戦隊ロボに革命をおこせ! 開発者に聞いたDXドンオニタイジンの誕生秘話

初のフル可動戦隊ロボ DXドンオニタイジンの開発者に聞いてみた完成までの秘話と狙い

テレビマガジン編集部

ビッグサイズは必然だった

サイズのお話が出ましたが、これは最初からアピールポイントとして意図したものなのでしょうか。

鶴巻
結果的に大きくなったというのが正しいですね(笑)。

寺野
そうですね。バンダイの安全基準って中々すごいもので、身長より高いところから落としても壊れないとか、わざと壊れやすい角度で落として、仮に割れたとしても尖らないとか。過剰とも思えるくらい品質基準が高いんですよ。

お子さまの安全に関わることなので、必要なことなのですが、そこを満たしながら、関節可動をさせるとなると、あちこち軸が入る形になるので、その軸の強度をキープするために必然的に大きくなりました。ただ、大きくなることはもう覚悟の上だったので「仕方がない、いきましょう」っていうところで、今回は進めました。

関節を可動させる仕様にするにあたり、気をつけたことはありますか?

寺野
大きくなるということは重たくもなるので、立たなくなるという危険がありました。足首とか膝関節とかがいちばん怖いんですよね。なので、「設計終わったから大丈夫」ではなくて、工場からテストショットと呼ばれる、あちらで成型されて組まれたものが来たらそこからまた設計チームの勝負がはじまるような状況でした。

「これだともたないからあの構造を変更しよう」とか、「ここに支えの板を入れよう」とか。スーパー戦隊の商品は開発期間がすごく短いので、短期間のうちに設計チームが、問題点をリストアップして対応してくれました。

コスト感は、どのタイミングで詰めていったのでしょうか?

寺野
今回は結構、モノ優先ですね(笑)。もちろん、当初の段階でサイズや金型数、彩色工程などある程度は想定します。ただ、普段だと例えば金型が想定よりひとつオーバーしてしまった場合、肘の関節は止めようとか、首は固定にしようとか、そういう話になるんですけど、今回は、コスト的な問題が起きて「どうする?」となると「やろう」という方向でさせてもらってます。

鶴巻
こちらも今までハイターゲット向けの商品をやっていた寺野さんのおかげだと思います。普通だったらブレーキを踏むところを、今回はアクセルベタ踏みで行ってくれたような感じなので、本当にもう寺野さんと開発チームの皆さんのおかげで今回の商品ができたと思っています。

デザイナーとしてはある種、無責任にお願いしたことをほぼ100%全力で応えていただきました。その分、本来はお値段ももっと高かったのだと想像しますが、そこはバンダイさんがいろんな手を尽くされて、税込み9,350円という価格面でも結構インパクトあるものになったのではないでしょうか。

寺野
役員に「これっていくらなんだよ」って言われて、「そうっすね。1万4000円ですかね」と冗談半分に言ったんですけど(笑)。結果的に9,350円になりました。

ドンオニタイジンはスーパー合体がある!?

ドンモモタロウが変身したドンロボタロウ。ドンオニタイジンの胴体を形成する。  ©テレビ朝日・東映AG・東映

ちょっと意地悪な質問なのですが、ドンロボタロウの肩が回転すれば最高だったと個人的には思いました。それ以外にも、ドンオニタイジンがフル可動仕様なのに対して、バラメカ状態では基本的に可動箇所は設けられていないんですね。

寺野
そこは、完全に割り切りです。本当は、そういうところも凝りたいんですよね。ただ、当然コストが上がるというところと、ドンロボタロウの肩に関しては、あそこが動きだすと変形しづらいんです。

あの肩がグリグリ動くと、背中に移動したときにきちっと収まりづらいんです。きちっとさせるためにはクリックを入れることになるんですが、するとまた構造が大きくなってしまう。

なので、フル可動にするのは合体形態だけにしようと。例えばサルブラザーロボタロウの腕だったり、イヌブラザーロボタロウの足だったりが動くのは、合体後に動かすから結果的に動いてるということです。

ドンオニタイジンやドンロボタロウの股関節はいかがでしょうか? 腰のアーマーが固定なので大きく脚を上げられなかったり、脚を開いたり閉じたりできないのには理由があるのでしょうか?

寺野
それは、「今後の合体」のためです。1号ロボだけで完成されるのであれば、もう少し余裕がありました。ただ、あそこから更に重量が乗ると股関節が重さに耐えられず脚が開いてしまったり、お辞儀をしてしまう。そういう点で可動域を制限しています。

ドンオニタイジンは今後の戦隊ロボ玩具のスタンダードになるのか

フル可動の仕様は、今後の戦隊ロボのスタンダードになる可能性はあるのでしょうか?

鶴巻
これは、良い文化なのか悪い文化なのかわかりませんが、毎年毎年違うことにチャレンジしていくっていうのが、スーパー戦隊シリーズの玩具開発なので、必ずしもこれがマストになるかっていうのは、その時の担当者によりけりだと思いますが、きっとまた違った驚きを与えてくれるのではないかと思っています。

ただ、プレックスとバンダイで今できる最高の到達点を目指してやったものが、ドンオニタイジンですね。


寺野
スタンダードを作ってこなかったのが戦隊ロボなので。

鶴巻
「甘んじればいいのに」という思うところもちょっとあるんですけどね。みんな「絶対違うものをやってやる!」っていう気概のほうが強くて(笑)。

ドンオニタイジンは何号ロボ?

ちなみに、スーパー戦隊やロボットアニメでは、最初に登場したロボを「1号ロボ」、1号ロボと連動したり、1号ロボと同格のロボを「2号ロボ」と呼ぶ文化のようなものがありますが、バンダイさん的にドンブラザーズの1号ロボはどちらになるのでしょうか?

寺野
これ難しいんですよね(笑)。ドンゼンカイオーは1月に先行して『ゼンカイジャー』に登場したので、登場回数は圧倒的にドンブラザーズのほうが多いのに、バンダイの社内的にはゼンカイジャーにカウントされるんですよ。なので、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』としての「1号ロボ」はドンオニタイジンなのかな、と。
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