
【親子の脳の新事実】顔だけじゃなく脳も似ている! 脳科学で解明する 父・母・子どもの脳の「かたち」
脳科学から迫る親子の脳の「かたち」 #1 (2/3) 1ページ目に戻る
2025.11.06
東北大学学際科学フロンティア研究所助教、スマート・エイジング学際重点研究センター助教:松平 泉
これまでの研究は父親不在 やっているようでやっていなかった「親子トリオ」の研究
──2025年6月、松平先生のグループが発表した親子の脳の「かたち」に関する研究は、今までにないアプローチと研究成果で注目されました。世界初ともいわれている研究は、一体何が新しかったのでしょうか。
松平泉先生(以下、松平先生):私たちのプロジェクトは、父親と母親と子どもの「親子トリオ」を対象に研究を進めたのですが、まずはそこが新しい部分です。
実は脳科学だけでなく、心理学の分野でも、「親子」というと母親と子どもの2者で研究が進められることが多く、父親不在の研究がほとんどでした。
でも、実際の子どもは、お父さんとお母さん両方の遺伝子を受け継ぎ、どちらの要素も持ち合わせています。
また、父親の存在は子どもだけでなく、母親の行動などにも影響を与えますから、3者のデータを収集・分析することが、親子の脳を深く理解するには非常に重要で、研究の前提としても不可欠な条件だと考えました。
松平先生のグループが行った親子の脳に関する研究の主な前提
① 父親、母親、子どもの3人1組の「親子トリオ」を対象にする
② 親は65歳以下、子どもは15歳以上
③ 子どもの性別は男女どちらでもOK
子どもも大人も同じ検査を体験 これで親子間の分析が深化
──子どもといっても、前提の子どもの年齢は子どもとしては少し高い印象です。15歳以上にしたのはなぜでしょうか。
松平先生:人の脳というのは、生まれてから中学生ぐらいまでかなりダイナミックに形も大きさも変化して、成熟していきます。そのため今回は、あえてその変化がある程度落ち着いて、大人(親)に近づいた状態で親子間の脳の関係性を分析することにしました。
加えて、お子さんにも家族関係についてのアンケートやIQテスト、自分の性格検査を行うことにしていたので、これも子どもの年齢を15歳以上に設定した理由です。
たとえば「社交的ですか?」という質問でも、幼い子どもなら「お友だちと遊ぶのは好きですか?」といった言葉になってしまいます。これでは質問の意図が変わってしまうので、親御さんと同じ質問(文面も一緒)をして、同じ条件下でデータを集めました。
──そこから、親子の脳が「似ている」という世界初の成果につながったのですね。
松平先生:実は、親子の脳が「似ている」ことそのものは、これまでにも報告されてきたことです。しかし今回の研究では、親子トリオに注目したことで、子どもの脳には「父親にのみ似る領域」「母親にのみ似る領域」「両親に似る領域」「どちらにも似ない領域」が存在することを新たに発見できました。
データを集めるにあたっては、宮城県にお住まいの152組の親子にご協力いただきました。

































