【不登校】小規模フリースクールのある1日「イエナプランやフレネ教育にも負けない教育があった」[教育ジャーナリストがルポ]

『フリースクールという選択』ハイライト版1/4〜小規模な個人商店型〜 教育ジャーナリストおおたとしまさ 全4回 (3/3) 1ページ目に戻る

教育ジャーナリスト:おおたとしまさ

たけのこのタイムテーブルはシンプルです。9時から10時すぎまでがねっこタイムで、そのあと15時くらいまでは外ですごします。

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外遊びは川か、森か、大きな公園か、子どもたちが自分たちで話し合って毎日決める。  撮影:おおたとしまさ

15時から16時半までは、曜日によってメニューが変わります。月曜と火曜はトークルーム。いわゆる哲学対話の時間です。水曜は自由。木曜はノート。そのときに感じていること、考えていることなど、好きなことを絵や文章にして残します。

ねっこタイムのあと、この日は近くの大きな公園で思い切りサッカーをしました。お弁当も公園で食べて、古民家に戻ってきたのは15時ごろです。この日は水曜。そこからは自由時間ですが、中学生からの発案で、「たけのこ食堂」で販売するクリスマスリースをつくろうということになりました。

子どもたちは川原に向かいます。そこでクズのツルを刈って、編んで、リースの土台にするのです。川原で作業を始めてほどなくすると、磯辺焼きがふるまわれました。おやつ代わりです。

草が生い茂る浅川の川原には温かい西日が差していました。そこから約2時間、子どもたちは黙々とリースをつくっていました。さっきまで思い切り遊びきったから、そして何より、自分たちで決めたことだから、単純な手仕事にも根気よく取り組めるのでしょう。

朝それぞれの学習をこなし、話し合い、外で思い切り遊び、みんなでいっしょにごはんを食べて、手仕事にも根気よく取り組む……。曜日によっては、哲学対話をしたり、自由作文をしたりもする。イエナプラン教育とかフレネ教育とか、世界の名だたる教育法にも負けない立派な教育が実践されていました。

それを、「へぇー」とか「はぁ〜」とか言いながら、なんとなくやっているように見せてしまうのが代表の中川ひろみさんです。水鳥が水中で必死に水かきしているように、実際はものすごく考えて、もがいて、葛藤していますが、外には決して見せません。

「親の都合があるのもわかりますが、その子が動き出すタイミングを待ってあげないと何事も前には進みません。人生って長いし、1年お休みしたってなんてことはないでしょ。もっと広く見て、『大丈夫だよ』って笑ってあげてほしい。子どもには、育つ力がちゃんとあるから」とひろみさんはやさしく微笑みます。

依存先を増やす発想で多様なフリースクールを知っておく

行きたいときに気軽に立ち寄れる場所として、いろいろなフリースクールを知っておくといいと思います。依存先を増やす発想です。

一般的な学校とは違いますから、「こうでなければならない」とか「正解を見つけなきゃいけない」とか「いま決めなきゃいけない」みたいな強迫観念はいったん捨てて、柔軟にフリースクールを利用するイメージを膨(ふく)らませてほしいと思います。

フリースクールに通うことになったからといって、学校に通えなくなるわけではありません。一般的な学校との併用や、複数のフリースクールの併用もよくあります。

たとえばアットホームなフリースクールと塾が経営するフリースクールを併用したり、フリースクールとフリースペースを併用したり、子どもの状態によってそのバランスを変えたり、移行したりということも可能です。

拙著『フリースクールという選択』(講談社+α新書)では、たけのこの様子をさらに詳しく実況中継しています。

同書の「第1章 気軽に立ち寄れる学びの場」ではほかにも、わが子の不登校をきっかけに母親が立ち上げた「まなびスペースCOCOCARA」、居場所のニュアンスが強い「フリースクールLargo」、著名な教育者が代表を務める「オルタナティブスクールTERA」と「いもいもデイクラス」、そしてマンツーマンのフリースクール「代官山Branch Room」と、個性的なフリースクールを詳細にルポしています。

この本は、フリースクールという選択を検討しはじめた家族とともに、フリースクールという世界がどんなところなのかをざーっとひととおり見て回るガイドツアーのような本です。ただしガイドブックではありません。

各フリースクール運営者には、PRポイントよりも葛藤を詳しく聞いています。ある意味ネガティブな部分です。そこにフリースクールの現実があるし、それを語ってくれることこそが、フリースクールという選択を検討する家族の不安な気持ちに対する誠意だと思うからです。

取材・文/おおたとしまさ

おおたとしまさPROFILE
教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。リクルートから独立後、教育に関してさまざまな観点から取材を行い、著書は90冊以上。どこの組織にも属さない在野の視点で現代の教育への考察・提言を続けている。メディアへの出演や講演も多数。

全4回の1回目
2回目〜大手通信制高校系〜を読む※2026年5月17日より公開
3回目〜“オンライン”フリースクール〜を読む※2026年5月18日より公開
4回目〜オルタナティブスクール〜を読む※2026年5月19日より公開

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『フリースクールという選択』(講談社+α新書)刊行。
お子さんの「学び」「居場所」の新しい選択肢。多様化するフリースクールの理想と現実をルポしました。

フリースクールという選択

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おおたとしまさ(著)

発売日:2026/05/11

価格:定価:本体1200円(税別)

“フリースクール探し”で最初に読む本、登場! 『フリースクールという選択』(著:おおたとしまさ/講談社+α新書)
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おおたとしまさ

おおたとしまさ

教育ジャーナリスト

1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。

1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。