【きょうだいの愛情格差】心の傷と向き合う「親からの卒業」とは【社会心理学者が解説】

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日常の中でできる寄り添いは“フォロー”がすべて

▲子育てでは“仕方がないこと”もたびたび起きる。どうフォローするかが大切(写真:アフロ)
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自分のことはさておいて、わが子には愛情格差を感じてほしくないと思うのは当然だし、たとえ感じたとしても、それを引きずってほしくないと願うのが親心。では、親として、子どもには、どう寄り添っていけばいいのでしょうか。

「子育てには“仕方がないこと”が起きると言いましたが、このとき、どうフォローするかが大事です」

「例えば、下の子が生まれて赤ちゃんに手を取られてしまうと、上の子にかける時間が減ってしまう。あるいは、下の子が熱を出して、お兄ちゃんの野球の試合を見に行けなくなる──」

「そんなときには、親が“ごめんね、淋しい思いをさせて”と言って上の子を抱きしめてあげたり、“本当は行きたかったんだよ”などと、気持ちを伝えたりするだけでも、子どもの受け止め方は変わります」

このように、ひとつひとつの出来事にフォローを入れることが大事ですが、先生曰く「もっと大切なのは、それ以前に“普段どう接しているか”」。子どもの心には、実はこれが大きく影響するそうです。

「日常で、“自分は大切にされている”と子どもが感じていれば、少しの不公平は心に残りません。普段の食事や会話の中で“あなたのことをちゃんと見ているよ”というメッセージが伝わっていれば、愛情の土台は崩れないのです」

「普段からの関わりが安定していれば、“今日は行けないけど、次は必ず行くね”といった一言が、ちゃんと子どもの心に届くんです」


前編で詳しく触れていますが、「あなたのことがいちばん好きよ」といった声がけなど、子どもに“自分だけ”という特別感を抱かせる。こんな工夫の積み重ねが、子どもに「自分は愛されていない」と思わせないためのフォローになるということです。

「子どもは親の言葉より“空気”を感じ取る存在。結局のところ、子どもはすべてを感じ取っているんですね。だから、“いろんなことを感じている存在”であるという前提を、親が持っていることが大事です」

子どもが文句を言うのは「安心」している証拠

言葉にして伝えることはもちろん大切。でも、その言葉を支えている“親のまなざし”や“雰囲気”までも、子どもは受け取っている。だからこそ、親の態度がとても重要になってくるのです。

とはいえ、どんなに親が気を配っていても、子どもは文句を言うもの。

「なんで妹ばかり可愛がるの?」「なんでお兄ちゃんのハンバーグが大きいの?」「夕ご飯は弟の好きなものばっかり」──。そんな言葉が続くと、親は責められたような気持ちになることも……。

「でも、文句を言えるのは、安心している証拠なんです。小さな文句を言うのが子ども。むしろ、適度にわがままを言える子どもがいちばん健全です」

「そんな子どものわがままや小さな不平不満は、深刻に受け止めず、“そっか、ごめんね”“じゃあ次はあなたの好きなものにしようね”と軽く受け止めてあげればいいんですよ。親子関係は“適当なくらい”がちょうどいい」

そんな親子関係をつくるには、親が「完璧な親」を目指さないことが大事、とも。

「子どもの言動に一喜一憂せず、淡々と子どもに寄り添うことが大切です。とはいえ、親も人の子。感情的になることはあるでしょう。でも、そんな自分を責めたり、落ち込んだりする必要はありません」

「“ま、たまには、こんなこともあるよね”と思って流せばいいのです。また、子どもが思いどおりにいかないこともあるでしょう。そんなとき、“なんで、どうして”と考え込んだり、親としての自分を責めたり、“どうにかしなくちゃ”と躍起になったりせず、“そんなもんか”と受け止めればいいと思います」

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