「不登校の子」と親の気持ちがラクになる小説・マンガ5選

【飯田一史のこの本オススメ! 第3回】学校に行けない子どもに寄り添う本を紹介

ライター:飯田 一史

写真/アフロ
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子どもが学校に行けない・行かないと、親は不安になりがちです。

「勉強についていけなくなるんじゃないか」「ちゃんと社会でやっていけるんだろうか」
子どもが家にいてもYouTubeを見たりゲームをやったりするだけで、勉強するでもない姿を見るとイライラしたり、焦ってきたりします。

でも「学校に行け」と圧をかけたり無理やり連れていこうとしたりしても、「なんで勉強しないの」などと怒りをぶつけても、たいてい親子関係がギクシャクするだけで、良い方向に変化が起こることはまずありません。

親が子に対してあれこれ口を出すのは、期待や願望があるがゆえです。

自分が望む方向に変化や成長してほしいという強い気持ちがあるから、言ってしまう。

それは私もひとりの親としてよくわかります(うちの子も小1から学校に行けたり行けなかったり、行けても教室に入れなかったり、イヤなことがあると学校でもふてくされて寝ていたりします。こちらの要望は、まあ、よくて1割くらいしか聞いてくれません)。

でも視点を変えて、子どもの側に立ってみてください。

不登校の子が家族と衝突すると、多くの場合、どこにも居場所や逃げ場がなくなります。場合によっては、本音を漏らせる相手がひとりもいなくなってしまう。安心できる時間と空間がない状態になります。これは本当にしんどいと思います。

そんな学校に行けない・行かない子の行き場のない気持ちに寄り添ってくれる小説やマンガを紹介します。

気持ちを打ち明けても大丈夫な仲間がいることの奇跡『かがみの孤城』

『かがみの孤城』
著/辻村深月 ポプラ社

ひとつめは定番ですがやはり『かがみの孤城』です。

主人公の中学1年生・安西こころがクラスメイトとも親とも折り合いが悪くなって自室に閉じこもっていたところに、突然部屋の鏡が光り出します。鏡のむこうの世界には、さまざまな事情を抱えた子どもたちが集められていました。こころたち6人は、そのお城にあるカギを見つければ「願いがかなう」と言われ、探しはじめます。

現実世界でも不登校、行きしぶりになる事情は人それぞれですが、『かがみの孤城』では学校に行けない・行かない子同士が、最初は警戒や反目していたけれども徐々にお互いの背景を知り、仲間になっていくところが、読んでいて救いになるところではないかと思います。

現実には、学校に行かないと友だちとの関係が疎遠になったり、友だちがいても学校に行かないことによる不安や悩み、家族とのトラブルについて相談できるわけでもないなど、孤独なことが少なくありません。

学校ではない場所──塾や習い事、フリースクールなど──で友だちができることもありますが、そういうところにもなじめない、あるいはそもそも行かせてもらえない、金銭的な理由などで通わせられない場合もあります。

でも現実世界で身近に本心を吐露できる仲間がいなくても、かがみの孤城に集められた6人の姿を読むと、子も親も「私ひとりじゃないんだ」と思えるはずです。

思春期の学校でのトラブルを描く『保健室経由、かねやま本館。』

『保健室経由、かねやま本館。』
著/松素めぐり 講談社

新潟から東京に転校した中1の佐藤まえみ(サーマ)の兄で中3の慈恵は不登校になり、サーマもクラスの一軍女子から「サーマってしんどい」と言われたショックから、教室にいられなくなる。思わず保健室に駆け込むが、そこは「第二保健室」。第二保健室は傷心や嫉妬など心に効く各種温泉をとりそろえた宿「かねやま本館」へと通じていた──。

思春期になると、同じ年頃の人に対して見栄を張ったりマウンティングしたり、ちょっとした誰かの言いまわしに対して思い込みでネガティブに解釈したり、わけもなくイライラしたりして、人間関係がこじれることが日常茶飯事になります。

友だちだと思っていた相手とささいなことがきっかけでカッとなって揉めに揉めてしまったり、急にバカにされて距離を置かれたりして「学校行きたくないな」「気まずくて顔を合わせづらい」と思ったことは、実際に休むかどうかは別にして、多くの大人も経験してきたことではないでしょうか。

私も中学生のころ、クラスのヤンキーに「おまえ、好きな子いるの?」と聞かれてこっそり打ち明けたつもりだったのにその後、遠足のバスのなかでクラス全員に大声でバラされて「え、でもあいつ○○と付き合ってるよね?」などと笑われ、逃げ場もなくて「恥ずかしすぎて死にたい」と思った経験があります。

「かねやま本館。」は毎巻登場人物を変えながら、傷つきやすいのに負の感情がおさえられずに誰かを傷つけやすくもある思春期の心情を丁寧に描いています。きっと「これって私の話だ」と思える巻があるはずです。

ひととの関係に亀裂が走って「あそこにはもう行けない」「会いたくない」という気持ちのときに読むと、凝り固まった黒い気持ちが温泉に入ったあとの身体のようにほぐれて薄れるかもしれません。

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