種村有希子の絵本『きいのいえで』制作日記

第34回 講談社絵本新人賞受賞からデビューまで 第1回「はじめまして」

※この記事は、講談社絵本通信掲載の記事を再構成したものです。
はじめまして。新人賞をいただいた種村有希子です。

あらためまして、選んでくださった選考委員の先生方、編集部の皆様、ありがとうございました。

受賞の知らせを受けるまでは、昨年新人賞の定岡さんの制作日記をのんきに笑って読んでいましたが、受賞後は「もしや、私も書くんじゃ……」と、だんだん不安になっていました。

そして、その不安は的中し、今こうしてパソコンに向かっています。マイペースに書いていきますので、最終回までおつきあいいただけたら嬉しいです。

受賞作の『きいの家出』は、私が初めて書いた絵本です。募集に気付くのが遅くて、制作を始めたのが締め切りの二週間前。最後は二日徹夜して、投函は締め切り日の郵便局が閉まる5分前に滑り込みでした!(顔も手も絵の具だらけで、郵便局員のおばさんが唖然としていました……)

タイトなスケジュールで体はくたくたでしたが、今まで感じたことのない充実感で、描き終えた時目の前の景色がきらきらして見えたくらいです。ひとまず、どんなにぎりぎりでも人生何が起こるかわかりませんので、次回ご応募の方もねばってみてください。(本当はもっと余裕をもって計画的につくるのがベストですが!)

8月に電話で受賞の知らせを受けて泣き、さらに9月の授賞式ではスピーチをしながら号泣し、ようやく気持ちが落ち着いた9月末から担当編集者の(エ)さんとの打ち合わせが始まりました。ここから、来年5月の刊行をめざして二人三脚です。未熟者ですが、よろしくお願いいたします!

私は、この絵本が初めての絵に関する仕事なので右も左もわからないうえ、定岡さんの制作日記に「編集者とのやりとりが一番きつい……」と書いていたので、正直怯えていました。

ですが、今のところ拍子抜けするほど打ち合わせは楽しいです!(あまりに楽しくて脱線することもしばしば……)

打ち合わせ前は「意見がぶつかったりするんだろうか」と想像していたのですが、ここまではそのような衝突も無く、何が必要で不必要かをよどみなく判断して提案してくださるので発見があるし、話していると自分もどう考えているのかが、よりはっきりしてくるのです。

今までずっとひとりでやってきたので、これが絵本作りのおもしろいところだなあと思います。
種村有希子さん
今描いているのが表紙のラフです。一度提出したのですが「方向性は間違っていないけど、あと少しなにか足りない」と言われ……。自分でもそう感じていたので、描き直し中です。

でも、そのもう一歩を踏み込める瞬間が、一番難しいけれど楽しいので、手探りで頑張ろうと思います。絵本を手に取っていただくには「表紙が一番大事!」と先輩受賞者の方々も口々におっしゃっていたので。

それから、先日の打ち合わせでは、新人賞受賞者の恒例という、幼児図書出版部の年賀状(原画)を提出してきました。「巳年なんて、かわいく描けるかな……」と心配でしたが、(エ)さんの助言もあり自分でも結構気に入った絵が描けました。(なんだか序盤から(エ)さんに頼りきりです……)受け取る方々が、年のはじまりににっこりしてくださったらいいなあと思います。


急激に寒くなりはじめ、近所の公園も紅葉してきました。毎日散歩が気持ちいいです。

「今度は図書館で絵本を読みながら打ち合わせしましょう!」と計画している(エ)さんと私。でも、あっという間に年の瀬が迫ってきそうです。皆様も、風邪には気をつけてお過ごしください。

こちらができあがった絵本です。

『きいのいえで』
作:種村有希子 講談社

種村有希子さんの絵本!

きのみ幼稚園の園庭には、小さな時計台のお城に、お姫さまが住んでいます。9時になると、扉が開いて、出てきてくれるのです。幼稚園の子どもたちは、みんなお姫さまのことが大好き。

『ようちえんの おひめさま』
作:種村有希子 講談社