小学生の息子が「いじめの加害者」に……親子で向き合った記録を漫画に〔大原由軌子さんインタビュー〕

いじめをしていた息子「あんなに仲良くしてたのに」 親としていじめどうする?#1

息子のいじめ問題に、親の視点で描いた漫画を発表した大原由軌子さん。 提供:大原由軌子

我が子が学校に通うと、親が勉強以外で気になるのが子どもの友だち関係です。もしも自分の子どもが学校で「いじめ」をしていたら、あなたならどうしますか。

漫画家・大原由軌子さんの息子さんは9年前、仲良くしていたはずの友だちから「いじめの加害者」として訴えられました。そのときの衝撃的な記録を「息子がいじめの加害者に? 大原さんちの大ピンチ」で漫画にしました。

ここではいじめ問題に悩むご家庭へ向けて、「加害者になった我が子への接し方」や「被害者側の家族への対応について」を、大原さんに当時の思いを聞きながら解決策のヒントをうかがいました(全3回の1回目)。

◆大原 由軌子(おおはら ゆきこ)
漫画家・イラストレーター。長崎県佐世保市出身。2005年にパニック障害+神経症を持つ夫との生活を描いた『大原さんちのダンナさん』でデビュー。夫や2人の息子たちのことをエッセイ漫画で執筆。

いじめられていた側からいじめる側へ

「うちの子がタケちゃんから掃除用具入れに閉じ込められて困ったといってるんですよ~」

ある日、突然入った一通のメール。それは長男のタケが一番仲良くしていた同級生の友だちSくんの母親からでした。「タケがいじめをしている」と訴えられるところから漫画は始まります。

提供:大原由軌子

2011年の東日本大震災を機に、東京から長崎県佐世保市に移住した大原一家。

大原さんは、大原さんと夫、2人の息子の4人家族で当時、長男タケは3年生。転校した先では、一方的に同級生から暴力を振るわれ、担任の先生に相談しても解決に至らず困った時期もありました。

しかしその後、タケは「いじめをする側」になってしまったのです。5年生でSくんへのいじめが発覚。かつていじめの被害者だったタケは、今度は加害者に……。驚きを隠せない大原さんはすぐに事実確認を行いました。

「我が家では夫をメインに、いじめの確認をしました。まずはタケには何が起こったのか全部話してほしいと伝え、Sくんに対するいじめの経緯を聞き出しました。

何時に起きた出来事なのか、どういう状況で起きたことなのか細かい部分まで話してもらうように促しました」(大原さん)

ここで大事なポイントは「𠮟らないこと」だと大原さんはいいます。それというのも、タケの混乱した様子を見て、大原さんは自分の子ども時代を思い出したからだと続けました。

「振り返ると私自身も、よくウソをつく子どもでした。子どもは『大人に𠮟られたくない』と自分を守るために、一生懸命ウソをついてしまうことがあるなって。

でも、そのウソに引っ張られていてはなかなか解決ができません。親側も『大したことではなかった』と都合のいいように解釈しないよう、つじつまが合わない話があれば聞き直し、ごまかしのないように具体的に聞き出してすべてを明らかにしました」(大原さん)

いじめのはじまりは「なんとなく」

𠮟られた恐怖で大事なことを見失っては困る、と大原さんは決してタケを責めることはしなかったといいます。

そしてタケは「掃除の時間に遅れてきたSくんをその場で数人の仲間と正座をさせて、その後掃除用具入れに閉じ込めた」など、そのときの状況を自分の口から正直に話し、徐々にSくんを傷つけたことに気がつきました。

提供:大原由軌子

その後、高校生になったタケは、「当時は『なんとなくいいか』と思っていた」とも語っています。

「実際にほかで起こったいじめのアンケートを見ると、理由があっていじめるというよりは、『なんとなくやった』という意見が非常に多いのです。

タケも『なんとなくその場の雰囲気や勢いで行ってしまい、知らないうちに人を傷つけてしまった』と心のうちを話してくれました。

結局、何が悪いのか、わからないままでは反省は難しいんです。自分で話すことによって、ことの重大さを知る必要がありました。『Sくんにやったことはいじめだった』と本人が認識するためにも、初めから𠮟らないで静かに事実を聞き出す方法は間違いではなかったと思います」(大原さん)

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