
「ハチの毒針」はメスだけ? 正体は「別の器官」だった? 国立科学博物館の研究者が明かす意外すぎる「進化の秘密」
特別展『いきもの超ワールド展』監修 井手竜也さんインタビュー #2 (3/4) 1ページ目に戻る
2026.09.05
毒針を持っているのはメスだけ
──ちなみにハチというとやはり“刺す”イメージが強いですが、どのハチも針を持っているのでしょうか?
井手先生:基本的に、毒針を持っているのはメスだけです。毒針というのは、もともとは卵を産むための産卵管が進化したものなんです。たとえばタマバチは産卵管しかなく、メスは卵を産むための“注射針”として針を使います。
タマバチは植物に卵を産み付け、その部分が虫こぶとなり、幼虫は虫こぶを食べて育ちます。タマバチは植物に寄生する「寄生バチ」ですが、寄生バチの多くはあまり激しく動き回らない虫に寄生します。一方、より活発に動き回る虫を獲物にするには、彼らの動きを封じる必要があります。そこで産卵管を毒針に変えたのが「狩りバチ」です。
毒針を使って狩りをする「狩りバチ」の代表的なもののひとつがアナバチですが、彼らはキリギリスの仲間を捕まえて毒針で麻痺させ、幼虫の餌にします。狩りバチの仲間からさらに進化したのが、ハナバチのグループです。
このグループになると、毒針は持っているけれど、狩りのためではなく、自分の身を守るためだけに使っている。幼虫の餌に他の昆虫を捕まえず花粉を集めるので、毒針は身を守るときしか必要ないという進化をしています。
ハナバチの仲間であるミツバチは、ハチの中では比較的新しく出てきたグループです。働きバチはすべてメスのためやはり毒針をもっていて、巣が襲われた際には毒針を使って抵抗します。毒針には「かえし」がついており、哺乳類などの皮膚に刺さると抜けにくい構造になっています。
毒針を使って獲物を狩るアナバチについては、『いきもの超ワールド展』の展示(CHAPTER2 いきもので異なる「エネルギー補給」)でもご紹介していますので、ぜひご覧いただければと思います。
「新しい出会いがあるかも⁉」昆虫観察の魅力
──ひとことで「ハチ」といっても、本当にさまざまな種がいて、違いがあるのですね。
井手先生:いきものの生態を知りたいと思ったとき、野生の動物を間近で観察するというのはなかなか難しい。その点でいうと、虫は非常に身近な存在で、注視すればいろいろな姿を見ることができます。
とくにハチは本当に生態が多様で、集団で暮らすものもいれば単独で暮らすものもいますし、狩りや寄生をするものもいれば、花粉を集めるものもいます。
身近なところでその生態を見られる、独自の生存戦略を体感することができるのが虫の一番の魅力だと思いますので、身近な野生にぜひ目を向けてもらいたいなと思います。
たとえば私が研究しているタマバチは、クヌギやコナラなどどんぐりの木を好み、葉っぱや枝に虫こぶを作ります。これから秋にかけては、公園などでクヌギやコナラを見かけたら、葉っぱや枝を注視してみると虫こぶが見つかるかもしれませんよ!
虫は目に見えないほど小さいものもいて、名前も付けられず、人に知られることもないまま絶滅してしまったものもいるかもしれません。
世界にはそういった未知の虫たちがたくさんいますから、研究者としてはワクワクもしますし、虫たちのことをもっともっと明らかにしなければとも思います。
皆さんも自分の身近なところにはどんないきものがいるのか、関心をもってもらえたら嬉しいです。
【国立科学博物館のハチ研究者・井手竜也先生インタビュー(前後編)。ハチに遭遇した際の正しい対処法、アウトドアで気を付けたいポイントをお聞きした前編に続き、今回の後編では、特別展『いきもの超ワールド展』の見どころ、親子の身近な自然観察がグッとおもしろくなるハチの不思議や、研究者ならではのワクワクする観察のコツをお聞きしました】
取材・文/木下千寿
撮影/村田克己
超意外! ハチってそんな生活をしてるの!?
ハチたちの、自然界における役割に着目し、ミツバチを筆頭に、狩りバチや寄生バチたちを見つめながら、彼らが自然界(生態系)でどのようなやくわりを果たしているのかを解説します。
豊富な写真とコミカルなイラストで繰り広げられる『ずかん ハチのおしごと』。単なるハチの紹介ではなく、自然界における「ハチのやくわり」という点に焦点を当てた図鑑なので、子どもたちの調べ学習などにも最適です。
(こんな方におすすめ)
・ハチたちの役割や生活について知りたい方
・ハチに興味のある小学校中学年以上の方
・生態系における生物の役割について知りたい方
特別展『いきもの超ワールド展 国立科学博物館×ダーウィンが来た!』の詳しい情報

































