あの日、あの時、胸躍らせて目撃したのは何だったのか? 今回取り上げるのは「6月5日」(1999年)。
名連村を訪れた我夢は、その村にある沼で現金輸送車襲撃事件の犯人が行方不明になったという話を聞く。その沼には妖怪「ツチケラ」が棲んでいると伝えられていた。我夢はその沼を守る平野という老人と出会う。ツチケラの正体は、かつて旧日本軍の人体実験によって研究員の男性が変貌した姿だったのだ。
妖怪が住む沼
我夢は地元の子どもたちから、名連村にある土沼には「ツチケラ」という妖怪がいるという話を聞く。さらに、我夢の前に刑事たちが現れた。ツチケラの伝説があり、人が寄りつかない沼に、最近発生した現金輸送車襲撃事件の犯人が潜伏している可能性があるらしい。
刑事たちとともに沼にやってきた我夢だったが、彼らはその沼を管理している平野という老人に追い返されそうになる。しかし刑事は、沼に大量の1万円札が浮かんでいるところを発見。話を聞くために、平野を連行しようとする。すると、突然沼から触手が伸び、刑事を沼に引きずり込もうとしはじめた。
平野老人はオルゴールを取り出し、その音色を聴かせながら「やめるんだ! 近藤、やめるんだ。チエちゃんのためにも」と訴える。すると、触手は刑事を離し、沼の中へと消えていくのだった。
特捜チームXIG(シグ)によって本格的に沼が調査されることになり、我夢は平野に事情を聞いた。平野と、彼が言っていた近藤という男性は、太平洋戦争中に軍の秘密研究所で細菌兵器の研究をしていた。戦争に勝てば平和が戻ると信じていたのだ。
しかし、ある時偶然に人間を生物兵器に変貌させる人工細菌を作り出してしまう。近藤はその危険な研究を中止するよう仲間たちに訴えるが、軍の上層部は人工細胞の即時使用を指示。そして、研究に反対した近藤は人体実験の最初の被験者にされてしまう。
実験によって怪物化した近藤。その近藤は誰にも止めることはできず、平野だけを残して、その場にいた研究者と軍人を殺害。人工細菌を破壊して沼に逃げ込んだのだ。