
読書感想文の「嫌い、書けない、やりたくない」を解決!「親子インタビュー式読書感想文」で親子のコミュニケーションも再構築〔文章力養成講座の専門家が伝授〕
「親子インタビュー式読書感想文」松嶋有香さんが解説① 教材:課題図書『ぼくの色、見つけた!』
2025.07.10
ゆか先生:「書く」ためには、その前に何を書くのか「考える」こと、そしてその考えを「整理する」段階があると思います。特に読書経験が少ない子は、自分の気持ちをうまく言葉にできないことが多いです。理由は、自分の考えを整理して言葉にする「アウトプットの経験」が不足しているからです。
人間は、頭の中に浮かんだことを話したり書いたりして一度外に出さないと、うまく「考える」ことができません。外に出さずにいる状態は「考えている」のではなく「悩んでいる」だけ。悩みを人に話すと解決できるように感じるのは、アウトプットすると考えが整理されるからです。

ゆか先生:子どもの考えていることを知るには、会話をすることが一番です。子どもが「ここがすごいと思った」というなら、「どんなところがすごいと思ったの?」、「それは自分でもできそうなことかな?」というように会話を続けると、子ども自身も気づいていなかった考えや感情を引き出すことができます。
そうやって出てきた「考え」や「言葉」は、その子でしか生み出せない唯一無二のものとなり、一生使える「自分の言葉」になるんですよ。
「読書感想文」の宿題を会話のキッカケに利用しよう
──小学校中学年になると、「小さいころのように、子どもがなんでも親に話してくれなくなった」「なにを考えているのかわからない」という悩みを耳にします。
ゆか先生:「なにかお母さんやお父さんに言いたいことがある?」と聞いても、すぐに素直に打ち明けられないのが、子ども心の複雑なトコロ。そんなときこそ、「親子インタビュー式読書感想文」に取り組むチャンスです。
テレビ番組でも漫画でもかまいませんが、親子で同じものを見たり読んだりする体験をしましょう。すると「共通の話題」が生まれるので、会話の糸口になります。そして「感想」を聞くことで、子どもがなにを考えているのかを知ることができます。
本をおすすめする理由は、親子それぞれが好きなタイミングで読めること。何度も読み返すことができること。一緒に読むこともできることです。物語の世界は現実とは違うので、子どもも気軽に意見を言うことができるのも、良い点です。
読書感想文の宿題なら、親子で同じ本を読む理由にもなるでしょう。2025年の課題図書(第71回青少年読書感想文全国コンクール課題図書)でいえば、小学校高学年の部に選ばれた『ぼくの色、見つけた!』は、親が読んでもおもしろい作品です。

ゆか先生:『ぼくの色、見つけた!』は、色覚障がいがある信太朗が主人公のお話です。信太朗だけでなく、両親の生き方についても掘り下げられていて、子育て中の親が共感するところ、ハッとさせるところがありました。子どもたちが読むために書かれた児童書は、大人にとっても良書である作品が多いんですよ。
──確かに、信太朗のお母さんが選択した生き方には「自分だったらどうするのか」と考えさせられました。でも子どもは、信太朗の両親についてはどうでもよくて(笑)、「そんなことを思っていたんだ」と新たな一面を知ることができました。でも意見が分かれて軽く言い争ってしまい、子どもの機嫌が悪くなってしまって……。
ゆか先生:子どもと話すときに親が心がけることはただひとつ、「絶対に子どもの意見を否定しないこと」。まずは子どもなりに考えたこと、言いたいことを全部しっかり聞くことが大切です。
「親が自分が言うことをしっかり聞いてくれた」という体験は、親への信頼につながります。そして親子の対話を繰り返し体験することで、「親に頼ってもいいんだ」という信頼関係を築いていくことができる。そんな親子関係になっていれば、「反抗期」など今後の成長過程でなにか問題が起きたときも、子どもが安心して親と話すことができるようになります。
もし子どもとの心の距離を感じていたら、宿題にかこつけて「親子インタビュー式読書感想文」に取り組んでみてください。「読書」を通して、親子の会話を通じたコミュニケーションの再構築をする絶好の機会になるはずです。
そしてこの再構築ができるのは、小学生が最後のチャンスです。