雑誌『NHKのおかあさんといっしょ』で、ゆうぞうお兄さんと関わった編集者Hが、感謝と思い出を綴りました。
週末の誰もいない編集部で
ゆうぞうさんが「歌のお兄さん」だった頃に撮影をした「月の歌」の写真選びをしていたとこのことでした。
「俺、泣いているのか」と、自分でも不思議でした。
涙なら、ゆうぞうさんの訃報を聞いた時に、枯れるまで流しました。
そして、あの時からすでに2ヵ月がたっていました。
ゆうぞうさんが亡くなったことは悼まれます。しかしながら「今井ゆうぞうさん メモリアルブック」の製作をしている時は(この時の写真選びもそうでしたが)、平静な気持ちで取り掛かれていました。
きっと、心のどこかに「仕事」という制御があったのだと思います。
ですから、とても意外でした。
粛々と業務をしているのに、涙が出てきてしまうのです。
それは、「みなみのしまのこどもたち」という歌の写真を選びはじめたときでした。
みなみのしまのこどもたち
その頃の自分は、これまで全く縁がなかった幼児の部署に配属されたばかりでした。
そこでいきなり、雑誌「NHKのおかあさんといっしょ」の担当をすることになり、まさに右も左もわからないまま、ロケに同行することになったのです。
私にとっては「初」幼児誌の「初」ロケで、とても不安だったのですが、ゆうぞうさんは優しい笑みで受け入れてくれました。
撮影の合間にできたわずかな待ち時間でも、炎天下のなか、雑誌用の写真のために波打ち際を走ってくれたり、砂浜に番組名を書いてくれたりしてくれました。
「メモリアルブック」の記事にある共演者の方々のメッセージを読むと伝わってくるのですが、ゆうぞうさんは現場の空気をとても大切にする人でした。
ロケの時も、シーサーのポーズをまねてみたり、いつも場を盛り上げていました。
「ゆうぞうさん、優しい笑みをありがとう。イジッてくれてありがとう」
星を見るのが好き
時どき電話で近況を話して、一緒に食事をすることもありました。
ゆうぞうさんは美食家で、また、ロマンチストでもあったので、お店や場所のこだわりには相当なものがありました。
いつだったか、ゆうぞうさんが集合場所に桟橋を指定してきて、一緒に東京湾クルーズディナーを楽しんだこともありました。
もっとも、船内は勝負がかったカップルばかりで、男同士の私たちは、ちょっと浮いていましたが……。
誌面でも語られていますが、ゆうぞうさんは星を見るのが好きでした。
あの時も、東京湾を飾る夜空を愛でていましたね。
ぼよよん行進曲
「歴代のお兄さん、お姉さんみんなで歌う『ぼよよん行進曲』がYouTubeにアップされるよ!」と。
あの時の弾んだ声が忘れられません。
ゆうぞうさん、しょうこさん世代の代表曲が、渦中の人たちを励ますことになったのですから、本当に嬉しかったでしょうね。
その映像のリンクを貼っておきます。ゆうぞうさんは本当に楽しそうで、必見ですね。
本にのこしたい
そして、編集者としてできることは、ひとつ。
きらきらと輝いていた「歌のお兄さん」時代の彼を、本にのこすことだと思いました。
本が売れるかどうかなんて、二の次です。そんな企画を篤い気持ちで通してくれた、関係各所のみなさんに感謝しています。
今井ゆうぞう
1977年 徳島県池田町(現・三好市)生まれ。大学卒業後は「劇団四季」へ入団して、舞台を踏む。
2003年4月から「おかあさんといっしょ」の「歌のお兄さん」をつとめる。
2008年3月、同番組を卒業。その後はソロとしてコンサートや舞台で活躍。
2020年12月 逝去。
げんき編集部
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki
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