2021.01.14

小学校合格の下準備「お教室面接」には高級果物と身上書!【お受験の裏側】

庶民嫁が見た! 受験本ではわからないTOKYOお受験の裏側①

寄稿家:華子

写真:アフロ

中流家庭からプチセレブ一家へ嫁いだライター・華子。愛娘は自分と同じ普通コースで育てようと思っていたものの、義母の一言から、小学校受験への道が始まりました。
まったく未知だった東京のお受験は、庶民にはわからないことだらけ! 受験マニュアルには決して書かれていない(書けない)、お受験の赤裸々な裏話をお伝えします。

生後2ヵ月からお受験!?

「華子さん、私立幼稚園は考えていらっしゃる?」

娘が生まれて2ヵ月経った頃、唐突に、夫の母(以下:義母)に切り出されました。新米ママで、初めての出産・生後2ヵ月の育児にてんてこ舞いだった私にとって、「幼稚園」なんてまだまだ先の話。いや、それどころか実は「保育園に入れて早々に仕事復帰しよう」とも目論んでいたくらい。

そもそも、首都圏近郊の中流サラリーマン家庭に育った私は、近所の幼稚園から学区内の公立小・中・高と進み、大学進学をきっかけに上京。そして適齢期に結婚し、娘を出産。「幼稚園」は望めば当たり前に入れるものだと思っていました。

しかし、東京都心部の状況は想像以上に厳しいものでした。保育園は待機児童にあふれ、フルタイム勤務ではない私の娘は、まず入園できる見込みすらない。ならば、幼稚園入園までの時間を有意義に過ごそうと、生後10ヵ月ぐらいから地域の子育て広場のようなところに通い始めました。しかし、そこで知り合ったママさんたちと情報交換をしているうちに、なんと、うちの近所の公立幼稚園は2年保育、3年保育に入れたければ私立幼稚園しかない、ということが分かったのです。しかも、その近場の私立幼稚園だってかなりの高倍率だとか。

マズイ、このままでは幼稚園浪人ではないか……

義母はこの状況を案じていたのか。思えば、夫は東京の山の手生まれ、山の手育ち。夫も含め、彼の親戚はみんな幼稚園や小学校からお受験をして私立に通ったというお家柄。義母は東京都心の進学状況はよく知っていて、呑気な嫁にやんわりと忠告してくれていたのでしょう。

そこで、あわてて近所にある私立幼稚園の入園条件を調べてみると、どうやらどこも入園試験のようなものがあるらしい。オムツが外れているのはもちろん、母子分離もある程度出来ていないといけない。しつけやお行儀もチェックされ、両親面接だってある。それらすべてがわかったとき、娘はまもなく2歳になろうとしていた。もう、入園試験まで1年ほどしかない……。

これは、大変!

急いで私立幼稚園の入園準備用のプレスクールを探し、そこに娘を週2回2〜3時間ほど入れると共に、空いた時間で近隣の私立幼稚園すべてを見学。各園の親子で参加できそうな行事の日程を調べたり、それぞれの入園試験の内容を精査して対策を練るなど、来たるその日に向けて猛ダッシュで準備を始めたのでした。

私立幼稚園合格! え? 違った⁉︎

「この度、高倍率を潜り抜け、見ごと、第一志望の私立〇〇幼稚園に合格しました!」

あの義母の忠告から約3年経ったある日、私立幼稚園に無事合格でき、喜び勇んで夫の家族に伝えた私。ああ、大変だったここまでの道。がんばった甲斐があって、私たち、幼稚園浪人は免れました〜!

……あれ? 

「おめでとう」という言葉は頂いたものの、夫の家族はなんだか困惑したような顔をしている……。

なんで?

だって、お義母さんも、「女の子だから幼稚園は私立がいいわね」とおっしゃっていましたよね? 素直な嫁はちゃんとその言葉通り、娘を私立〇〇幼稚園に入れたではありませんか。なのに、何とも微妙な反応……。すると、少し間を置いて、義母が言い辛そうに口火を切った。

「あのね、華子さん。私たちのいう『私立』とは、高校や大学まで繋がる附属幼稚園や『お受験幼稚園』として有名な名門幼稚園のことだったのよ」

エッ……!?  
よくよく話を聞いてみると、どうやら夫の家族にとって娘が合格した私立〇〇幼稚園は「ご近所幼稚園」というカテゴリーだったらしい。首都圏郊外サラリーマン家庭、小・中・高が公立育ちの私にとって「私立」と名のつくところは全て私立。「国立」「公立」「私立」の3区分しか知らず、私立の中にそんな区別があるなんて夢にも思っていなかった……。

それにしても、この辺りの幼稚園・保育園は、どこも高倍率で入るのすらとても困難。私立の「ご近所幼稚園」だって、いわゆる「名門幼稚園」のお受験と同じく、家族全員紺色の洋服を着て写真を撮り、志望理由を書いた願書を提出し、子どもの行動観察、親子面接の考査を経て、やっとこさ合格できたのだけど……。

