【中学受験】追い詰められる親たちへ 外野の「批判」に惑わされずわが子を信じる「伴走法」

新刊『中学受験伴走力』から学ぶ! 合否を超えて親子の笑顔を守るヒント (4/4) 1ページ目に戻る

教育ジャーナリスト:おおたとしまさ

中学受験は良薬にも猛毒にもなる 第一志望の合否を超えた親子の絆

いやたしかに、中学受験において、過干渉や人権軽視や教育虐待まがいのことが起きていることも事実ではあるが、あくまでもそれはごく一部であって、多くの親御さんは、日々、迷いながら、悩みながら、戸惑いながら、わが子に伴走しているのである。

その、決して楽ではない親子二人三脚のマラソンの日々のなかで、それでもかけがえのない経験ができたと胸を張って中学受験を終えるご家庭はたくさんある。

意外にも中学受験経験の満足度は高い。結果が第一志望合格ではなかったとしても、である。中学受験には、単なる苦行ではない何かがあるのだ。

この感覚が、親としてあるいは受験生として中学受験を経験したことのないひとたちにはなかなか伝わらない。よほど勉強が嫌いだったのか、むりやり勉強させられたトラウマがあるのだろう。

そういうひとたちに中学受験を理解してほしいとは思わない。ただ慎んで、「外野がガチャガチャ、うるせーなー」とは申し上げたい。

仮に本人の意志に反してむりやり押し込まれたのなら、勉強合宿だろうがサマーキャンプだろうが、34泊35日だろうが3泊4日だろうが、“子どもの人権”という観点からは疑いがもたれても仕方がない。

内容や期間の問題ではないはずだ。あの勉強合宿には私も個人的には与したくないが、「長期間の勉強合宿」という「形式」だけで非難されるいわれはないと言っておかなければフェアではない。

中学受験はやり方次第で、良薬にも猛毒にもなる。

写真:takasu/イメージマート
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首尾良く第一志望に合格できる子は3人に1人くらいしかいないといわれる中学受験で、心身の限界を超えてまで勉強させて何が何でも第一志望合格をつかみとらせるのが親の役割だと思っている親御さんはほとんどいない。多くの親御さんは、中学受験の猛毒の部分を解毒し、良薬の成分を最大化する方法を知りたがっている。

自分には入試問題なんて解けるわけがない前提で、子どもの成績が伸び悩んでいるときや、子どものやる気が感じられないときに、どんなかかわりをすればいいのかを知りたいだけだ。

正解がないからこそ親は悩む 『中学受験伴走力』が教えてくれる寄り添い方

その答えを求めて、中学受験塾のカリスマ講師の本や、“勝ち組”となった親の手記に、中学受験生の親たちは手を伸ばす。しかし、たった一人の視点で書かれた方法論が万人にとっての正解になるとも考えにくい。

そこでおすすめしたいのが『中学受験伴走力 親がすべきこと、知るべきこと』(講談社+α新書)である。著者は教育ジャーナリストの佐野倫子さん。ご自身の中学受験に「あのとき、12歳で本気でがんばったな」というたしかな感覚がいまでも胸に残っていると言う。

第一志望の扉は開いてはくれなかったのに、である。すでに第1子の中学受験を終え、現在第2子の中学受験に伴走中だ。もろに当事者である。

中学受験伴走力 親がすべきこと、知るべきこと

中学受験伴走力 親がすべきこと、知るべきこと

佐野 倫子(著)

発売日:2026/09/03

価格:定価:本体1200円(税別)

その佐野さんが、早稲田アカデミー、フォトン算数クラブ、ジーニアス、SAPIX、TOMAS、グノーブルなどの中学受験対策のトップ塾のカリスマ講師から、根掘り葉掘り具体的なアドバイスを聞き出す(冒頭の合宿の塾は含まれていない)。

各講師の話には、よく読めばズレや矛盾もある。しかしそれがこの本のいいところだ。解釈に余白ができる。

第3章では、国語、算数、理科、社会の教科ごとに、低学年、4年生、5年生、6年生と学年別に、伴走のコツを伝授してくれている。

第4章では、これまた学年別に夏休みの過ごし方を具体的に指南してくれる。個別指導塾や家庭教師の活用法も紹介されている。

第5章では、親として最もシビれる直前2ヵ月間のすごし方を扱う。ここからは、リアル保護者のインタビューに加え、佐野さんご自身の親としてのファインプレーや、やらかしエピソードもふんだんに語られる。ここまで当事者目線かつ多様な考え方が網羅されている中学受験本はなかなかない。

ただし佐野さんはくり返す。「中学受験に絶対の正解はない」。そして「おわりに」では、「たくさんの現場を取材して、大切なのは子どもの個性をよく見て、それぞれのペースで進んでいくことだと痛感しました」とも。

同感だ。結局、知れば知るほど、正解などないことがわかる。正解がないことを知るために、私たち親は正解を求めて右往左往するのだろう。その右往左往のガイドブックとして、『中学受験伴走力』をお勧めしたい。

カリスマ講師や先輩保護者のアドバイスを参考にしながら、結局のところ、自分の頭で考えて、自分の心で感じて、最後の最後はわが子を信じるしかないのだということが、この1冊を読み終えたときには腑に落ちているはずだ。

文/おおたとしまさ

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おおたとしまさ

おおたとしまさ

教育ジャーナリスト

1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。

1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。