クリスマスにお正月に青い鳥文庫! 青い鳥文庫 2021年 刊行リスト
小中学生向けの児童文庫
鎌倉時代、有能な女性の活躍は「出すぎたこと」でもなんでもなかったーー。
北条義時の生涯を描く、2022年大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(脚本・三谷幸喜、1月9日放送スタート)。
平家を滅ぼし鎌倉幕府を開いた源頼朝を踏み台に、幕府ナンバー1になった義時ですが、その周りには只者ではない女たちがいました。
主演の小栗旬(北条義時)だけでなく、義時を取り巻く女性たちを演じる、小池栄子(北条政子)、宮沢りえ(牧の方)、草笛光子(比企尼)、江口のりこ(亀の前)など、超個性派女優たちの競演も楽しみです。
この記事では、鎌倉時代のパワフルな女たちについて、『歴史英雄伝 北条義時 武士の世を開いた男』の編集担当者が解説します。
女性にとって、嫁ぎ先と実家のどちらが大事か? 「実家が大事」とは、なかなか言いにくい。しかし、鎌倉時代の女性はそのあたりはかなり自由だったようです。
嫁ぎ先より実家が大事だった、極論すれば子どもよりも実家が大事だったのは、北条政子です。政子は夫・源頼朝の死後、将軍になったふたりの息子を失っています。
実朝の死によって頼朝直系の跡取りはいなくなりました。その前には後鳥羽天皇の后として入内させようとした娘・大姫にも先立たれていました。それでも政子は表舞台から退いたりせず、北条家の女性としてむしろますます政治にコミットしていきます。
若い後妻にコントロールされるようになってしまった父・時政を鎌倉から追い出すのに、北条義時は姉・政子の力を借ります。「このままでは北条は危うい」という判断の前に、既婚の姉であっても協力することはなんら不自然ではなかったのです。
どこかの国の首相の妻が出すぎたことをしたら、「よく旦那が(男が)黙っているな」と私たちは考えがちですが、鎌倉時代は有能な女性の活躍はべつに「出すぎたこと」でもなんでもなかった。
男たちはそんな女たちに「引っ込んでろ」とは言わずに、むしろそのバイタリティを当然のように頼みにし、利用したとも思えてきます。北条政子役の小池栄子は、このあたりをどう演じるのか、すごく楽しみです。
さて、北条時政の「若い後妻」とは誰かというと、宮沢りえ演じる牧の方です。
牧の方は、北条家の忠臣であった畠山重忠に謀反の動きがあると夫・時政に吹き込み、殺させてしまいます。それは娘婿・平賀朝雅時が畠山と対立関係にあったらからでした。
さらに平賀朝雅を将軍の座につけて自らが権力を握ろうと考え、時の将軍であった実朝の殺害を計画。しかしこれが政子に露見。
牧の方のいいなりなってしまった時政もろとも鎌倉から追放されて伊豆に幽閉されます。
ところが彼女は再起するのです。ひとりでここを逃れ、京の藤井家に嫁いだ娘のもとに身を寄せて、生涯贅沢に暮らしましたとさ――というわけです。
婚家よりも、子ども、そしてなにより自分がいちばん大事だった牧の方。若く美しい後妻に振り回された壮年の時政。政策上で牧の方を頼ったというより、愛情ゆえ判断に目が曇ったということでしょう。
「実家大事」を次の世代に実行させた女性もいます。比企尼(ひきのあま)です。
鎌倉内にあって、比企家は北条の対抗勢力でした。武蔵野国の代官を夫に持つ比企尼は源頼朝の乳母であり、流人時代の頼朝に資金援助をした最大のスポンサーだったからです。
比企尼の娘ふたりは頼家の乳母、次女と三女は範頼、義経の妻。
源氏をサポートすることで比企は栄えるという方針に娘たちは従い、安達盛長など娘婿たちにも源氏への忠誠を厳命して、栄華を実現したのです。比企尼の求心力がそれを可能にしました。草笛光子の比企尼、ぴったりかも!
夫や子どもに頼るどころか、逆に頼られて生きたたくましい女性たち。それを可能にしたのは経済的な基盤です。
鎌倉時代は女性も財産を相続できたのです。その点では立ち位置は男性と同じだったといえるかもしれません。
しかし、政界のインフルエンサーであり続けるには、並々ならぬバイタリティが必要だったでしょう。「よく旦那が(男が)黙っているな」と考えてしまう私たちは、男女共同参画という点で退化しているかもしれません。
最後は江口のりこ演じる亀の前――頼朝の愛妾です。亀の前は強すぎる妻の政子から逃れてやってくる頼朝の癒しでした。
頼朝は相当な発展家だったといわれています。もとは伊豆の蛭ヶ小島に流された身で、政子とその実家に頭が上がらなかったはずが、やることはやる。
頼朝の浮気に逆上した政子は、家人に命じ亀の屋敷を破壊してしまうのです。この騒動に頼朝は激怒し、実行犯の家臣の髻(もとどり)を切ってしまったそうです。それってどうよ、あまりにも女たちに甘えすぎでは!? オトコってズルい……。
ときに強すぎる女と、その力に頼りまくる男。
というわけで、2022年の大河ドラマの見どころは「男女共同参画」。 出演女優のみなさんにテレビの前でエールを送りましょう!
(担当編集・チ)
来春の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』…ライバルを蹴落としまくった「北条義時」の驚きの生き様
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/88715
北条義時は、手強いライバルたちをどう追い落として行ったのか?
権謀術数が渦巻いた鎌倉時代の「仁義なき戦い」を『歴史英雄伝 北条義時 武士の世を開いた男』の著者・小沢章友先生が解説!
歴史英雄伝 北条義時 武士の世を開いた男
鎌倉幕府の執権政治を確立、武士支配の基礎を作る
北条義時は源頼朝の妻・北条政子の弟で、鎌倉幕府第二代の執権。源頼朝の死後、朝廷と近かった実朝が暗殺され、1221年、後鳥羽上皇は承久の変を起こすが、義時が勝利し、上皇を隠岐に流して決着をつけた。明治維新まで続く武士の世を開いた義時の生涯。
<伝記 小学中級から すべての漢字にふりがなつき>
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