話題の「自由進度学習」 子どもの判断力と思考力を鍛える「体験的な学び」とは?

【小学校教育2.0】廿日市市立宮園小学校の挑戦#2「自由進度学習を成立させる4つのアプローチ」

2020年度から、授業の一部に「自由進度学習」を取り入れている広島県廿日市市立宮園小学校。子どもが自ら、しかも楽しそうに学ぶという、先生たちも驚くほどの大きな変化がありました。しかし、1年目の取り組みを終えると、「課題」も明らかになってきました。

その課題に正面から切り込み、試行錯誤しながら新しい方法にチャレンジしたからこそ、知識だけでなく、思考力・判断力をも伸ばす、宮園小学校特有の自由進度学習ができてきました。

第2回では、子どもの「思考力・判断力」を育てるポイントとなる「体験的な学び」について、導入の経緯、詳しい実践の方法などをうかがいました。
※全3回の第2回(#1を読む)

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ただ「問題を解く」だけでは身に付かない力とは?

子どもの主体性が発揮され、学力の向上にもつながった宮園小学校の自由進度学習(詳しくは#1)。しかし、最初からすべてうまくいったわけではありませんでした。

2020年の1年目の取り組みを終えた時点で、大きな「課題」に直面します。

当時の様子を、研究主任の二野宮加代子先生は、「思えば当時は、『知識・技能面』の習得に偏っていた」と話します。

「2020年度は、今から振り返ると練習問題を解いている時間がとても多かったんです。

熱心に自分の課題に取り組む子どもたち。  写真提供:宮園小学校

教科書の問題を解いたらドリルをやり、タブレットの問題もこなす。このスタイルでも、子どもたちは自分のペースで学びを進められるし、わからないときはすぐに声を上げて周りに教えてもらえるので、よろこんでいたのは事実です。子どもたちの意欲もアップし、一定の成果は出ていたと思います。

でもやはり、うまくいかない点が出てきました。知識面・技能面はしっかりと身に付いていましたが、思考力・判断力は伸び悩んでいる、という課題が見えてきました」(二野宮先生)

テストでは「思考力・判断力」を問う設問の正解率があまり高くなく、先生方が子どもたちの様子をみていても、思考力が深まっていない印象がありました。

「体験的な学び」はどうやって取り入れる?

「子どもたちの思考力・判断力を育てるにはどうしたらいいか」

この課題に取り組むため、宮園小学校では、専門家に相談する機会を設けることにしました。

2021年の春、授業やカリキュラム開発に詳しい奈須正裕先生(上智大学総合人間科学部教授)を講師に迎えて研修会を開催したことが、改善の契機になりました。

「奈須先生からは、『学習環境を整えると良い』とアドバイスをいただきました。実際に手や身体を動かすことで深まる理解、五感を使うからこそ生まれる問いがあることを教えていただき、2021年度は『学習環境の整備』に力をいれる方向で準備を進めました」(二野宮先生)

#1でも紹介した、宮園小学校の多種多様な「体験的な学び」は、こうした経緯で取り入れられたものでした。

3年生の「重さ」の授業では、実際に砂を使った学習コーナーを用意しました。  写真提供:宮園小学校

しかし、子どもたちが充実した体験学習を行うためには、「単にコーナーを設置し、道具を用意するだけでは不十分」だと、2021年度に3年生を担任した川口竜彦先生は話します。

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