「仕事は“絵本の魅力を伝えること”」『第1回 読者と選ぶ あたらしい絵本大賞』特別審査員・ 磯崎園子(絵本ナビ編集長)〔前編〕
絵本ナビ編集長・磯崎園子さんのメッセージ
2025.01.18
磯崎 「絵本ナビ」をわかりやすい言葉でお伝えすると、「年間2000万人が利用する絵本情報・通販サイト」です。多くの方が直面する「どんな絵本を選べばよいか」というお悩みに対し、絵本や児童書を年齢やテーマ、人気ランキングで探せるほか、読者の方のレビュー、作家さんへのインタビュー、編集部おすすめの記事など、絵本選びをお手伝いするためのコンテンツを充実させています。また絵本関連グッズの販売や定期購読(絵本クラブ)、デジタルでの絵本読み放題「絵本ナビプレミアム」など、多くの方が一冊でも多く絵本に触れる機会を増やすためのサービスを幅広く行っています。
とくにサイトがオープンした2002年当時からずっと寄せられ続けているユーザーの皆さんからのレビューの数は45万件以上にものぼり、絵本ナビにとっても宝物となっています。
──レビューの数、すごいですね。つまり絵本ナビは多くの「読者」の方に支えられているということになりますね。
磯崎 そうなんです。絵本を読んだときの感想とともに、お子さんの反応やエピソードなども合わせて書いてくださって。その内容が、今度は他の方が自分の子どもに選ぶときの具体的な参考になっていく。熱のあるレビューが集まっていると、やはりその絵本を自分でも一度読んでみたくなりますよね。
私自身も、絵本を選ぶときや紹介する際に読ませていただくことが多いのですが、声を出して笑ってしまったり、涙が出そうになったり、気がつくとかなり時間が経ってしまっている……ということがあるくらい読み応えがあるんです。ですから「絵本が読者にどのように読まれているか」を知りたいと思ったら、まず絵本ナビに寄せられるレビューを読んでもらえたらと思います。
──確かに「絵本づくり」をしたいと思っている方にとっても、役に立ちそうな情報ですよね! レビューも読まれているとのことでしたが、磯崎編集長は普段どんな仕事をしているのでしょうか?
磯崎 絵本ナビスタッフとしての仕事は多岐にわたりますが、編集長としては常に「読者代表として絵本の魅力を伝える」ことを中心に考えています。
絵本の魅力というのは実際に手にとって開いてもらわないと、なかなか伝わりにくいことが多いですよね。ですから「この絵本、ちょっと読んでみたいな」と思ってもらえるように、毎月新刊絵本の紹介文を10~15本ほど書いています。その際には、なるべく子どもの視点に立ち、どんなところが目に飛びこんでくるのか、気になる場面はどこか、読んだ後にどんな気持ちになるのか、めいっぱい想像しながら読んでいます。
──紹介文によって興味を持ってくれる方がいるかもしれない。大事な情報ですね。
磯崎 絵本ナビを見に来てくださる方はほとんどが大人の方だと思いますが、まずは大人の方に興味を持ってもらい、その絵本の魅力を理解してもらわないと、なかなか子どもたちの手に渡っていかないですよね。子どもたちにとってその絵本がどんな存在となるのか、どんなふうに楽しめるのか、そんなことを常に考え伝えるようにしています。
「絵本と年齢の関係」について、思いっきり悩んでみても
──絵本を読むときの子どもの目線や反応というのは、年齢によっても全然変わっていくかと思います。それは経験からわかるものなのでしょうか?
磯崎 もちろん自分自身が子育てする中で、子どもと一緒に読んだ体験は貴重なものです。でも、限られた冊数しか読めないですよね。絵本と向き合いながら、自分の子どものころの記憶を広げてみたり、友人やスタッフの子どもたちの様子を見せてもらいながら、このくらいの年齢のときはどんなふうに読むのかな、と想像してみたり。そういうことで見えてくることはたくさんあります。
──何歳のときにどんな絵本を読んであげたらいいか、毎回悩んでしまいます。
磯崎 絵本と年齢はきってもきれない関係ですよね。そこで一冊にまとめたのが『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(磯崎園子・著 ほるぷ出版)。0歳から大人まで、その年齢でしか味わえない「絵本の楽しみ方」を紹介しています。絵本を通して子どもを知ることは、子どもを通して絵本を知ることにもつながっていきますよね。絵本を作りたいと思われている方は、何歳向けの作品にするかなど、そこは思いっきり悩んでいいんじゃないかと思います。表現の幅も広がっていくのではないでしょうか。
ロングセラー絵本も最初は新作だった!?
──磯崎編集長は毎月新しい絵本を読まれていると言っていましたが、ロングセラー絵本と新作絵本との関係はどう考えられていますか?