ドラマ『マイホームヒーロー』主演・佐々木蔵之介「“1周回ったコミカルさ”でエンターテインメントとして楽しめる」関西人ならではの「ピンチも笑いに」精神

ドラマ『マイホームヒーロー』主演・佐々木蔵之介さんインタビューVol.1

ライター:小川 聖子

写真/嶋田礼奈(講談社写真映像部)
「ごく普通の……」で始まる役柄を巧みに演じつつ、実はまったく「普通」ではない唯一無二の存在感で、舞台、映画、ドラマと幅広く活躍する俳優・佐々木蔵之介さん。

2023年10月スタートのドラマ『マイホームヒーロー』では、おもちゃ会社で働く普通のサラリーマンでありながら、家族を守るために殺人を犯してしまう主人公・鳥栖哲雄を演じています。

Ane♡ひめ.netでは、佐々木さんに全2回にわけてインタビュー。作品への思いから、後輩世代に思うことまでお話を伺いました。

原作の「1周回った面白さ」をうまく表現していけたら

──ドラマ『マイホームヒーロー』は、2017年にスタートし、現在も大人気連載中の同名の人気コミックが原作。佐々木さんが演じているのは、愛する家族と平穏に暮らしていくことが生き甲斐だったごく普通のサラリーマン・鳥栖哲雄です。まずは鳥栖哲雄という役柄についてからお伺いできますか。

佐々木さん:​鳥栖哲雄は、妻(木村多江さん)と娘(齋藤飛鳥さん)と3人家族、穏やかで幸せな生活を送っていたのですが、その幸せがひょんなことから危険に晒され、殺人を犯してしまいます。

理由はどうあれ、殺人は「犯罪」です。でも、“家族への愛”が彼を突き動かし、頭も身体もフル稼働してピンチを乗り越えていく姿がいつしかヒーローに見えてくるんです。そんな複雑な事情を抱える哲雄は、非常に多面的なキャラクターだと思いました。

──「犯罪者なのにヒーロー」「ヒーローなのに犯罪者」ということですね。哲雄はその後、闇社会の犯罪組織に目をつけられてしまいます。

佐々木さん:​犯罪組織に目をつけられてからは怒濤の展開で、次から次へと大きな危機に見舞われてしまいます。「ここで選択を間違えたら、次の瞬間はどうなるかわからない」という修羅場に何度も遭遇するのですが、彼はそんなピンチをギリギリのところで切り抜けていく。そんなところはある意味「スーパーマン」のようでもあります。

哲雄がピンチを切り抜けられるバックボーンとして、彼には「推理小説オタク」という一面があるのですが、原作ではその詳細も丁寧に描かれていて納得感がありました。映像で表現するには難しい部分もありますが、そのあたりもこの作品の面白さなので、なるべくカットしないで表現していけたらと思っていました。
──ピンチを乗り切る哲雄のシーンには、切実さとともにちょっとコミカルな雰囲気もありますね。

佐々木さん:その辺りのバランスは凄く考えました。哲雄は自分が怪我をしようが、命を取られようが、家族のために動き続けると決めている男。

ただ暴力だったり、闇の社会だったりというものが絡む作品は、そこにリアリティがありすぎると作品として見づらくなってしまうと思うんです。だから、あえてそこはコミカルに見せてエンターテイメントに昇華しようと。

──それでも日常と地続きで起こる暴力事件や、死体を解体するシーンなどは怖すぎました。

佐々木さん:原作のコミックでは、哲雄は推理小説で読んだことを思い出しながら、「証拠を残さないことが一番」「それにはまず遺体を煮ることで油分を消す」「匂いを消すには上からコーティングするだけではダメで……」と怖いんだけれども、まるでレシピにそって料理をするように淡々と死体の処理をするんです。

