種村有希子の絵本『きいのいえで』制作日記

第34回 講談社絵本新人賞受賞からデビューまで 第5回「思い出の絵本」

※この記事は、講談社絵本通信(2013年)掲載の記事を再構成したものです。
こんにちは。

ここ最近、表紙を描くのに没頭して家にこもっていたら、ある日突然外がすっかり春になっていてびっくりしました! 冬眠していたような気分です。

先日、絵本の色校正が送られてきました。三種類の紙に試しに印刷したものです。

私の率直な感想は、「家庭用プリンターとは全然ちがう! きれい!」でした(素人まるだしです)。

特に、鉛筆の細かい質感がしっかり出ていて感動。

この中から、本番どの紙に印刷するかを決めるのですが、それぞれに良さがあって悩みます……。紙によって、質感も色も出方が微妙に違うのです。

紙の手触りも含め、どの紙に印刷するかという選択は、最後の画材を決めるようなもの。悩んだ末、私が選んだのは、b7クリームという紙です。

何が良かったかというと、感覚的なものなのですが、鉛筆の黒の出方が他のものより落ち着いていて、黒を主張していない気がしたからです。

それから、表紙の制作です!

これが、またなかなか納得いく着地ができず、延々同じような絵やタイトル文字(手書きなのです)を描き続けていました……。
描き続けるタイトル文字
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絵に関しては、いつものごとく、体の傾きや表情の微妙な違いなどが気になってしまい「次こそ次こそ」と諦められず、気付いたら、ほとんど変化のない絵が5枚できていました。

そして、その中から選んだのは主人公たちの表情が一番かわいいもの。

この表情なら、店頭で読者の方が「一度は手にとってくれるのでは」と思ったものです。タイトル文字の方は、また手強くて、お経のように書き続けています!

参考にしているのは、子供の頃の自分の字。一生懸命に一文字ずつ書いていた頃のように書けたら、いいなあと。

こちらができあがった絵本です。

『きいのいえで』
作:種村有希子 講談社

種村有希子さんの絵本!

きのみ幼稚園の園庭には、小さな時計台のお城に、お姫さまが住んでいます。9時になると、扉が開いて、出てきてくれるのです。幼稚園の子どもたちは、みんなお姫さまのことが大好き。

『ようちえんの おひめさま』
作:種村有希子 講談社
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