【脳医学者・瀧靖之先生インタビュー】生きる能力・自己肯定感を高めるために大切なのは「リズム感」! リズム感が広げる子どもの可能性とは
脳科学の第一人者に聞く、子どもの発達におけるリズム感の重要性
2024.11.06
運動や勉強に隠れているリズムとは
「運動から感じられるリズムでわかりやすいのは、〈走る〉ことではないでしょうか。一定のリズムを乱さずに一歩一歩前に足を進めるのは、まさにリズムを刻むことそのもの。ほかにも、スキーではターンを繰り返しながら進みます。ミドルターンやロングターンなど、滑り方を切り替えることで拍が生まれ、リズムとなります」
さらに、勉強にもリズムがあるといいます。「勉強する際、集中するときは集中して、お休みするときはしっかり休むのが大切。集中と脱力を繰り返す様子は、リズムを刻んでいるようです。音楽におけるリズムは秒単位の波であるのに対して、勉強は分単位・時間単位でのリズムのなかで行われるともいえます。勉強法のひとつである『ポモドーロ式』(※)も、リズムを刻みながら進める方法ですね」
※ポモドーロ式…集中力を高め、生産性をアップさせるための時間管理術。25分の集中時間と5分の休憩時間を繰り返すもので、勉強や仕事の効率を上げるために活用されている。
リズム感を養うことでさまざまな能力・自己肯定感が高まる
さまざまな能力を伸ばすためには、「自己肯定感」が必要であるといわれています。自己肯定感とは、ありのままの自分を自分自身で認められる感覚のこと。自己肯定感が高いと自分には価値があると感じられるため、挑戦に前向きになり、経験を重ねることでたくさんの学びが得られます。瀧先生によると、リズム感を高めることは自己肯定感を高めることにもつながるといいます。
「自分はこれがほんのちょっと得意、という経験を重ねながら、子どもは自己肯定感を高めます。足が速かったり、ピアノが弾けたりと、たくさんの〈ほんのちょっと得意〉を組み合わせることで自身の個性ができあがります」と瀧先生。
では、〈ほんのちょっと得意〉はどのようにして生まれるのでしょうか。
「ほんのちょっと得意だという意識は、じつは『得意かもしれない』『好きかもしれない』などの勘違いから生まれます。ささやかな勘違いが自信につながり、本当に得意になってしまうのだから不思議ですね。思い込むことで、得意であると脳が認識するんです」
「上手だね」などの肯定的な言葉かけは、脳のはたらきから考えても重要だとわかりますね。
「幼いころに音楽やリズム遊びに親しんでいれば、子どもにとってリズムは身近なものになります。音楽が好きかもしれない、リズムをとるのが得意かもしれない、と感じるようになれば、本当にリズム感のある子どもに育つ可能性が高まります。〈リズム感のある自分〉を自身の個性のひとつとして認識すれば、自己肯定感を高めることにもつながるでしょう」
もちろん、リズム感が高まれば楽器演奏や歌唱など、音楽の分野で得意なことが増えます。瀧先生からお話しいただいたように、運動や勉強にも知らず知らずのうちに役立つでしょう。あらゆる活動の根底にあるのがリズム感だからこそ、リズム感が高まることで、おのずと得意なことも増えると考えられますね。