その有り様が、1周回ってある意味面白い、そんなところがこの作品の魅力だと思っているので、その雰囲気はなるべく生かしていけたらと思いながら演じました。

ピンチは愚痴るよりも「笑い」で乗り切りたい

──ドラマでは次から次へと「嫌なこと、怖いこと」が起こります。撮影はすでに終わっているということですが、撮影現場で「嫌だな、怖いな」と感じたことはありましたか。

佐々木さん:嫌だったのは……現場でメイクをするのですが、仕上げにほぼ必ず「血のり」をつけられるんです。ほとんど毎日。血のりがついてるといろいろなことが制限されるので、お弁当も食べづらくて、「もうええわ」って(笑)。それがちょっと嫌でしたね。でも不思議なもので、最後のころには血のりがないと物足りなく感じるようになってしまいました(笑)。

──毎回のように、ピンチが訪れますものね。哲雄は、数々の危機に見舞われますが、そのたびに趣味でもある推理小説から得たアイディアで乗り切っていきます。佐々木さんにも「ピンチの乗り越え方」はありますか。

佐々木さん:ピンチの乗り越え方は……「笑い」ですね。大変なときは、なるべく笑いにしようと思うことが多いです。

これは自分が関西人であることも関係しているかもしれません。関西って、なんでも笑いに昇華させてしまうところがあるんですよ。大変なことがあればあるだけ、後でどう笑い話にするかを考える。「あのときめちゃくちゃ大変やったんやで」とか、「あのロケ、めちゃくちゃ寒かったんやで」って笑って話すにはどうしたらいいかを考えるんです。

これは実際効果があります。人って、ギリギリの状況や、苦しすぎる状況だと自分の能力を十分に発揮できないものでしょう。そこでちょっと笑いを交えてゆとりを作ると、新たな可能性に気がついたり、できることが見つかったりする。なんらかの「道」が見えてくるんです。

──確かに切羽詰まりすぎた状況だと、視野も狭くなってしまいます。

佐々木さん:そう。さらにできれば、その大変さを他の人とも共有できたらいいんですけどね。「最悪やん」「きついな、これ」って愚痴るのではなく、「今が最低なんやったら、あとは上がっていくしかないやん」って、一緒に笑えるといいですよね。そうやって乗り越えて、また後でも笑えたら、それが一番いいんじゃないかと思いますね。
インタビューはVol.2に続きます。Vol.2は10月24日公開予定です!
佐々木蔵之介(ささき・くらのすけ)

1968年2月4日生まれ。京都府出身。俳優。1990年、大学在学中に劇団「惑星ピスタチオ」の旗揚げに参加。2000年、NHKでは初出演作となった連続テレビ小説『オードリー』で注目を集め、以後、演技派として映像作品から舞台まで幅広く活躍する。

2005年には自身がプロデュースを務める演劇ユニットTeam申を立ち上げた。主な出演映画に「間宮兄弟」「アフタースクール」「超高速!参勤交代」シリーズ、「破門 ふたりのヤクビョーガミ」「3月のライオン」前後編、「嘘八百」シリーズなど。ドラマ・映画化される「マイホームヒーロー」に主演。2024年度の大河ドラマ「光る君へ」にも出演予定。
ドラマイズム「マイホームヒーロー」

原作・漫画:山川直輝・朝基まさし『マイホームヒーロー』(講談社「週刊ヤングマガジン」連載)
出演:佐々木蔵之介、高橋恭平(なにわ男子)、齋藤飛鳥、淵上泰史、内藤秀一郎、音尾琢真、吉田栄作(特別出演)、木村多江
監督:青山貴洋、棚澤孝義、山本大輔、森裕史
脚本:櫻井剛、船橋勧
音楽:堤博明
制作プロダクション:TBS スパークル C&I エンタテインメント
製作:ドラマ「マイホームヒーロー」製作委員会・MBS

2023年10月24日火曜日 MBS0時59分〜 TBS1時28分〜放送 

映画「マイホームヒーロー」2024年3月8日公開!
取材・文/小川聖子
写真/嶋田礼奈(講談社写真映像部)
ヘアメイク/晋一朗(IKEDAYA TOKYO)
スタイリスト/勝見宜人 (Koa Hole inc.)
・シャツ¥36300
・ジャケット¥132000
・パンツ¥41800
/共に、コラム(エストネーション TEL 0120-503-971)
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