種村有希子の絵本『きいのいえで』制作日記
第34回 講談社絵本新人賞受賞からデビューまで 第5回「思い出の絵本」
2022.07.31
ここ最近、表紙を描くのに没頭して家にこもっていたら、ある日突然外がすっかり春になっていてびっくりしました! 冬眠していたような気分です。
先日、絵本の色校正が送られてきました。三種類の紙に試しに印刷したものです。
私の率直な感想は、「家庭用プリンターとは全然ちがう! きれい!」でした(素人まるだしです)。
特に、鉛筆の細かい質感がしっかり出ていて感動。
この中から、本番どの紙に印刷するかを決めるのですが、それぞれに良さがあって悩みます……。紙によって、質感も色も出方が微妙に違うのです。
紙の手触りも含め、どの紙に印刷するかという選択は、最後の画材を決めるようなもの。悩んだ末、私が選んだのは、b7クリームという紙です。
何が良かったかというと、感覚的なものなのですが、鉛筆の黒の出方が他のものより落ち着いていて、黒を主張していない気がしたからです。
それから、表紙の制作です!
これが、またなかなか納得いく着地ができず、延々同じような絵やタイトル文字(手書きなのです)を描き続けていました……。
そして、その中から選んだのは主人公たちの表情が一番かわいいもの。
この表情なら、店頭で読者の方が「一度は手にとってくれるのでは」と思ったものです。タイトル文字の方は、また手強くて、お経のように書き続けています!
参考にしているのは、子供の頃の自分の字。一生懸命に一文字ずつ書いていた頃のように書けたら、いいなあと。