中学生・高校生が共感する! おすすめ人気ミステリー小説&作家の読まれ方・選び方

出版ジャーナリスト・飯田一史この本おススメ! 第12回 「中・高校生向けのミステリー小説」 (2/4) 1ページ目に戻る

出版ジャーナリスト:飯田 一史

成長に合わせて変化! ミステリー小説に求める要素のおさらい

前回のまとめがあるとスムーズなので、まずはおさらいしますね。

未就学児から小学校低学年、そして高学年と学齢が上がり、発達段階も変わっていくと、ミステリーや探偵ものに求めるものも変化していきます。

図式的にまとめると、探索→ 推理→ 学習要素→ 恐怖、笑い、恋愛 という流れになります。

年齢が低いほど自分で手を動かしたい、参加したいという気持ちが強く、迷路やパズルを探索するものが好きで、そこからだんだんと推理して謎を解くものへと関心が移っていきます。

そこから中学年、高学年と進むと、理科などの学習要素があるものや、怖さ・笑い・恋愛要素など、感情に訴えかける要素があるミステリーに変わっていきます。

自分で純粋に「謎」「推理」を解きたいということよりも、謎を解くのは子どもながらに大人顔負けに活躍する主人公たちに任せて、お話にハデさを求めていく、と言ってもいいかもしれません。

中学生・高校生がミステリー小説に求める「複雑な感情」とは?

では中学生、高校生と進むとどうなるでしょうか。

学校読書調査を見る限り、中学生と高校生でミステリーの読書傾向にそこまで大きな違いはありません(一部の人気タイトル、人気作家に特に集中しているので)。

強いていえば、中学生のほうが恐怖や笑いといった比較的プリミティブな感情に訴えかける内容をより好み、高校生のほうがなかなか人に打ち明けにくい内面、ギョッとするような本音を描いた作品を好む印象があります。

言い換えると、扱っている感情・気持ちが、中学から高校に進むにつれて、シンプルなものからより複雑になっていきます。

具体的に中高生に人気のタイトルを見ていきましょう。

『変な家』『変な絵』シリーズ 著:雨穴

2020年代に圧倒的に、頭ひとつどころかふたつも三つも抜けて小中高生いずれにも支持されているのが、ウェブライターでYouTubeでも活動する雨穴による『変な家』シリーズです。『変な絵』も人気ですね。

『変な家』著:雨穴(飛鳥新社)
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『変な家』ってホラーでは? と思った人もいるかもしれません。ただ、不自然な間取りの謎に迫っていくストーリーですので、広い意味ではミステリーでしょう(本の帯にも初期には「間取りミステリー」と書いてありました)。

この作品がヒットした理由はいろいろな切り口から語ることができます。ただ、「年齢・発達段階によってミステリーに求めるものが変わる」という観点から言うと、

・小学生:読み終えても作中に残された謎から「自分で解きたい」という参加欲求を満たしてくれる

・小学高学年~中学生:猟奇的な事件が関わっているのではという展開は、「怖さ」が味わえる

・中学生~高校生:「なぜそんなことをしたのか」という、いわゆるホワイダニット的な部分の掘り下げに悲痛な心情を織り交ぜている


といった具合に、それぞれの学年に刺さるものがあります。

それから雨穴作品は本を読み慣れていない人でも読みやすいように工夫されています。例えば、

・あまり地の文がなく、ほとんどが会話で進む

・誰が話しているのか、話者が文頭に明示される

・大事なポイントは太字で書かれる

・間取りはもちろん、それ以外にも、それまでの推理や事件の経緯をときどき取りまとめる図版が挿入される


といった、ほかの小説ではあまり見られない特徴があります。雨穴作品にはYouTube版もありますが、動画を観るのとそんなに変わらない感覚で読める文字ものになっています。

『かがみの孤城』著:辻村深月

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