勢いよく登場した時のドヤ顔から、みるみるうちにガッカリ顔に変わっていく私の表情を横目に、超前向きな義母から、たいへん未来志向なご提案が……。

「華子さん、大丈夫よ、小学校で頑張れば! 良いお教室をご紹介してくれる方がいるから、今度お会いしてみたらどう?」

ご紹介制の世界「個人のお教室」

しばらくして「良いお教室」をご紹介してくれるという、“山の手マダム”にお会いしたときのこと。高級そうな上品なスーツをまとったその“山の手マダム”は、義母の古きママ友で、どうやら孫の私立小学校受験を終えたばかりの情報ツウらしい。名門私立小学校を合格するためには、まずは、合格実績が高く、ノウハウを熟知した先生がいる「個人のお教室」へ入るのが最初の鉄則だという。お受験の苦労話を一通りした後、

「それでは華子さん、とりあえずシンジョウショをご用意しておいてね」

へ? シンジョウショ??? 当然のことようにサラリと言われたけど、私にはそれが何か、皆目、見当がつきませんでした。恥を忍んで尋ねてみると、

「釣書のようなものよ。ほら、お見合いで書く……」

いやいや、恋愛結婚だった私は、お見合いの「釣書」など無縁で、もちろん書き方などわかりません。でも、2度も聞くのはさすがに恥ずかしくて、その夜、ひそかにネット検索をしてみたところ、どうやらそれは「身上書」と書くらしい。簡単にいうと、縦書き便箋に書く「履歴書」のようなもののようだ。「ネットを見て、とりあえず同じように書いてみよう」と、ご親切にもどなたかがアップしてくれていた身上書をチェック。なるほど、便箋と封筒は、あの日本一地価が高いという銀座の一等地にそびえ建ち、皇室も御用達であるという「鳩居堂」のものを使うのが定番なのか。確かに、これなら間違いなさそう。

……あれ? この封筒のこの感じ、どこかで見たような気がする……!?

そう、これは確か、近所の幼稚園を見学してまわっている時に、まさに「お受験幼稚園」として有名な某名門幼稚園で見たものではないですか! 老齢の園長先生が姿を現した途端、周りにいた父兄がいっせいに駆け寄り、鬼気迫る笑顔で次々と白い封筒を渡し始めた、アレ。園長先生を取り巻く親たちが握り締めていたあの白い封筒、あれは何なのか、何が入っているのか、ずっと謎だった。
アレがこの「身上書」だったのか!

そのときは、「この空気には馴染めない……」と感じた私たち親子はその園を受けなかったけど、あの白い封筒が「身上書」と知らなかった時点で、どちらにせよ「ご縁」はなかったのでしょう。

かくして、ネット情報で「身上書」が何たるかが分かった私は見よう見まねで下書きを作成し、義母や山の手マダムのご教示を受けつつ、何とかお教室の「ご紹介」までに仕上げることができました。一応、私が書いたものを参考までに記すと……。

① まず、鳩居堂の白い縦書き便箋・封筒を用意

②封筒の表に「身上書」と筆で書く

② 便箋には、父親、母親の生年月日、学歴、現在の職業を記す。その他の同居家族の分も書く

③ 最後に娘の生年月日と健康状態、入園予定の園を書き、これまでの習い事や現在の習い事も記す


【POINT】 
何より重要なのは、これらの短い文章の中に、いかに「良家」であるかということを醸し出すことのようだ(それはもちろん、私以外の家族に頼ることになりましたが)

さて、身上書が書き終わると、いよいよお教室へ「ご挨拶」です。この「ご挨拶」には手土産が必須アイテムだという。義母に相談して決めた手土産が、桐の箱に入った「千疋屋」のフルーツ(約2万円相当‼)。庶民の私は、これまでそのようなものは頂いたこともあげたこともありません。でも、きっと山の手マダム業界では飛び交っている代物なのでしょう。

お教室の値段は寿司屋と一緒!?

 ここまで言われるままに素直に準備してきた私に、ふと一抹の不安が……。その不安は日ごとに大きくなって抑えられなくなってきた。そう、お金の問題です。俗っぽいことは重々承知の上で、思い切って山の手マダムに尋ねてみました。

「ところで、その『個人のお教室』っておいくらぐらいかかるのでしょうか……」

すると、その答えが

「それぞれお代金は違いますから……。でも、お支払いできないような方はご紹介しませんから」

 エッ!?  人によってお月謝の額が違う? それって高級お寿司屋さんみたいに『時価』ってこと? 頭の中でグルグルと渦巻く疑問。しかし、マダムの背後からそれ以上は聞いてはいけないような底知れぬ圧を感じ、とても聞けない。いや、もはや、いろんな意味で怖くて聞けない……。
ま、まあ、入れるかどうかも分からないし、お金のことはそのときに考えればいっか……、と私はざわつく気持ちに無理やり蓋をした。

かくして夫と私はダーク色のスーツ、娘はお嬢様風ワンピースといういでたちで、桐箱入り高級フルーツをひっさげ、白い封筒の身上書を手に、山の手マダムと共に私立小学校受験に向けての登竜門、“個人のお教室”の門をくぐったのでした。

続く

(注釈)
※この記事は、ライター華子の個人的体験及び感想に基づくものです。私見のため、一般的な見解とは異なる場合があります。また、一部については創作的表現が含まれております。

寄稿家紹介

華子 はなこ

一般的なサラリーマン家庭で育ち、首都圏で公立小・中・高を過ごす。都内の大学卒業後、フリーライターに。プチセレブな夫と友達の紹介で出会い、結婚。女児の母。庶民との差に日々驚きつつも、平然なふりを装ってアセアセと暮らしている