2019年に発表された教育改革・GIGAスクール構想。2023年までに児童生徒一人に一台の学習用端末を配布するというものです。
さらに、2020年からの新型コロナウイルス流行拡大防止への対応などで、子どもたちの学校生活はガラリと変わりました。
すでに通学中の小学生にとっては、コロナ禍により急激に進んだICT教育による持ち物の変化や、イレギュラーな学校生活など、不便な面も少なくはないでしょう。
ランドセルの重さを解消する画期的な発明品、増える荷物の補助バッグ、コロナ禍で必要となった水筒ケースやランドセル専用除菌スプレーまで、ランドセルをより使いやすく快適にするアイテムを紹介します。
※連載全5回の5回目)
ランドセルがキャリーケースに変身するスティック
2021年、栃木県日光市で、地元の小学生たちが中心となって開発されたのが、「ランドセルをキャリーケースのように転がして持ち運ぶ」という画期的なアイテム「さんぽセル」(5,940円・税込)。
この活動を支援したのが、「株式会社悟空のきもちTHE LABO(以下悟空のきもち)」です。
「夏休みに集まった地元の子どもたち数名に『困っていることを解決して、自分たちでお金を稼ぐ経験をしてみたら』と提案したんです。そこからランドセルの重さを解決する、このアイテムが生まれました」(悟空のきもち社外取締役・永野弘樹さん)
子どもたちの荷物の重さは、社会問題にもなっています。2018年9月には、文部科学省が各地の教育委員会などに「児童生徒の携行品に係る配慮について」(※1)という事務連絡を出しました。
※ 1=児童生徒の携行品に係る配慮について
この通達は、教科書などを学校に置いて帰る「置き勉」を認める内容で、大きなニュースになったのです。
「子どもの間でも、重いランドセルを背負っての通学に苦痛を感じていた子が多かったようです。『さんぽセル』は、ランドセルに常時取り付けてランドセルをいつでもキャリーケースに変身させる『ランドセル用スティックキャリー』です。
本体だけで280gと軽く、伸縮自在でとても小さくなるので、階段や教室では、そのまま背負うことが可能です」(悟空のきもち・永野さん)
製品化にあたっては、自動車の安全部品の製造にかかわる地元企業が協力。軽くて、ある程度乱暴な使用をしてもそれに耐えられる耐久性であることや安全に使用できることにこだわったといいます。
「何より、発案から開発までをてがけた子どもたちが『荷物が軽いと、学校に行くのが楽しくなる』と大喜びでした。社会問題を解決する、革新的なアイテムで学校生活を楽しんでほしいです」(悟空のきもち・永野さん)
ランドセルに入りきらない大量荷物の補助バック
教科書やノートのみならず、子どもたちはたくさんの荷物を持ち運ばなければなりません。体操着に上履き、リコーダーにお弁当や水筒……。
せっかく背負いのランドセルで両手が空いているのに、その手にたくさんの手提げを持つことになれば本末転倒。そんな課題を解決すべく、「ランドセルにつける補助バッグ」が売れています。
ランドセルの両側から挟み込むように左右に装着するバッグ「サンドセル」(3,300円・税込)を発売している、株式会社デビカ(以下デビカ)。小学生を持つ保護者のアイディアから商品が生まれたと、企画室広報担当の一ノ瀬典子さんは言います。
「ランドセルに体操着袋などをぶら下げることで、バランスを崩しやすくなる心配がありました。サンドセルは左右にバッグがあるので均等に負荷がかかり、安定して歩くことができます。
バッグの前後には反射板も付いていて、雨の日や暗い夜道でも安心です」(デビカ企画室広報担当・一ノ瀬さん)
未来工房 結の代表・三ツ木一浩さんが手がけた「ランドセルアンダーバッグRanba(ランバ)」(4,380~5,390円・税込)は、ランドセル下にぶらさげるタイプの補助バッグです。
ランドセルのサイドにつけるタイプの補助バッグ「てぶらん」(3,390~3,830円・税込)も発売する未来工房 結。開発に至ったのは、息子さんとのやりとりがきっかけでした。
「息子に、『荷物が重くて持ちたくないのなら、ランドセルにひっかけたら』と言ったんです。すると『ランドセルの横に袋を下げるのは、学校で禁止されている』ということでした」(未来工房 結・三ツ木さん)
そこで、左右に密着する補助バック「てぶらん」を開発。続いて、下にぶら下げるタイプの「ランバ」も発売しました。
ランバは全ランドセルに取り付け可能なことや、ランドセル未装着時には、ショルダーバッグとしての使用もできる点にこだわったといいます。
「収納力も自慢です。うわばき、体操着(半袖・短パン・紅白帽子)、水筒(1ℓ)、給食セット(はし・コップ・歯ブラシ・ナフキン・ハンカチ・マスク)がすっぽり入りますよ」(未来工房 結・三ツ木さん)
PCの持ち運びがラクになるカバー&ケース
さらに画期的なカバータイプの収納ケースもあります。文房具メーカーの株式会社レイメイ藤井(以下レイメイ藤井)から、2021年秋に発売された「クッションポケット付きランドセルカバー」(2,860円・税込)です。
「毎日の学校生活で実際どのようにスクールPCが使われているのかを、小・中学生のお子様を持つ保護者の方たちにアンケート調査をしました。
その結果『スクールPCを持ち帰る頻度が多いこと』や、『支給されている端末が地域によってバラバラなこと』、そして『ランドセルに入らない大きなケースがついた状態の端末が支給されているケースがあること』などが浮き彫りになりました」(レイメイ藤井商品企画室広報課・吉岡学さん)
そのようなランドセルに入らないかさばる荷物をメインに、クッションポケットを含めて3つのポケットに入れることができるカバータイプの収納ケースを開発・発売しました。
「本体に撥水(はっすい)加工が施された生地を使用しているので、ランドセルを雨や汚れからも守ってくれます。夜道でも安心の反射材付きです」(レイメイ藤井・吉岡さん)
新型コロナウイルス感染拡大で学習用電子端末の配布が広がり、急きょ、使いやすさにこだわったタブレット・ノートPC収納ケース「タブラスクール」(1,980円〜税込)を開発したのが、文具メーカーのクツワ株式会社(以下クツワ)です。
「学校ごとにノートPCやタブレットなど、配布する端末がバラバラなため、『スリム』と『幅広』の2型を展開しました。
ターゲットは主に小学生のため、ランドセルに入るサイズありきで開発。力の弱い子どもでもランドセルからの出し入れがしやすいように、持ち手を付けています」(クツワ商品開発部・北川陽子さん)
「ランドセルだけでなく、リュックでもご愛用いただいているという声や、薄くて軽くて扱いやすいというこだわりポイントも評価していただいています」(クツワ・北川さん)