『赤毛のアン』著者モンゴメリ・生誕150年! 日本初の全幕新作バレエに子ども83人が出演(鳥取発) 指揮者・井田勝大さんが語る「3つの魅力」
モンゴメリ生誕150年 鳥取県のプロデュース公演「新作バレエ 赤毛のアン」
2024.08.07
今年2024年は、『赤毛のアン』の著者モンゴメリの生誕150年です。
美しいカナダのプリンスエドワード島にやってきた、孤児で赤毛の少女、アン。生まれつきの想像力に恵まれ、とってもおしゃべりで元気いっぱいのアンは、大真面目なのになぜか失敗ばかり。でも、アンの魅力にまわりの人々も変わっていきます。
この楽しい名作『赤毛のアン』が、この秋、鳥取県発の日本ではじめての全幕バレエになります。 『赤毛のアン』がどんなバレエになるのか、「新作バレエ 赤毛のアン」の指揮・音楽監督の井田勝大(かつひろ)さんに、『赤毛のアン』の魅力と楽しみ方をうかがってきました! 子どものバレエダンサーたちもたくさん出演するそうですよ!
〈物語『赤毛のアン』の主人公アン・シャーリーは、生まれて3ヵ月で両親を熱病で亡くします。親戚の家を転々としたあげく孤児院に入っていた11歳のアンを、マシュウとマリラの兄妹が引き取って育てることに。夢見がちでおしゃべり、個性あふれるアンが、大まじめで巻き起こすおかしな騒動に、まわりの人たちの誰もが幸せになっていきます〉
目次
『赤毛のアン』は、バレエにぴったりの物語
――なぜ『赤毛のアン』を、新作バレエにしようと思われたのですか?
井田勝大さん(以下、井田さん):『赤毛のアン』って、バレエにぴったりのお話なんですよ。まず、劇中劇はバレエでは得意の手法ですし、クラスメイトのギルバートとのロマンスは二人の踊りで描くことができる。けれどもふたりの“育ち”がつり合わない、というストレスは演劇的だし、アンを支えるまわりの人たちの励ましやあたたかさは大勢の踊りで表現できます。アンの成長をみんなで支えていくような、あたたかい舞台が作れそうだなと想像できたんです。
アンの魅力と楽しみ方①赤毛をからかわれても、偏見に負けない
――心に残っているエピソードはありますか?
井田さん:アンが子どものころのエピソードはすごく印象的です。学校で同じクラスのギルバートという男の子が、アンの長い三つ編みの髪の毛の端をつかんで「にんじん!」と言います。彼は、学校中のどの女の子も持っていないような大きな目をしたアンに、自分のほうを振り向いてほしかったんです。
でも、アンは赤い髪にコンプレックスを持っていましたから、くやし涙をいっぱいためて、自分の石板をギルバートの頭にうちおろして真っ二つに割ってしまう。そして「理不尽なことは絶対許せない、学校なんかもう絶対行かない!」と強く心に決めるんです。こういったアンの芯の強さに、思わず味方をしたくなりますよね。
――石板というのは、今のノートのようなものですよね。家に帰って「学校を休む」と言ったアンを、マリラは学校に行く気になるまでそっとしておいてくれます。厳しかったマリラが、あたたかく見守ることができるように変わっていきましたね。
アンの魅力と楽しみ方②「いちご水」事件の失敗を、落ち込んで素直に反省
――ほほえましいお話もありますか。
井田さん:大好きな「腹心の友」のダイアナを家によび、大人のお茶会のまねごとをするのですが、「いちご水」を出したつもりがぶどう酒だったという事件です。おっちょこちょいで、まだまだ子どもらしくて、自分がやってしまったことに落ち込んでしょんぼりとしてしまいます。素直さが感じられて好きなシーンです。
アンの学校時代のエピソードは、一つひとつがとっても面白くて、次はどうなるんだろうと期待してしまいますね。
――そうですね、次は何が起きるの? 今度はどんな事件があるのかな? と思いますよね。
83人の子どもたちと一緒に、思い出に残る舞台をつくる
井田さん:そんな気持ちにさせてくれるエピソードが、たくさんバレエの中にも入っているんですよ。物語『赤毛のアン』から心に残るシーンを抜き出して台本をつくり、舞台上でも面白く展開できるようにつくっているところです。
――「新作バレエ 赤毛のアン」には、子どもたちがたくさん登場するそうですね。
井田さん:はい、鳥取県でオーディションに参加した子どもたちが83人も出演します。おもに小学生から高校生で、大人もいます。鳥取のバレエ教室でレッスンをがんばっている子どもたちが集まってくれました。今回は新制作ですから、振付の山本康介先生が出演者に合わせた振付を考えてくれることになっています。
――それは楽しみですね!
