女優・菅野美穂「令和のテーマ」満載なドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』男前な主婦のヒロインに「人生と刺繡は似ている。続けることで味になる」

女優・菅野美穂さん ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』インタビュー1

ライター:小川 聖子

写真:大坪尚人(講談社写真映像部)
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10代のころから数々の雑誌の表紙を飾り、その高い演技力や美しさはもちろん、自然体で朗らかな素顔でも、たくさんの人を魅了してきた女優・菅野美穂さん。

2023年10月19日よる9時 初回拡大SPでスタートのドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』(テレビ朝日系)ではなんと、“アラフィフのヒロイン”に挑戦。

鈴鹿央士、木戸大聖、宮澤エマ、白山乃愛、松岡茉優、志田未来、吉瀬美智子、田中哲司、三田佳子(以上敬称略)ら豪華出演者らと共演!

そんな菅野美穂さんに「Ane♡ひめ.net」がインタビュー。作品にかける思いとともに、現在ふたりの子を育てる母でもある菅野さんの毎日について、前後編でお届けします!

作品で描かれる価値観は、これからを生きる子どもたちのスタンダードになっていくのかも

──ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』は、手塚治虫文化賞「マンガ大賞」に輝いた入江喜和さんの同名コミックが原作です。どんな印象を持ちましたか。

菅野さん:原作コミックの魅力は、入江さんのほっこりとした絵柄と、ある意味その絵に似つかわしくないような、エッジの効いた事件が次々に起こるところだと思います。

主人公は私の年齢とも近い、アラフィフのゆりあさん。彼女はそれまで、「平凡ながらも幸せ」という暮らしを送ってきたのですが、夫の吾良さんが倒れたところから、夫の彼氏を名乗る人が現れ、さらに別の彼女と隠し子かもしれない子どもたちが現れたりと、思ってもみなかった現実に直面していきます。

本当にびっくりするようなことが次々に起こるのですが、そんな出来事を前に揺れ動くゆりあさんの感情がリアリティたっぷりに描写されるので、「あー、わかる」「きっと自分もそう思っちゃうだろうな……」とどんどん引き込まれていくんです。
──まさに「現代ならでは」というテーマがたくさん含まれていますね。

菅野さん:そうなんです。LGBTQ、ジェンダーの多様性、5080問題、そして50代を迎える女性の身体や心の変化……そんなものがすべて作品に組み込まれています。

それでもここで描かれる、「老いも若きもお互い認め合い、助け合いながら生きていく」というメッセージや価値観は、これからの時代を生きていく子たちのスタンダードになっていくのかもしれない、というふうに思いました。

世の中が関心のある話題を扱っていますし、雑誌『たのしい幼稚園』のパパママ世代のみなさんが共感できるキャラクターも出てくるので、楽しんでいただけるのではないかと思っています。
──さまざまな世代のキャラクターが出てくるところも作品の面白さのひとつですね。この作品で菅野さんが演じる「伊沢ゆりあ」は、主婦の“ヒロイン”。子どものころのあだ名は「おっさん」だったゆりあについて、菅野さんはどんな印象を持ちましたか。

菅野さん:ゆりあさんは、同性から見てもカッコいい女性だと思います。人生に対して覚悟ができていて、決して楽な道を行こうとしない「男前」。

ゆりあさんの子どものころのあだ名が「おっさん」だったのは、きっとそんな雰囲気がすでにあったからかもしれないですね。

小学生くらいのときの男の子って、自分が太刀打ちできない子のことは茶化して上に立とうとすることがありますから、そんなものの標的になっていたのかもしれません。ゆりあさんは真面目だから、きっとそんな言葉に傷ついてしまったこともあるでしょうね。

また、ゆりあさんは「カッコよく生きようぜ」という父親の言葉を胸に生きている女性です。だから、突然現れた夫の彼氏や彼女(?)、果ては子どもたちまで自分の家に住まわせるという大胆な選択をしていくんです。

丁寧な心理描写で、「ゆりあさんならそうするだろうな」と、その気持ちはわかりますし、それがカッコいいと頭では思うのですが、本当ならやっぱり大変なことですよね。実際は心が追いつかないんじゃないかと心配になってしまって……。

でも、それをやり切るのがゆりあさん。とにかく懐が深く、武士のように筋の通った人。原作のゆりあさんに比べ、私はそんな堂々とした感じも、身長も足りてはいないのですが、そこは演技で意識していけたらと思っています。

刺繡作品も、人生も、終わってみないとわからない

──少女時代はバレエに夢中になり、大人になってからは、刺繡教室の先生をしているゆりあ。菅野さんは役づくりのため、年明けからバレエを習い、刺繡の教室にも通っているとうかがいました。

菅野さん:バレエのほうは、お話の中に「トウシューズ」が出てくるので、「レッスンではもしかしてトウシューズも履けるかな?」なんて少し期待していたのですが、そんな甘い世界ではありませんでした(笑)。

ただ、大人になって何かを習ったり、レッスンに行ったりすると、すごく前向きな気持ちになれるのだということを改めて知りました。

私より年上の方も多いのですが、みなさん子育てが落ち着いて、自分の時間ができたことで新たにバレエを始めたり、あるいは再開されたという方ばかり。

息子さんのことだったり、「やっても上手くならないのよ〜」というバレエの悩みだったり、レッスンの合間のおしゃべりもとても楽しくて。良い時間を過ごせるものだと思いました️。

刺繡のほうは、みんなそれぞれにやってきて、またそれぞれに帰っていくという感じ。みんなで刺繡に集中している間はいい意味で無心になれます。ただ、できたものを先生のものを比べると、「ひどいものだな」と落ち込むこともありますよ(笑)。

でも、そこには確かに手仕事ならではの味わいもあって……。刺繡をしていると、途中でうまくいかなくなって、「なんだこりゃ?」「もう無理~!」と、投げ出したくなるときもあるんです。

でも、それでもその糸は切らないほうがいいみたい。あきらめず最後まで仕上げると、その手仕事が味になる、だから終わってみないとわからない……というのはどこか、人生とも通じているような気がしています。
ときおり笑いを交えながら、丁寧に質問に答えてくれた菅野さん。インタビューは後編に続きます!
菅野美穂さんのインタビューは、2023年10月27日発売「たのしい幼稚園12・1月号」にも掲載されます!
たのしい幼稚園12・1月号
発売日:2023/10/27
定価:1480円(税込)
撮影/大坪尚人(講談社写真映像部) スタイリング/青木千加子 ヘア&メイク/布野夕貴 取材・文/小川聖子
放送情報
『ゆりあ先生の赤い糸』

テレビ朝日系にて、2023年10月19日初日拡大スタート 毎週木曜21:00~21:54放送

出演:菅野美穂
原作:入江喜和『ゆりあ先生の赤い糸』(講談社)
脚本:橋部敦子
音楽:菅野祐悟
監督:金井紘、星野和成、竹園元
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:峰島あゆみ(テレビ朝日)、中込卓也(テレビ朝日)、山形亮介(KADOKAWA)、新井宏美(KADOKAWA)
制作協力:KADOKAWA
制作著作:テレビ朝日
PROFILE
菅野美穂

1977年8月22日生まれ。埼玉県出身。女優、タレント。1998年、ドラマ『君の手がささやいている』でエランドール賞新人賞第3回大賞を受賞。近年の出演作に『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』主演・水無瀬碧役、『DOCTORS~最強の名医~ファイナル 新春ドラマスペシャル』皆川琴美役ほか。2013年に結婚、現在2児の母でもある。
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