マンガ『宇宙兄弟』を生み出した編集者に学ぶ「子どもと宇宙を10倍楽しむ3つのコツ」

宇宙を身近に楽しむ入り口はこんなところにあった!

ライター:高木 香織

2022年10月6日(日本時間)、宇宙飛行士若田光一さんが宇宙に飛び立ちました。民間宇宙船「クルードラゴン」には、若田さんのほかにアメリカ人2人、ロシア人1人が搭乗しました。アメリカ人とロシア人と日本人が、狭い宇宙船の中で仲良くやっていけるのか? ちょっとハラハラしちゃいますよね。

宇宙で繰り広げられるチームワークといえば、兄弟で宇宙飛行士を目指す大ヒットマンガ『宇宙兄弟』を思い浮かべる人も多いでしょう。「この機会に、宇宙をもっと知りたい!」という人のために、ピッタリの図鑑を発見! そこで、宇宙のすべてが学べる『宇宙兄弟と一緒に学ぶ 宇宙図鑑』(講談社)の監修をした(株)コルクの佐渡島庸平さんに、「子どもと宇宙を10倍楽しむ3つのコツ」を教えていただきました!

『宇宙兄弟』は「宇宙が好き」な人々が織りなす物語

──佐渡島さんは、マンガ『宇宙兄弟』の初代編集者ですね。どのようないきさつで『宇宙兄弟』は生まれたのですか?

佐渡島さん:そのころ僕は講談社のモーニング編集部にいて、漫画家の小山宙哉さんの担当をしていました。小山さんと次作の相談をしていたときに、まず「きっとこれから宇宙が注目されるだろう」と思ったんです。それから、すでに小山さんは家族についてのマンガを描いていたので、ちょっとずらして「兄弟」にしたら面白いんじゃないか。「宇宙+兄弟」というテーマでいこう、ということになりました。

ちょうどそのころ、モーニング編集部にジャニーズが大好きなアルバイトの女性がいたんです。彼女が嵐の大ファンだというので理由を尋ねると、「嵐のメンバーってそれぞれ仲よしで、その絆を見ているだけで胸がキュンキュンするんです!」って言うんですね。

その言葉を聞いて、「人は、他の人と深い絆を欲しいと思っている」ということに気づきました。自分の仕事のモチベーションも、一番は人との絆です。それなら「兄弟が軸でありながら、宇宙という職場を舞台にした人々のさまざまな絆を描こう」と思い、方向性がまとまりました。

──なるほど、それでたくさんの国の人たちが織りなす物語ができたのですね。登場する人々は、みな共通の心を持っているように感じます。それは「宇宙が大好き」ということです。子育て世代には、まだまだ「宇宙」は遠いもの、という人も多いかと思います。そんな人たちに、子どもといっしょに「宇宙」を身近に楽しむ入り口やポイントを教えてもらえませんか?

佐渡島さん:はい、わかりました。教えるなんて大それたことはないのですが(笑)、僕が考えた3つのポイントをお話ししますね。

宇宙を楽しむコツ①「まず空の星を見上げよう」

佐渡島さん:『宇宙兄弟』の連載を始めるとき、僕はロケットの中身がほとんど燃料だということすら知らず、ロケットの形のまま宇宙に行くと思っていたほど、まったく宇宙関係のことを知らなかったんです。一から本を読んだり取材したりして、勉強していったんですよ。

興味を広げるためには、まず初めに、空を見上げて星を見てみるのはどうでしょう。いつでも誰にでもできますよね。僕は知人から「世界で一番星がきれいなところは、インドのチベットに近いレーという場所だ」と聞いて、それが記憶に残っていて、大学生のときの初めての海外旅行はインドに行ったんです。インドで星を見上げたら、空が全部星で、天の川なんて星で埋めつくされて真っ白でした。夜空の星はそれだけで感動するものがあると思います。

──まさに天の川はミルキーウェイなんですね。

佐渡島さん:そう、ロマンがありますよね。子どもと一緒に見上げる時間が取れると、自然と宇宙の話ができるようになりますね。
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