種村有希子の絵本『きいのいえで』制作日記

第34回 講談社絵本新人賞受賞からデビューまで 第2回「まゆげが大事」

※この記事は、講談社絵本通信掲載の記事を再構成したものです。
こんにちは。あっという間に12月ですね。

先日の打ち合わせは、前回の計画通り、某図書館内にあるカフェで行われました! 場所が変わると、気分も変わって新鮮でした。

今回の話の争点は、原画で直しをいれる部分について。

この絵本は、子供の表情が一番のポイントなのですが、問題になったのがテレビを見ている主人公の目元。

どんな番組を、どんな気持ちで見ているのか、それに対して果たしてこの目元でよいのか? という(エ)さんの問いかけ。う~ん確かに……主人公の心情を話しつつ、その場で表情を色々描いてみました。重要なのが、眉毛です。

この眉毛を描くのが本当に難しい。ちょっとした一手で全然違う感情を示してしまうのです。

今回絵本を描くにあたって、幼い頃の兄弟の表情をよく思い出したり、友人の子供をよく見たりしたのですが、実感したことは、いかに子供に色んな表情があるかということです。

はじけるように泣いたり、口を開けてぼうっとしたり……。

この表情、自然に出てしまう感情が子供時代の生活を豊かにしているんだなあと、あらためて思ったのです。大人になると、いつでも全部の感情をさらけだすわけにはいかなくなるから、子供の様々な表情に魅力を感じてしまうのかもしれません。

そんなことを思いつつ、ともかく「この眉毛の感じでいきましょう!」という眉毛が偶然描けたので、その他の改善点も打ち合わせてお開きとなりました。

帰りは、ちょっと高い建物に入って、窓から近くの公園の紅葉を眺めて、(エ)さんと感激! よく公園を散歩するのですが、上から見るとまた印象が違って新鮮。色が目に飛び込んできました。

余談ですが、大学時代、ある講義で聞いた「自分の目の前を一瞬通り過ぎたものを見逃してはいけない。それが、あなた自身です」という言葉をずっと覚えています。私の生活範囲はかなり狭いけど、同じ風景なのに気付く点が日々違います。

そして、この少しの「あっ」という瞬間が、制作のきっかけになります。

それらの中には、すぐに絵本になりそうなものもあるし、まだ心の中に寝かせる時間が必要なものもありますが、ひとつずつ丁寧に形にしていきたいと思っています。

今は、まず「きいの家出」の完成第一ですが! それでは、皆様もよいお年をお迎え下さい。
「2013年の年賀状」

こちらができあがった絵本です。

『きいのいえで』
作:種村有希子 講談社

種村有希子さんの絵本!

きのみ幼稚園の園庭には、小さな時計台のお城に、お姫さまが住んでいます。9時になると、扉が開いて、出てきてくれるのです。幼稚園の子どもたちは、みんなお姫さまのことが大好き。

『ようちえんの おひめさま』
作:種村有希子 講談社