「自由進度学習」で点数が2倍になった

苫野先生:『自由進度学習』といわれる方法です。このクラスでは、自由進度学習を続けた結果、最初は理解に時間がかかった子でも、半年後には一斉授業よりも早く単元を終えるようになりました。

理解が早い子は、発展的な問題や問題づくりに挑戦するなど、より深い学びを行っています。

その結果、なんとクラス全体で成績が上がったのです。特に一斉授業の後で行ったテストでは点数が低かった子たちは平均点数が顕著に上がり、約2倍に上昇しました。

子どもたちからも、『算数が好きになった』『暗記ではなくきちんと理解できるようになった』という感想が聞かれ、さらに保護者からも、『自ら学ぶようになった』という声が複数寄せられました。

子どもの主体性を引き出すことが学びの向上に繋がります。    写真:アフロ

苫野先生:このように、『学びの個別化・協同化の融合』は、理解が早い子、時間がかかる子どちらにとってもプラスの効果があります。特に、これまで『勉強ができない』と思われていた子どもたちについては、その子個人の問題というより、多くの場合、学びの方法やペースが合わなかっただけ、ということがおわかりいただけると思います。

もちろん、先生が必要に応じて一人ひとりをサポートすることも重要ですが、周りの人に支えられ、自分のペースで学びに集中することができる環境があれば、子どもたちは自ら学びや学び合いを進めるようになるのです。

「自由進度学習」は公立校で十分取り組める

――「自由進度学習」がいいことはわかりました。しかし、こういった取り組みは私立校で行われるもので、公立校ではなかなか難しいイメージがあります。「自由進度学習」は、公立校でもできるのですか?

苫野先生:『自由進度学習』は、現在の学習指導要領の範囲内、現行の制度内で十分実施可能です。

上記の事例は、熊本市内の公立小学校の取り組みです。広島県や名古屋市など、教育委員会が率先して、こうした取り組みを応援・支援しているケースも増えています。

もちろん、今の日本の学校システムは、子どもたちを一斉に統率して動かすのに最適なシステムになっているため、決してやりやすいとは言えません。

しかし、必ず全員同じ時間割で進めなければならない、といった決まりはありませんから、これまでも公立の小学校で『自由進度学習』を実践されている先生はいましたし、主体性を重視する流れのなかで、少しずつ増えていると感じています。

イエナプラン教育を取り入れた公立校も登場

苫野先生:また、昨今日本でも注目されているのが、ドイツで生まれ、オランダで100年以上の歴史がある『イエナプラン教育』です。一人ひとりの個性を尊重しながら、自立と共生を学ぶことを大切にするなかで、『学びの個別化・協同化の融合』を実践しています。

イエナプランでは、低学年から高学年まで、子どもたちが自分たちで一週間、時には一ヵ月以上の学習計画を立てます。特に低学年は、先生がしっかりサポートしますが、慣れてくると自分一人で、十分計画を立てて学習を進めることができるようになります。

また、イエナプラン教育では異年齢で集団(クラス)を形成することが特徴で、1年生が3年生にわからないこと聞いて教えてもらうなど、子ども同士の『支え合い』や『学び合い』も生まれやすい環境です。学ぶ場所もスタイルも基本的に自由で、教室だけでなく廊下などで学習することもでき、自分が一番捗る場所や方法を、子ども自身で見つけていきます。

こうした『イエナプラン』の発想を取り入れた小学校が、ここ数年日本にもいくつか登場しています。

2022年度には、公立では初となるイエナプラン実践校が、広島県福山市に誕生しました。広島県では、県全体で『個別最適な学びと協働的な学び』を推進しており、イエナプランや自由進度学習を段階的に他の公立学校でも実践しています。

私はイエナプラン校も、自由進度学習を実践している学校(クラス)にもしばしば行っていますが、両者に共通しているのは、子どもたちがとにかくイキイキ、楽しそうにしているところです。それぞれが学びに没頭していますが、いつでも助けてもらえるという安心感が漂い、子どもたち一人ひとりを包み込む温かい雰囲気が感じられます。

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