『腸内細菌』と『免疫細胞』のふしぎな関係

腸内細菌と免疫細胞は、体にとって良い状態を維持している!

人体の腸の中には、100種類以上(500〜1000種類と言われることもあります)、合計100兆個以上の細菌がいます。
おならを作っているのが、この『腸内細菌』です。また、うんちの半分ほどは、腸内細菌の死がいです。
これらの腸内細菌は、消化を助けたり、外からやってきたウイルスや細菌をやっつけたりして、腸の中でバランスよくはたらき、私たちの健康を維持しています。腸内細菌がいなければ、有害なウイルスや細菌をやっつけることができずに病気になったり、うんちをうまくつくれなくなったりしてしまい、健康な生活を送ることができません。

いっぽう、私たちの体には、「好中球」や「T細胞」とよばれる『免疫細胞』がいて、病気を引き起こすウイルスや細菌をやっつけています。
免疫細胞は、血液やリンパ液の中にいます。風邪を引いたとき、首のあたりがはれることがありますね。あれは、リンパ節というところで、免疫細胞がさかんにはたらいている証拠なのです。免疫細胞がいなければ、わたしたちはすぐに風邪をひくようになり、また、風邪やケガが、なかなか治らないようになってしまいます。

このたび、この『腸内細菌』と『免疫細胞』のあいだに、とても親密な関係があることが研究によってわかりました。 平成26年(2014年)7月に発表されました。

実験は、マウスを使っておこなわれました。

一部の免疫細胞をもたないマウスでは、腸内細菌の種類が少なく、バランスがくずれてしまっています。このようなマウスの体内に、ある種の免疫細胞を入れてやると、腸内細菌の種類が増え、バランスも整うようになりました。
また、腸内細菌がよくはたらいているときのほうが、免疫細胞や「抗体(ウイルスや細菌をやっつける道具)」が、体の中でたくさんつくられることもわかりました。

つまり、腸内細菌と免疫細胞は、おたがいに関係しあって、体にとって良い状態を維持していると言えるのです。どちらか一方がだめになると、もう一方もだめになってしまい、逆にどちらか一方が改善すれば、もう一方も改善するようです。ヒトの体でも、マウスと同じようなことがおきていると考えられます。

これまで免疫細胞は、病気を引き起こすウイルスや細菌をやっつけて、体の外へ追い出すというはたらきばかりが注目されてきました。それだけではなく、腸内細菌に対しては、細菌の種類やバランスを維持することの手助けをしているようです。
人体には、まだまだわからないことがあるのですね!


■関連:「人体のふしぎ」44-45、92-101ページ