顔を見分けることができる魚 プルチャー

見なれたとなりの魚には大らかで、知らない魚には攻撃をする!?

ヒトやチンパンジーをはじめ、霊長類は「顔のちがい」で相手を見分けています。
ほかにも、群れで生活する一部のほ乳類、鳥類ではカラスのなかまなどにも同じ能力があります。

魚類にも、相手を目で見て区別する種類がいますが、相手のどこを見て判断しているのかは全くわかっていませんでした。

大阪市立大学理学研究科の幸田正典教授のグループは、「魚が人間のように、顔の模様のちがいでほかの個体を識別すること」を世界ではじめて実証しました。

実験では、東アフリカ・タンガニーカ湖に生息する熱帯淡水魚の一種プルチャーに、切り張りをして顔を入れかえた魚の画像を見せて反応を調べました。
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画像 プルチャー

プルチャーは顔に黄、茶、青の模様があります。
幸田教授によると、プルチャーなどのカワスズメ科やサンゴ礁に生息する魚は、なわばり意識がつよい種類が多く、見なれたとなりの魚には大らかですが、知らない魚には攻撃をするそうです。

まずオスのプルチャー2匹を、となり合った水槽で1週間飼育し、顔を覚えさせます。
つぎに1匹だけにして、顔を覚えさせた魚のモニター画像を、水槽の外から1分間見せました。すると、警戒(けいかい)して相手をじっと見つめる時間は10秒ほどでした。この画像を見たことのない魚にかえると、30秒ほど見つめました。
また、となりの魚の顔の部分だけを入れかえ、見たことのない顔にすると、警戒時間は平均30秒となりました。逆に、顔はとなりの魚、体を見たことのない魚にすると警戒時間は平均15秒ぐらいでした。

つまり、知っている顔の魚だと警戒する時間は短くなり、知らない顔の魚だとその時間は長くなっていたのです。

こうした結果から、プルチャーは相手の顔を見て、知り合いかそうでないかを判断していることがわかりました。
画像 模様が少しずつちがうことがわかります。

さらに、プルチャーのように同じ個体どうしが何度も出会う環境の魚(シクリッド類、サンゴ礁魚のスズメダイ科、ベラ科など)を調べると、個体ごとにちがう顔の模様が見られました。
一方、大きな群れでくらすなど、同じ個体がくりかえし出会わない環境でくらす魚には、顔の模様がないことがわかりました。
これもはじめての発見でした。
相手を見分ける必要がある魚は、顔の模様が発達しているのだと考えられています。
画像提供:大阪市立大学

関連:MOVE「魚」P189 カワスズメのなかま
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