井田さん:そうなんです。新しい舞台に参加したことが、子どもたちにとって素晴らしい経験や学びになってくれるといいなと思っています。将来、バレエダンサーを目指してもいいし、別の分野でこの経験を生かしてくれてもいい。この舞台をいっしょにつくったという経験が、いい思い出になってくれるとうれしいです。
アンの魅力と楽しみ方③原作を読んで「強く憧れること」
――「新作バレエ 赤毛のアン」では、どんなところを工夫されていますか?
井田さん:たくさんの面白いエピソードのうち、あるお話とお話をリンクさせたり、違う登場人物との行動を同時進行にしてみたり、お話全体がよくわかって、物語の中に入り込めるような工夫をしています。
――バレエを何倍も楽しむにはどうしたらいいですか? 観てみたい人、参加する人両方へのアドバイスをお願いします。
井田さん:「強く憧れること」がすごく大事です。バレエを観るときであれば、強く憧れて劇場に入ると、公演をより楽しむことができます。たとえば、原作などの活字を読んでおくと、物語の中にすっと入りこめて主人公になった気持ちで舞台を観られます。また、バレエのレッスンを受けているなら、自分が体を動かす前に、本でも漫画でも映像でもいいので目を通しておき、「こんなふうに動けたらいいな」と強く憧れる。そうすることで、自分の体の動きがイメージに近づいていくことってあると思うんです。観るときも踊るときも、憧れて憧れて物語の世界に入る、これがバレエを何倍も楽しむポイントだと思います。
観るだけでなく、お話の原作を読んだり、音楽を聴いたり、いろいろな楽しみ方をして、「新作バレエ 赤毛のアン」の世界を満喫してくださいね!
●井田勝大(いだ・かつひろ)指揮・音楽監督
鳥取県生まれ。東京学芸大学音楽科卒業、同大学院修了。ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場、東京・オペラの森などで小澤征爾、ズービン・メータのアシスタントを務める。2007年に熊川版『白鳥の湖』公演でデビュー。以降、K-BALLET TOKYOをはじめ、東京バレエ団、新国立劇場バレエ団、東京シティ・バレエ団、牧阿佐美バレヱ団、谷桃子バレエ団などを指揮するほか、ミハイロフスキー劇場バレエ(旧レニングラード劇場バレエ)、ウィーン国立バレエ団、ロシア国立モスクワ・クラシックバレエ団などの来日公演を指揮している。K-BALLET TOKYOでは、選曲・編曲も担当。また、東京フィルハーモニー交響楽団などからアマチュアを含め多数のオーケストラや合唱団の指揮や指導を行っている。トランペットを田宮堅二、田中昭、山城宏樹、指揮法を山本訓久、高階正光に師事。現在、K-BALLET TOKYO音楽監督、シアターオーケストラトウキョウ音楽監督。信州大学教育学部講師、エリザベト音楽大学講師、洗足学園音楽大学非常勤講師。
鳥取県プロデュース 新作バレエ「赤毛のアン」
2024年10月12日(土)・13日(日) とりぎん文化会館梨花ホールにて上演
あの世界の名作「赤毛のアン」が鳥取から日本で初めての生演奏・全幕バレエに!
主人公アンの成長を描いた普遍的なテーマを題材に、第一線で活躍するプロダンサーと鳥取の若き才能たちで創る日本初のバレエ作品です。
10月12日(土)開場15:15 開演16:00
10月13日(日)開場13:15 開演14:00
全3幕/120分(休憩1回含む)
[原作]ルーシー・モード・モンゴメリ
[振付・演出]山本康介
[指揮・音楽監督]井田勝大
[台本]森川剛
[作曲・編曲]葛西竜之介
[照明デザイン]足立恒
[衣裳デザイン]武田久美子
[衣裳製作](有)工房いーち
[ヘアメイク]星野安子
[舞台監督]狩俣康徳
[指導補佐]日本バレエ協会山陰支部
[管弦楽]鳥取チェンバーオーケストラ特別編成
[主催・制作](公財)鳥取県文化振興財団
高木 香織
出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。
出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。