きょうだい育児 なぜ「公平」がダメなのか
親は、わが子に対して常に「公平でありたい」と願うものです。
きょうだい喧嘩が起きれば双方の話を聞き、どちらにも同じように声をかける。𠮟るときも、ほめるときも、できるだけ“平等”を意識して──。
けれども、そんな努力が、かえって子どもの心を曇らせてしまうことがあるといいます。
「実は、“きょうだいは平等であるべきだ”という考え方が、家庭をぎくしゃくさせてしまうんです。もちろん“えこひいき”がいいわけではありません。でも、平等を意識しすぎると、かえって子どもの心を満たせなくなるんですよ」
そう語るのは、新潟青陵大学教授で社会心理学者の碓井真史先生。きょうだい関係や家庭の人間模様を長年研究し、スクールカウンセラーとして現場でも多くの親子に関わってきました。
「昔の親たちは“平等に育てよう”などとは考えておらず、それぞれの子どもにあった愛を注いでいたと思います。理屈ではなく、“自然にそうなっていた”だけなんですね」
碓井先生によると、「きょうだいは平等でなければならない」という考え方は、実は現代に始まったもの。
戦後、「人間はみな平等」という価値観が教育を通して広まり、それが家庭にも入り込んでいったのだそうです。
「“みな平等”という価値観は素晴らしいものです。でも、家庭にまでそのルールを持ち込むと、親たちは“子どもに対して平等でなければいけない”と自分を縛るようになってしまう。制度や価値観に振り回されると、人としての素朴な愛し方がわからなくなるんです」
先生は、印象的な例を挙げます。
兄の賞状がズラリ 下の子はどう感じる?
ある家庭のリビングには、壁いっぱいに上の子の賞状が並び、下の子のものは1枚もありません。親は「あなたも入賞したら飾ってあげるからね」と言っているそうですが──。
「親にしてみれば、これは“公平”な扱いです。でも、下の子にとってはどうでしょう。つらいですよね……。親に悪気はなくても、子どもには寂しさや悔しさが残るんです」
とはいえ、下の子に気を使って上の子の賞状を飾らないとしたら、今度は逆に、上の子が悲しみそうです。いったい、親はどうすればよいのでしょう?
碓井先生は、「“平等”と“公平”」についてこう説明します。
「学校や会社には基準と評価があります。よくできた子どもを学校が表彰する、成績優秀な営業マンが評価される──。そういう世界では、“公平”が必要です」
「でも家庭は違う。そこに公平な評価基準を持ち込むと、子どもは比べられていると感じてしまいます。家庭で必要なのは、“同じように”ではなく、“それぞれに自然に注がれる愛情”なんです」



































