさん:そうですね。2作目は2度目の佳作受賞作の『みせでいちばんおいしくりょうりをにこむことのできるなべ』の話を改変して『りょうりを してはいけない なべ』になりました。「口からお料理を出してしまうなべ」という設定は近いのですが、お話の展開などは受賞時から変えています。
『りょうりを してはいけない なべ』(2010年刊/講談社)
作:シゲタサヤカ

こだわりの「白目」を貫き通す

──次に「白目」の話を聞かせてください。シゲタさんのデビュー時の担当編集者が当時、「キャラクターの目を白目にするのはやめたほうがいい」と言っていたとうかがいました。でも、現在に至るまでシゲタさんは「白目」を貫いていますね。

シゲタさん:はい……! 本当にあの、担当編集者さんはまずていねいに、白目のデメリットについて私にお話をしてくださいました。白目は見た目のイメージとして、少し恐怖感を覚える読者の方もいらっしゃるので、必ずしも万人受けはしないっていうのがひとつ。それから例えばコックさんがどこかを見ているシーンも、白目だと視線の先がちょっとわかりにくいというのもひとつ。

でも黒目を入れるのを何度か試したところ、黒目を入れた絵は、私には自分の絵に見えなかったのです。それでやっぱり白目でいきたいですって伝えさせてもらいました。最後には「本当にいいんですね」とけっこう覚悟を問われる感じだったのを覚えています……。それでも、本当にこれでいきたいですと貫きました。

──結果、絵本が出てから担当編集者も「これでよかった」と大変に納得したようですね。素晴らしいです。

シゲタさん:さっきお話をした「お料理をメインからはずしましょう」と言われたときも、私はそのあと2回くらいまたお料理の入ったラフを持っていったりして……(笑)。編集者さんには、「シゲタさんはいかにもわかりましたみたいに言うけど、なんか頑固ですよね」と言われてしまいました。

──でも貫くところは貫くという姿勢のおかげで、一目見てシゲタさんの絵だとわかる個性が生まれたと思います! それでは、絵本新人賞に作品を応募される方に、アドバイスやメッセージはありますか?

シゲタさん:私が新人賞をとれていないのであんまり言えないんですけど、とにかく好きなものを描いて応募するのが一番の近道だなって思うので、やっぱり自分が好きなジャンルや、描きたいもので挑戦するのがおすすめですっていうのをすごく強く言いたいです。

それからデビュー後は、編集者さんなどのアドバイスどおりでまちがいなかった部分も山ほどあるんですが、「ここだけは」っていう部分は、遠慮せず伝えてみることでしょうか。

──変えるところは変えて、ですね。

シゲタさん:そうですね。私のデビュー作はメインをしっかり「まないた」にしたことで、今もありがたいことに版を重ねているんだと思います。プロの方のアドバイスは大切ですね。

ポップをつくって、自分で売り込み!

デビュー当時につくったという、シゲタさんのオリジナルポップ。
写真提供/シゲタサヤカ
──シゲタさんはデビュー当時、書店さんに飾るポップをご自身でつくられていたとおうかがいしましたが、本当でしょうか。

シゲタさん:すごくもう本当に絵本が出るのがうれしすぎて、なんとしてでも作品を知っていただきたいっていう思いで、勝手に宣伝文句を厚紙にプリントしていました。それを持って「よろしくお願いします!」みたいに、回れる範囲の書店さんには自分で営業に回っていましたね。

──ご自分で持っていったんですか!?

シゲタさん:そうなんです。でも営業の仕方がわからないので、アポも取らずに突然行って、書店さんを困らせてしまうこともありました……。そんな中で「今から絵本の発注をかけて、ポップも飾るね」と対応してくださった書店さんもあり、開口一番絵本を「おもしろかった!」と言ってくださる店員さんもいて、ありがとうございますの気持ちでいっぱいです。

──今はもう、そういった活動はされていないですよね。

シゲタさん:はい。こんなにはりきっておいて、営業とかは元々すごく苦手で、やらずに済むのならっていう気持ちはずっとありました。今は講談社さんがポップを作成してくださり、講談社さんの営業さんが書店さんに届けてくださるので、本当にありがたいです。

苦手な部分はプロにおまかせできて、自分は家に引きこもって絵本を描けるのがすごく幸せです。

──インタビューは後半へつづきます。シゲタさんの絵本をつくるときに大切にしていることなど、さらに深いお話を聞かせていただこうと思います!
(取材・文/伊澤瀬菜)

レストランにスーパーコックがあらわれた!?

町で一番人気のレストランは、今日も今日とて大いそがし。ある日ひとりのコックさんが、お手伝いに自分の弟を連れてきて……?

デビュー作『まないたに りょうりを あげないこと』の前日譚にあたる、「コックさんシリーズ」待望の新刊です!
『いえいえ、そんなことは ありませんよ』(2024年刊/講談社)
作:シゲタサヤカ

シゲタサヤカ

絵本作家。

1979年生まれ。「パレットクラブスクール」で絵本制作を学ぶ。第28回から講談社絵本新人賞で佳作を3年連続受賞。2009年、第30回佳作受賞作『まないたに りょうりを あげないこと』でデビュー。食べものが登場するユーモア絵本で大人気に! 

主な絵本の作品に『りょうりを してはいけない なべ』『コックの ぼうしは しっている』『カッパも やっぱり キュウリでしょ?』(講談社)、『キャベツが たべたいのです』(教育画劇)、『たべものやさん  しりとりたいかい  かいさいします』(白泉社)、『オニじゃないよ  おにぎりだよ』『カレーは あとの おたのしみ』(えほんの杜)、『クリコ』『ラッキーカレー』(小学館)などがある。
しげたさやか

シゲタ サヤカ

絵本作家

1979年生まれ。「パレットクラブスクール」で絵本制作を学ぶ。第28回から講談社絵本新人賞で佳作を3年連続受賞。2009年、第30回佳作受賞作『まないたに りょうりを あげないこと』(講談社)でデビュー。 食べものが登場するユーモア絵本で大人気に!  主な絵本の作品に『りょうりを してはいけない なべ』『コックの ぼうしは しっている』『カッパも やっぱり キュウリでしょ?』(以上、講談社)『キャベツが たべたいのです』(教育画劇)『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』(白泉社)『オニじゃないよ おにぎりだよ』『カレーは あとの おたのしみ』(共に、えほんの杜)『クリコ』『ラッキーカレー』(共に、小学館)などがある。

1979年生まれ。「パレットクラブスクール」で絵本制作を学ぶ。第28回から講談社絵本新人賞で佳作を3年連続受賞。2009年、第30回佳作受賞作『まないたに りょうりを あげないこと』(講談社)でデビュー。 食べものが登場するユーモア絵本で大人気に!  主な絵本の作品に『りょうりを してはいけない なべ』『コックの ぼうしは しっている』『カッパも やっぱり キュウリでしょ?』(以上、講談社)『キャベツが たべたいのです』(教育画劇)『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』(白泉社)『オニじゃないよ おにぎりだよ』『カレーは あとの おたのしみ』(共に、えほんの杜)『クリコ』『ラッキーカレー』(共に、小学館)などがある。